第29話 光様は私の理想の殿方

僕がリペアと叫ぶとエレムが泡白い光に徐々に包まれていく。

そしてベッドから数センチエレムが浮き上がると眩しいぐらいの光に包まれた。


そこへ先程部屋を出ていったアレク王が戻ってくると


「な、なんだ!なにがあった!!?」


と叫ぶが光は収まらない。


「エレム‥‥‥‥どうなって‥‥‥あっ!」


イレイはエレムを見ると腕や顔についていた擦り傷が徐々に消えていくのがわかった。


「エレムの傷が‥‥‥治っていく」


そして‥‥‥エレムを包んでいた光がおさまるとエレムがベッドにゆっくりと降りた。

イレイ達はいったいなにが起きたのかわからないでいたが‥‥確かなのはエレムの傷が消えたと言うこと。

そして、


「‥‥‥‥‥‥うっ‥‥‥うう〜〜ん」


と意識が戻ったのかエレムが唸る。

マキエ妃とアレク王はエレムと何回も叫ぶ。そしてイレイも。


「「「エレム!エレム!エレム!」」」


と。


ゆっくりと目を覚ますエレムは小さな可愛らしい声で呟きます。


「‥‥‥お母様‥‥お父様‥‥ここは?‥お姉様も‥‥」


そしてエレムはここは?と目を左右にゆっくりと動かすと、マキエ妃は大粒の涙を流してエレムを抱きしめ、アレク王も「よかった」と涙をながしてます。


「光‥‥ありがとう」

イレイが嬉し泣きで僕に言いますが、僕は苦笑い?に近い笑顔で


「よかっ‥‥‥た‥‥」


「光‥‥?」


「ちよ‥‥と‥‥部屋‥‥出る‥」


僕はイレイに言うとまるで足に重いおもりが付いているような重い足取りで部屋を出た。そして扉を閉めると壁にもたれ僕は‥‥‥倒れた。


『な、なんだよ‥‥‥頭が、い、痛い!いやこれは‥‥何かに‥‥頭が‥押しつぶされそうな‥‥』


「光!大丈夫か!光!」


チーが心配そうに叫びますが‥‥‥僕の体が動かない、ゆう事をきかないんです。

そしてイレイが僕の事が気になったのか部屋から出てくると倒れた僕を見て、


「!!!光!!」


驚いたイレイは僕の所にすぐに駆け寄ると


「光!光!光!」


僕の名前を何回も呼びます。けど僕は目をイレイの方に向けるのがやっと。


「‥‥‥イ‥イ‥‥レイ‥‥‥」


僕は何とかイレイと言うと意識をなくした。



◇◇◇◇



僕が意識をなくして何時間たったんだろう?

僕は目を覚ますと目だけで辺りを見ます。

どこかのベッドで僕は寝ていました。


「また知らない天井‥‥‥」


またこのセリフを言ってしまいましたよ。

僕は身体を動かそうとすると動きます。ただなんだか重たいような‥‥‥。

なんとか身体を起こすとイレイがベッドにもたれうつ伏せで寝ていました。

「‥‥‥イレイ‥‥心配かけさせてごめん‥‥」


僕はイレイの頭をそっと撫でましたら、チーが横からヒョイと僕の目の前に来ました。


「光、大丈夫かい?」


「チー‥‥うん、もう大丈夫」


「よかった」

チーがホッとしたのか僕の腕をポンポンと叩いてくる。

けど‥‥なにがどうなっているのか僕はチーに聞いてみた。


「チー、僕にいったい何が起きたんだい?」


「光‥‥‥君は、エレムを治す代わりにエレムの痛みを光が引き継いだんだよ」


チーがそう言ったが僕にはよくわからなく


「どう言う事?」


「つまりエレムの傷の痛みを光が受け継いだんだよ。しかも痛みが倍になってね」


チーが言うには、無機物つまり物には痛みと言うのはない。【リペア】で物を直すにはなんら問題はない。ただし生物は傷を負えば必ず痛みがでる。つまり【リペア】を痛みを出す生き物に使えば痛みが倍になって帰ってくる、と。


「今回はまだ光が痛みに耐えて気を失う程度で済んだからいいようなものだけど、もし痛みに耐えきれなければ‥‥‥」


「耐えきれなければ‥‥‥」


僕は生唾を飲み込むとチーの次の言葉に体が震えた。


「耐えきれなければ、精神が崩壊してやがて死ぬ‥‥‥」


死、何度となく聞いた言葉。けど‥‥‥それが自分自身に関わってくるとその言葉はかなり重く感じた。


「チー‥‥‥今の話、本当なのですか?」


僕の横にいたイレイがうつ伏せからゆっくりと身体を起こし、

そして真剣な面持ちでもう一度チーに聞きます。


「今の話は本当なのですか?」と。


チーは小さく頷いた。


「‥‥‥光‥‥」


イレイはそう呟くと悲しいような表情で僕の頬に両手をそっと添えると、


「私の愛する人が‥光‥あなたがあんなに苦しむ姿を私は見たく‥‥‥もう見たくありません。だから【リペア】は‥‥‥」


僕は小さく頷くと、


「けどね、イレイ。これだけは心の片隅にしまっておいて。僕は愛する人、イレイ、メイル、ミレンがもしエレムと同じ様な事になれば迷わず【リペア】を使う」と。


しかしイレイは何も言わなかった。ただ僕の頬を優しく撫でてくれていた。


と、ここで終わればいい雰囲気でまたイレイと‥‥‥そ、その///キス///できるのかな、て思ったりしていたんですけどお!


「トン、トン」と扉をノックする音。


「お姉様、私です。エレムです」


「どうぞ」


とイレイは直ぐに両手を僕から離すと、何事もなかったかの様に振る舞う。

そしてエレムが部屋に入って来て、


「‥‥‥光様、お気づきになられましたんですね。よかった。今回は私を助けて下さりありがとうございます」


エレムは僕に頭を下げお礼を言った。


「イレイの妹だもん。助けるのは当たり前の事だよ」


僕はニコリと笑顔で言うと‥‥‥なんだかエレムの様子がおかしいんですよね。

なんだかもじもじしていると言うか。

で、僕の横に来るといきなりピョンとベッドの上に飛び乗り僕に抱きついて来ましたよ。


「光様は私の理想の殿方です。私を真剣になって助けてくれましたわ」


「えっ!ちょ、ちょっとエレム。うん?このパターンどこかで」


なんだか嫌〜な予感しかしないんですけど。


「私とも婚約して下さい//////」


やっぱりそう来たかアアアアアア!

イレイ、イレイさん。硬直してますよ。

この後僕はイレイに1時間口を聞いてくれませんでした。

やっぱりお約束は継続中ですかアアアアア!

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