第14話 ちょっと夜風に
婚約、それは結婚前におこなわれる儀式。
‥‥‥つか、僕はまだ結婚はしないと言ったのにい!て、まだ婚約もしてないかあ‥‥‥いやいや、僕にとって婚約も結婚も同じ事。そもそも前も言ったけど僕はこの異世界に来て日が浅い。こんな僕と一緒になったら‥‥どうなるか。それよりも2人の気持ちだよ。気持ち。メイルは‥‥‥まあ、タイル王にまで僕と一緒になりたいと話したぐらいだからわかるよ。うん。けど肝心のイレイは‥‥‥どうなんだろう?
「‥‥‥///」と赤面して下を向いてまた黙ってしまいましたとさ。めでたしめでたし、ではなく、アレク王に聞くとイレイのこんなに恥じらう姿は余り見たことがないとのこと。
まあ、初めてイレイに会った時は沈着冷静な人だと思ったからね。
で、イレイの気持ちはどうなのかと言うと
「光さえ良ければ‥‥‥」と呟いたそうなんですけど、僕はそれ聞いてないんですよね。
てか、いつ聞いたんですか、いつ。
だからてっきりまだイレイに避けられてるんでは、て思っていましたから。
で肝心の僕は
「あ、あ、あ、あ、えっ!!!こ、婚約ううう、ですかああああああ!ちょ、ちょっと待って下さい」
「何を待てと。こんなめでたい話はないではないか」
ひとりの男性が言うとその他の者も頷いた。
「け、けどですね‥‥‥」
「そうですわよ。もし私が男性ならこんな良い話は断らないわ」と何処かの婦人。
「で、でも‥‥‥」
で、何処かの男性が
「では、三人の婚約を祝って乾杯!」
「「「「乾杯!!!」」」
なにが乾杯ですか!何が!もう、勝手にどんどん話を進めないでくださいよお。
(けどね、半分は嬉しいんですけど)
けどね、けどね、僕はこういう場はあまり好きではないんですよ。だって上がってしまって自分が何してるかわからなくなるから。つまり上がり症。
僕はアワアワとしていると右にメイル、左にイレイが来た。
「どうしましたか?光様」
「光、調子が悪いの?」
と僕を心配して2人は来てくれた。で僕は2人に聞いた。
「イレイとメイルはこんな僕と婚約をして不安じゃない?だって僕は弱いし、力もない、権力もない」
「そんなこと有りませんわ。私は貴方みたいな優しい男性は見たことがないですもの」
とメイルが僕の右手を握る。
「そうよ。それに光は私達2人を真剣になって助けてくれた。そのような男性は今後2度と現れないでしょう」
イレイは僕の左手を握る。
「イレイ、メイル、ありがとう」
て、ここで終われば良い雰囲気でお終い、なんですけどね。男ってどうしてこういう時に限って余計な事を言う生き物なんだろうと。
「ところでイレイとメイルはなんか親しいみたいだけど‥‥‥」
「そうですわね。幼い時からの知り合いですか」とメイル。
「ですわね」とイレイ。
そうなんだ。要するに幼馴染なんだ。だからあそこまで仲が良いのか。
「だったら、もし僕が浮気なんかしようものなら‥‥‥ハアッ!」
や、やばい。僕はそう思ったんです。けどね時すでに遅して言うか、両隣のイレイとメイルを見るとニコニコしているんですよね。だからホッとしたら両手をギュギュとにぎられると両方の手の甲をつねったような痛みが、
で、「光様‥‥‥浮気ですか!おほほほほほっ!」とニコニコしながら額には怒りマークのメイル。
で、「光‥‥‥浮気は!おほほほほほっ!」とこちらもニコニコしながら額には怒りマークのイレイ。
で、僕は2人がまるでシンクロしているように感じた(いや、実際は恐怖を覚えました)ので
「こ、言葉が言い過ぎましたあ!す、すみませんでしたああああ!」
と頭を下げましたよ。僕は。
(やはり、いつの時代も女性は怖いものです、ハイ)
で、で、僕は今更気づいたんですがタイル王とアレク王が仲良く酒を酌み交わしているんですよ。それでイレイに聞いたんです。
