第147話 逃げる

僕は必死に4WD車を走らせた。右腕一つでハンドルを持ち、

この何もない禿山の緩い降る勾配を思いっ切りに。

そして遂に火山が爆発した。

それと同時に噴石が飛び出した。


「光、フンセキがキマス」


「なあ! 」


僕が驚いていると、荷室の後部窓から後ろを見るマーが大声で叫ぶ。


「光! 地面が! 割れた地面が迫ってくる!」


「なんだって!」


その地割れのスピードは早い! 凄まじい勢いで迫ってくる。こちらは時速80以上は出ていが何とか振り切れるぐらいか。

そして、


「ヒューーーーン」


「なんの音だ!」


後部座席のクラウドが叫ぶと、


「ヒューーーーン ドカアーーーン!!」


4WD車の横僅か三メートル先に、50センチぐらいの噴石が落ちてきた。

地割れは治ったが、次は噴石!

僕は数秒考え、


「チー! 4WD車に結界を張れないか!」


「結界? そうか! マー! エミリ!」


チーの掛け声に、マーとエミリは頷き、そして両手を合わせると、祈るようなポーズをとると、4WD車の周りに結界を張り巡らせた。


これで、小さな噴石は防げるが大きいのは‥‥‥


「アイ! 30センチ以上の噴石の落下予想データを3Dモニターに写してくれ!最優先で頼む!」


「リョウカイ! 3Dモニター二サイユウセンデウツシマス」


4WD車は噴石を何とか避けて走る。しかし小さな噴石は結界にガンガン!と当たる。それは4WD車の中に居ても振動が伝わり分かる程。更に大きな噴石は、僕が避けながら走っているが、何個か走る4WD車の横直ぐに落ちてくる。


「ヒューーーーン、ドカアーーーン!」


落ちた噴石が地面に食い込む。その衝撃で小石などが飛び散り4WD車に当たる。


「カンカンカンカン!」


後部座席のエミリは祈るポーズをとりながら少し驚き、クラウドがエミリを守るように、エミリに覆い被さるように抱く。その横でチーとマーも祈るポーズを取る。


「光! コウホウヨリカサイリュウが来ます」


「なあんだって!」


僕らの後ろから火砕流がかなりのスピードで迫って来た。

あんなのに呑まれたらひとたまりもない!

しかし‥‥‥


そう! 4WD車のスピードは既にレッドゾーンを超えていた。スピードも180は振り切っている。

幸いなのは地面が緩い勾配で、下がほぼフラットだったこと、が、


けど‥‥このスピードだと追いつかれる。


火砕流は早ければ、百数十キロのスピードで迫ってくる。


このままでは! このままでは‥‥


僕は必死に噴石を避けながら4WD車を走らせる。


どうしたら‥‥‥


「光‥」


「えっ!?」


僕の名を呼ぶ声が聞こえた。

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