第122話 あの蔵の火事から
あの蔵の火事から、僕は妖精付きになった。
妖精付きになったと言っても、前と生活スタイルは変わらなかった。
「ところで、お前は何の妖精なんだい?」
『私ですか? 私は火の妖精です』
「火の妖精か」
『はい』
僕は、何で蔵の中にいたのかを、妖精に聞いた。すると妖精はう〜ん、と悩んでいたが、小さな言葉で話し出した。
『実はですねぇ〜、ゴニョゴニョ‥‥‥』
「うん、うん、‥‥‥えっ! そうなの?」
恥ずかしそうに話す、火の妖精。で、ここだけの話、火の妖精は雨が急に降って来たので、何処か雨宿りできる所を探していた時に、雷に撃たれそうになって、あの蔵に落ちたんだって。で、ここからの話、雷に撃たれた木が燃えるのを落ちた蔵の中から見て、力が抜けたんだって。
僕はそれを聞いてクスクス笑いました。
『だから話したくなかったんですぅ』
と、少しふてくされた様に言って来ます。
「あっ、ごめん、ごめん。けど、火の妖精が火を見て、力が抜けるとはね」
僕はまだクスクスと笑いを堪えてました。
『笑いたければ笑えばいいですよぉーだ。もう、知りません!』
また、怒っちゃいました、火の妖精は。
けどですね、火の妖精はまだ、光の物体?光の玉と言った方がいいかな、そのようになっていたので、表情はわからないんです。まあ、言葉の感情でわかるんですけど。
「ところで、名前とかあるの?」
『私ですか? ないですね』
「そうか、ないと不便だよな。だったら‥‥‥エミリ、てのはどうかな?」
『エミリ‥‥‥ですか?』
「そう、エミリ。何となくなんだけど、お前と話していると、母さんと‥‥‥母さんの名はエミリアて、言うんだけど、本当に母さんと話している感じがするからね」
『クラウドの母‥‥‥エミリア‥‥‥エミリ‥‥‥エミリ、うん! いいですよ!』
「よかった、じゃあ、これから宜しく!エミリ」
『はい、クラウド』
それからの僕は、いつもエミリと一緒だった。勉強する時も、遊びに行く時も、食事も、寝る時も、そして、母さんの部屋に行く時も、いつも一緒。
エミリが来る前は、僕が一人で話していたので、余り話が長く話せなかったが、エミリと二人で話すと、たわいのない話でも、面白く話せ、母さんの笑顔は今まで以上に多く見られるようになった。
「ほんと、貴方達、まるで兄妹みたいね」
母さんが笑顔をこぼしながら言ってきた。
「そ、そうかなぁ? じゃあ、僕が兄だね」
『クラウド、違うでしょ!私が姉でクラウドが弟』
「えっ! 何でそうなるのさあ」
『だって、勉強は私のが出来るし、あと、朝誰におこしてもらっているのかな?』
「うっ! そ、それは‥‥‥」
そう、突っ込まれると返す言葉が見つからない。そんな会話を横で聞いていた母さんも笑顔で、
「うふふふ、クラウドの負けね」
『エミリアも私を姉と認めているわよ』
意気揚々で、エミリは僕に言ってきました。
「ちぇっ! しょうがないなあ」
僕がそう言うと、エミリはどんなもんだい、的な感じで、僕の周りをグルグルと飛び交います。
「これからもクラウドの事お願いね、エミリお姉さん」
『まかせて! エミリア!』
その母さんの言葉で、またも僕の周りをグルグル回り出すエミリ。僕は少し頬を膨らましてます。そんな僕らを見た母さんは、クスクスと笑顔で笑ってます。そして、こんな幸せな時間がいつまでも続くと思っていた。
それが壊れ始めたのは、三年後の事だった。
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