第85話 ニヤついた訳

『自由の翼』とは、ガルバディ帝国、現政権に反旗を振りかざす、組織の名。

と、言えばカッコよく聞こえは良いんですが、実際的には自分達のわがままな政策をしたい為の団体。


今のブレイク王に国王が変わってからは、『自由の翼』の組織力は弱体の一途を辿っている。

それもそのはず、今まで独裁政策だったガルバディを、国民中心の政策に徐々に切り替えてきたのが、ブレイク王その人である。

だからこそ、ブレイク王は国民に絶大なる人気があるが、それを良くないと思う者がいた。


「旧政策で楽して金儲けをしていた奴らだ」


アルベルは言います。デーブルもそれに頷きます。


そして‥‥‥今回の、ブレイク王暗殺の件、どうやら『自由の翼』が絡んでいる事が、デーブルの言葉で分かったと言うことだ。


「あの時、私が【ブラックテンション】でブレイク王に飲ませた薬は、睡眠薬です。私も王が暗殺されると知り、何とか、助けねばと‥‥‥睡眠薬で死んだと思わせれば、と。しかし、それを逆に利用されてしまった。睡眠薬ではなく、毒を盛られてしまった」


つまりはアルベルも奴ら『自由の翼』にまんまと騙された。毒を盛って、王を殺そうとしたのはデーブルと勘違いをしていた。


「じゃあ、地下には繋がる扉の溶接と瓦礫は‥‥‥」


アルベルがデーブルに向かい言うと、


「あれはブレイク王を護るためです」


デーブルの横に居るノウスも頷き、

「私が早くアルベル様とチィーユさんに、この事を言っていたら、お互い騙される事もなかったのに‥‥‥」


「そんな事はない!悪いのは私だ!‥‥‥そして彼奴ら『自由の翼』だ!」


デーブルはノウスを抱き寄せると、ギュッと抱きしめた。

抱きしめられたノウスの頬には、一雫の涙が流れた。


それを見たチィーユは、


「許せない!ノウスに涙を流させるなんて!絶対に彼奴ら『自由の翼』は許せない!」


歯を食いしばり、体を震わせ、今にも奴等がいたら殺してしまう勢いで激怒します。


その場に居た全員は、そんな激怒したチィーユを見て、自分達も怒りに体を震わせます。

無論、僕も。


しかし、アルベルは


「一つわからない事があるんだが‥‥‥」


「何がわからないの!ギッシュ!」

とチィーユがまだ怒りながら言うので、アルベルは少し後ずさります。


「あ、ああ‥‥‥デーブルのあのニヤついた顔は何故かと思ってだな‥‥‥」


「はあ?そんなのこいつの癖じゃないの!」


デーブルに指を指しながらチィーユは言いますよ。


「えっ?あ、あのですねぇ‥‥‥それは‥」

デーブルがそう言いかけた時に、ノウスが、


「‥‥‥それは違います。デーブルはそんな態度をする人ではありません」


デーブルの援護をするノウスに、デーブルは「ありがとう」とノウスを見ます。そんなデーブルと目と目が合ったノウス、お互いジィーと見つめ合います。


「あーっ!コホン!、そこのお二人さん良いかな?」


アルベルがわざとらしく咳をしますと、

「ハアッ!」我に帰るデーブルとノウス。


「本当にお二人は愛し合っているんですのね」とミリア。


「けど私達も負けてませんわよ。ねぇ♡光様♡♡♡」

そう言うと、ミリア、僕にまた、抱きついてきましたよ。


「ちょ、ちょ、ミ、ミリアさん‥‥‥」


「光様♡♡♡」


「ちょ‥‥ボキ、あーっ!」

負けじとミリア、僕に力一杯また抱きつきますよおお!


「こ、こ、こ、こんがいぼ、‥‥‥悪亜がからんでえいるので‥‥‥ボキ、ああ‥‥‥」


ミリア以外の全員が僕を哀れむような目で見ますです。で、僕は必死でそう言うと、悪亜が、


「光の言う通りですね。私がデーブルに取り憑いて、無理して笑ったら、あんな笑い方になったんです」


と悪亜。


“「あの〜う、お取り込み中申し訳ないが、もう僕の話を続けて良いかな?」”


わあーっ!五百年前の僕!また未来視で、今の状態を見ていたのか!てか!早くこの様な状態になる事、言ってくださいよ!


“「いや〜、面白くなるかもと思ってねぇ」”


いやいや、面白くないですよお!

「光様♡♡♡♡♡」ミリア全力で抱きつきますよ。


「ポキポキ、ああっ!!」


“「では、ここからが本題だ!」”


五百年前の僕!言うのが遅いわああい!

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