第80話 白い4WD車

アレク王は全員をプリム城から少し離れた場所に案内をした。

その場所は、山と山の間にある丸太小屋だった。

丸太小屋の大きな折りたたみ式の扉を開けると中は真っ暗だ。

その中をスマホのライトで中央まで進むアレク王達。そして、微かに見える白い物が‥‥


「お父様‥‥これは?」


室内がまだ暗く何かがわからない為、アレク王に聞くイレイ。

そしてアレク王は自分のスマホを取り出すと


「アイ‥‥‥エンジン始動!ライトオン!」


「「「「えっ!!!!」」」」


イレイ、メイル、ミレン、エレムが驚くと同時に車のエンジン音とライトが点灯する。


「ま、眩しい‥‥‥」

イレイ達が目を細め腕で目の辺りを覆い隠すとタイル王が、


「光がお前達の為に用意した物だあ!」


と叫び、イレイ達に指を指す。その指を指す先を四人は‥‥‥自分達の後ろを振り向くと、


「「「「お父様!!!!これは‥」」」」


イレイ達の後ろには、四台の白い4WD車が停まっていた。


「何故?これがここにあるのですか!」


メイルが問うと、タイル王が、


「これは光が万が一の時の為に、我々だけの車を用意した物だあ」


「万が一?ですか?」


ミレンが言うと、今度はイグム伯爵が、


「ああ、そうだ!我々一人一人の為に光が用意したんだ!」


「一人一人ですか!?」


「ああ、そうだ!」


エレムが驚いた様に言うと、アレク王が言います。


そう!僕は万が一の時の為に、彼女達を、いや、皆の為にコピーを使い、出した4WD車。

しかもチーとマーの魔法で、燃料要らず、メンテナンス要らずの車に仕上がっています。

まあ、スペックはその分下がりますがね。


「光が毎朝、日が昇る前に出掛ける理由は、これだったんですね」


イレイは目の前の四台の4WD車を見て言います。そして‥‥思い出します‥‥あの時の光に対しての冷たいセリフを‥‥‥‥‥‥‥


「光、いつも朝早くから、どこにいってますの?」


「えっ? うん‥‥‥アイにもう少しこの地の道を覚えさせたくて‥‥‥」


光がそう言うので、私が“では一緒に行っていいですか?”と言うと少し困った様な顔をすると、“朝が早いので”と光が断ってきたので、


「そうなんですのね!光は毎日、アイ!アイ!ですのね!わかりましたわ!いってらしゃしゃいませ!光!」


側から見ても怒っているのがわかるイレイ。


「う、うん‥うん‥‥‥ごめんイレイ。この穴埋めは必ずするから」


「はい、はい!わかってますわよ!光!」


‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥



「光‥‥‥ウウウッ‥‥‥私‥‥‥私は‥」

イレイは何か申し訳なさそうな顔をして、一人ブツブツ言ってますよ。

で、メイルが、


「どうかしたの?イレイ?」


「‥‥‥実は‥‥」


「うん、うん‥‥‥えええっ!、光様に!‥

けど、イレイの気持ち分からないでもないわ。イレイ!今度、光様に会ったらガッツンと言ってやりましょう!ガッツンと!」


メイルが怖い顔をしてイレイに言いますよ。

まあ、メイルが遥々プリム小国まで来て、僕に会えず、ましてや、車を黙って用意したんですからね。普通の状態のメイルなら、車を見たら喜んでいたでしょうが。


で、タイル王が


「お前達、全員スマホを出してくれないか!」


「「「「えっ?」」」」


そうタイル王に言われ、四人はスマホを取り出すと‥‥‥


「私のスマホの画面が赤く光ってる」

とイレイ。


「私のは青く光ってますわ」

とメイル。


「私は緑です」

とミレン。


「黄色に光ってますわ」

とエレム。


四人のスマホが色ごとに光りだすと、各4WD車の車内のダッシュボード上の野球ボールぐらいの球体も、色ごとに光り出した。


「お前達が持っているスマホの色と車内で光ってる同じ色が、お前達専用の車だ!」

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