「ええ、お父様とタイル王は若い時からの付き合いだそうです」
なあ!そうだったのかあ。‥‥‥うん?まてよ。だったらなんで大国と小国になんて別れたんだ?一緒になって共同で国を納めればいいのに。と僕は思ったんですが、それは後程わかってくるんですが‥‥‥。
しかし、慣れない場にいると体が拒絶反応を起こすのか?どっと疲れが来たみたいになるもんなんです。
「ちょっと夜風に当たってくる」
僕が少し怠そうに言うと
「大丈夫?」と心配そうに見つめるイレイとメイル。
「うん、大丈夫」
僕は席を立つと1人で外に出て行った。
外に出た僕は何処か休める場所は‥‥‥と探し歩いて中庭の芝生が月明かりに照らされて見えたのでそこに行くと、倒れこむように仰向けの大の字になって倒れた。
「はあ〜〜っ、夜風が気持ちいい」
廊下の街路灯の魔法石火よりも明るい月明かりの下で僕は深いため息をした。
と、言えば「あー、いきなり異世界に来て疲れがでたんだなあ、とか、いきなり婚約させられて気持ちが張り詰めていたんだなあ」とか思っていましたか?
いえいえ、そうではありませんよ。だいたい異世界に来た事自体僕自身喜んでたし、婚約にしたって(内心は複雑)‥‥‥ねえ。
‥‥‥‥‥‥僕、酒がダメなんですよ酒が。
匂いだけでもだめなんです。ハイ。
それでメイドさんにお茶があるか?聞いたら「なんですかそれは?」と。まあ、ないのはわかってましたからね。で、水を頼んだら「このような席ではお酒しか出さない」みたいで僕がお酒が飲めないのを教えると鼻で笑われましたよ鼻で。で水を持って来て貰ったんですが、その際メイドさんに
「けど‥私はお酒を飲む殿方より飲まない殿方のが好きですよ」
と言われました。本音かはわかりませんけど。けどねこれ、はたから見ると僕がメイドさんを口説いているように見えるんですよ。何やら手渡しで貰っていましたからね。と、ただ水を貰っていただけなんですよ!水を。
まあ、幸いにもイレイやメイルに見られなかったから良かったが‥‥‥、
あの2人には見られましたよ。しっかりと。
オヤジーズ王の2人(タイル王とアレク王)に。しかもニタニタとした顔で。
後であの2人に何か言われるんだろうなあ、と思うと気が重いですよ。ええ。
そんな訳で僕は中庭の芝生の上で大の字で寝転がってます。
「けど‥‥‥何か忘れているような」
「ひ、光‥‥‥」とボロボロになりながらのチーがあっちふらふらこっちふらふらとしながらこっちに向かってよたよたと歩いて来た。そして僕の隣に来るとチーも大の字になって倒れた。
「ど、どうしたんだよチーその姿は」
「う、うん。ご婦人達に囲まれ‥‥‥」
「えっ?囲まれた?(もしかして得体の知れない物だから袋叩きに)」
「‥‥‥僕の奪い合いになった」
「へえ?チーの奪い合い?でもなんで?」
チー曰く、最初はイレイと一緒に居たみたいなんだけど1人の女性が「これはなんですか?」と聞いたみたいでイレイが正直に「妖精」と答えたとのこと。まあ、この世界では妖精は滅多に見れない物ではないらしいが、イレイがチーのおかげで光と知り合ったて言ったらご婦人達がそれにあやかろうとチーの奪い合いになったらしい。
「それは災難だったな」
「うううっ、人間の女性は怖いよおお!」
「だなあ」
「「はあーーーっ」」
と僕とチーは深いため息をつきましたよ。
「ところで光」
「なに?」
「なにか体におかしいな?て、所あるかな?」
「えっ?う〜ん、別に。けどなんで?」
「ないのか。そうなんだ。だったら光には‥‥‥」
「なんなんだよチー」
「うん、光にスキルが出たのかなあて思ったんだよ」
「えっ!スキル?」
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