第126話 冷たい手
エミリの膝枕から、やっと解放されたクラウドは、メイド達と屋敷に戻る途中、一人のメイドが、
「クラウド様、あの方は本当に、エミリア様ではないのですよね」
「うん、確かに母さんに似ているけど、エミリだよ」
「‥‥‥‥‥‥」
まだ、信じられないような目で、エミリをメイド達は見つめます。ただ、クラウドだけはこいつはエミリだ! と、
『確かに母さんに、似ている。けど‥‥‥違うんだ、母さんじゃないんだ!』
そう、心の中で思っていた。
クラウド達は屋敷に戻ると、母の部屋へ。
そして母が眠るベッドの横に行き、母の手を取ると、
「さっきまであんなに温かい手だったのに‥‥‥今はこんなに冷たい‥‥‥」
クラウドは、母の手を握る。しかし今はもう握り返してもくれない。「クラウド」と、自分の名も呼んでくれない。
ただ、顔だけは‥‥‥安らかな、本当に、安らかな寝顔でいた。それは今にも母が起きて自分の名を呼んで、笑顔を見せてくれる、そんな寝顔だった。
母の亡骸の顔を見たクラウドの頬に涙が一滴流れた。
◇◇◇◇
クラウドの母が亡くなった翌日、父、クラウディが早馬で帰ってきた。
そしてエミリアの亡骸を見て、
「エミリア‥‥‥すまなかった」
頭を下げた。そんな父を見たクラウドは、怒りを抑えながら
「父さん‥謝るぐらいならなんで早く帰ってきてくれなかったの」
「‥‥‥クラウド」
「母さんはね、最後に父さんに逢いたがっていた。話したがっていた。抱きしめて欲しかったて! なんで、なんで! 早く帰ってこれなかったんだよ!」
クラウドは父、クラウディを睨みます。そして‥‥‥
「母さんの事なんて、どうでもよかったんだ!」
怒りをおさえきれなくなるクラウドは、父をまた睨み返します。しかしその目は涙が溢れんばかりの表情をしていた。
「クラウド‥‥そうかも‥しれないな」
クラウディが下を向きながら、そう呟くと、クラウドは体を震わせ、
「バカヤロー!!!」
そう叫ぶと部屋を出て行ってしまった。
「クラウド!」
エミリはクラウドを直ぐに追いかけようとすると、クラウディが
「エミリ! 待て! お前に話がある」
「えっ!?」
エミリはピタッと足を止めると、クラウディの方を向きます。そして、いったいどうして?の表情をエミリは見せます。
そんな顔を見たクラウディは、
「‥‥‥改めてお前を見ると、若い頃のあいつ‥‥‥エミリアにそっくりだ」
最初クラウディは溜息をするが、エミリの顔を見ると、昔を思い出したかの、優しい表情を見せます。
「あの、それを言うために、私をひきとめたのでしょうか?」
エミリはクラウディの顔を見て言います。
「あっ、すまん。お前に頼みたい事があってな。それと‥‥‥」
クラウディが言うと、本棚から一冊の分厚い本を取り出した。そして、本を広げると、
「‥‥‥これは! あの時の」
エミリが驚き言うと、クラウディは頷き、そして、三年前の事を話します。
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