第163話 助けて

僕らの背後からカイトの名を呼ぶ声に、後ろを振り向くとそこには、三人の子供が立っていた。一人はカイトと同じ年頃の肩まで伸びた黒髪の少女。後の二人はカイトより少し幼い男女だ。


「カイト!」


「ミル、メル、サイ!」


カイトは友達の名を呼んだ。その子達は明らかにこの村の子だとわかる身なりをしていた。服は継ぎ接ぎだらけ、顔も少し汚れている。何処かであそんでいたのだろうか?


「カイト!何故急にいなくなった!」


一番上の子か?カイトを見ると少し涙ぐんでカイトに近寄って来て言ってきた。


「ミル!」


カイトもその子、ミルに嬉しくて歩み寄ると、二人は右手に拳を作ると、グータッチをした。


「ミル‥‥‥ごめん、急に居なくなって」


「カイト、あたいらの何処から居なくなるなら、一言言ってけって!」


「えっ?」


カイトはミルの言葉に驚きます。てっきり怒られるかと思ったんでしょうね。

けど、実際は違っていました。

で、なんで?と僕が聞いたんですよ。


「あんたは?」


「えっ? あっ、僕は乙川 光て、言うんだよ」


「オトカワヒカリ? また変わった名前だね」


あー、やっぱりこの世界では、初対面の人からは僕の名は変なんですよね(ちょっとしょげますよ)


「で、カイトのなんなんですか?」


「えっ? えっ〜と、それはですね‥」


「僕のお兄様です!」


「「「えっ⁈」」」


て、やはり驚きますよね。カイトのお兄様なんて言われたら‥‥‥うん?何故に驚くんだ? 普通なら「あっ、カイトのお兄様なんですね」なのに、まるでカイトの兄弟の事を知っていた感じだ。それにあのセリフ。


「いなくなるなら、一言言っていけ」


まるで、カイトの事を知っているような感じ。

僕はミルを少しきつい顔をして見ると、ミルは僕から目をそらします


「もしかして‥‥‥カイトの正体の事を知っていた」


「‥‥‥」


「別に怒ったり何かするような事はないよ。‥‥ただね、君達、カイトに何か頼みたい事があるんじゃないかなって思ってね」


僕はミルに言うと、ミルは驚き、ゆっくりと僕の方を見ます。

そして、小さく頷くとカイトに向き合い言います。


「カイト! お前がこの国の王子だったのは最初から知っていたよ。けど‥身分なんか関係ない!カイトはあたいらの友だちだから」


「ミル」


カイトは嬉しくなり、ミルに抱きつきます。

けど‥ミルは何か余り嬉しくないのか、表情が芳しくありません。何かもの言いたげな、そんな感じです。そして、


「‥‥‥カイト! 助けて!」


「えっ?」


「サラ姐を助けて!」


「サラ姉さんがどうかしたの?」


サラ姉さんとはミルの4つ上の姉で、15歳だとか。ミルの兄弟は4人で、ミルの下に6歳と5歳の妹がいる。父親は出稼ぎでいなく、母親は毎日朝から晩まで畑などの仕事をしている為、実際、妹達の面倒はサラ姉さんがしていたとか。

そんなサラ姉さんが二日前から高熱を出して寝込んでいるとか。しかも熱はさがるどころか、どんどん上がっているみたいだと。


「カイトの力で、この村に医者を呼んでくれないか!お願いだ、いやお願いします」


ミルは頭を下げて言う。涙を流して。そしてそのミルの顔はもうカイトしか頼るものがいない、そんな顔をしていた。


「ミル‥‥‥わかった。けど‥急いでも二日はかかる」


カイトはミルに言う。そして、直ぐにサラ姉さんを助けてあげらるない自分への怒りと力の無さに絶望しそうになったカイト。


「ダーリン、何とかならないの?」


「旦那様、私からもお願いします」


エレムとミレンは僕の腕を取ると、自分ごとのように目を潤ませながら僕に言ってきます。

そんな美人の二人の婚約者(まだ正式ではないですが)の顔を見てると、僕自身も何とかしたくなりますよ。

で、


「うん、わかった。カイト!そのサラ姉さんて人の家に案内してくれないかい。僕も力になるから」


「えっ、本当ですか!」


そう言う僕にカイトの美少女的な顔が明るくなり、僕に抱きついてきますよ。

カイト君、体全体で喜びを表現してくれるのは嬉しいんですがね、あ〜っ! 僕はいけない道にまた一歩踏み込んじゃいますよお〜。

で、僕はカイトをギュッと抱きしめたかったんですが‥‥‥背中の方から凄い威圧感が‥

エレムとミレンから来ますよう(焦る)

で、僕らは一路サラ姉さんの家へ‥‥‥



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