第127話 子を護れない親
三年前のあの蔵で、クラウドが持ち帰った、母、エミリアがその石を見て、表情を変えた石が、本の真ん中をくり抜いた穴に、納められていた。
エミリ はクラウディに問います。
「何故、本の中にこの石があるのですか?」
クラウディは、本の中の石を見つめて、神妙な想いで語ります。
「エミリ‥‥‥エミリアはこのガルバディ帝国が生まれではないと知っているか」
「ハイ、確かエミリアはプリム小国の生まれだと」
エミリが言うと、クラウディは軽く頷きます。そして、また目を閉じると、過去を思い出すように話します。
「この石は、エミリアがここ、アウター家に嫁いだ時にエミリアの親から貰った‥‥‥プリム宝石だ」
「プリム宝石?」
エミリは初めて聞く宝石の名前。クラウディは、そうだ、と真剣な顏で言います。エミリはここで、「?」と思います。何故、クラウディはそんな真剣な表情をするのか、と。
そもそもこの「プリム宝石」はエミリアの形見になるはず。だったらクラウドにも、この話をすれば良いのにと。
「何故、この事をクラウドに話さないのですか?」
すると、クラウディは、深い溜息を一つはくと、エミリの顔を見て、
「このプリム宝石は、今はプリム小国でも採掘されなくなった、幻の宝石なんだ」
「幻の宝石?」
エミリはプリム宝石を見つめると、クラウディはプリム宝石を本の中から取り出すと、
「なぜ、採掘‥‥取れなくなったかはわからない」
「わからないのですか?」
「ああ。そして今から話す事は、クラウドには話さないでほしい」
エミリはここでも、何故? と思います。何故、クラウドには話してはいけないのかと。しかし、クラウディのこの後の話を聞いて、エミリは体の震えが一瞬、止まらなくなった。
「このプリム宝石は‥‥‥ガルバディのホクトルアで取れるクリスタルと合わさると‥‥‥強力な爆弾になる。その破壊力は、ホクトルアを壊滅させるほど」
(ホクトルアは大体、北海道と同じ規模)
「爆弾!」
クラウディは手に取ったプリム宝石を見つめながら、更に話します。
「そして、このプリム宝石を探している連中がいる。それが反政府組織の『自由の翼』だ」
「自由の翼?」
「ああ、そして、今私が内乱で戦っている相手だ!」
クラウディが自分が置かれている事をエミリに話すと、エミリは何かに気づきます。
「もし、プリム宝石の事がクラウドに知れたら、クラウドが危なくなる‥‥‥」
エミリはクラウドの事を思いながら呟くと、クラウディは小さく頷く。そして、
「私はこの様な身だ。クラウドにいつまでも側にいてはやれない。だから頼むエミリ! あいつの側にいてやってくれ! クラウドの事を護ってやってくれ! 頼む!」
エミリに向かい、頭を深々と下げるクラウディに、エミリは驚きます。そして思います。本当はこの人はエミリアの側にずっと居たかっに違いないと。けど‥‥‥身分がそれを許さなかったと。
「一つ聞いていいですか?」
エミリがクラウディに言うと、頭を上げたクラウディの顔を見ると、一滴の雫が目から頬を伝わるのが見えた。それを見たエミリは、
「あっ、いえ‥‥‥なんでもありません」
クラウディは少し首を傾げます。ただ、エミリは、クラウディの頬に流れた涙を見て、やはりクラウドはこの人の息子なんだと、そう思った。そして、
『この人は、強い事を言っても、クラウドの事を考えている。そしてエミリアの事を誰よりも愛していたんだ』
と。
「わかりましたわ!クラウドの事は私が護ります。エミリアにも頼まれましたので」
エミリが返事を返すと、クラウディは少し驚いた表情でエミリを見ると、
「そうか‥‥あいつも‥‥」
クラウディは目を閉じると、何かを思い出していた。多分、エミリアの事だとエミリは、直ぐにわかった。それは、クラウディが目を閉じながら涙を流すと、「エミリア」と呟いたからだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます