第164話 高熱

サラ姉さんの家、つまりはミルの家に来た僕ら。家は村はずれの一軒家。赤いレンガの屋根に少し黒ずんでいる壁。いや、何度も修復されたような壁だ。家の隣には三メートルぐらいの木がそこだけ一本立っていた。


「マー、感じないかい?」


「チーも感じた?」


チーとマーが何やら僕の肩の上で話します。


「どうしたんだよ?」


「光‥‥うん、妖精の力を感じるんだよ」


「妖精だって! 本当かいチー」


「うん」


チーとマーは妖精の力を感じると言って来た。確かに僕も何か違和感の様な物を感じていた。で、僕はある方を見て、


「もしかして、あれかい?」


「多分‥‥‥」


それはやはりあの三メートルある木から感じていた。僕はその木に近づくと右手を木に触れた。


「旦那様、なにをしているのですか?」


ミレンが不思議そうな顔で言ってきたので


「あっ、ちょっと、ね」


しかし右手からはなにか感じるものがあるかと思っていたが、何も感じられなかった。

そして、木から手を離そうとした時、


『お願い‥‥あの子を助けてあげて』


「えっ? 誰?」


僕は辺りを見回したが、それらしい人はいない。もしやと思い、木に話しかけるが、なにも返事がない。気のせいなのか?いやもしかしたら妖精かも。と僕は再度話しかけるが返事は返ってこなかった。


「ダーリン、どうしましたか?」


エレムも一人で木に話しかけていた僕を見て不思議そうな顔をして、僕に言いますよ。


「えっ! あっ! な、何でもないよ」


「お兄様、中にどうぞ」


カイトが家の玄関らしきドアの所から手招きをしてます。で、僕も家の中に入ります。


「カ、カイト、王子様、どうして‥‥お城の方に戻られたのでわ?」


そう言う女性はミルのお母さんのミサ。

で、カイトが事の説明をすると、涙ぐみお礼をカイトに言います。


「ありがとうございます、ありがとうございます」


と。何度も何度もお辞儀をして。


「ところでサラ姉さんの具合はどうなんですか?」


僕はミサさんに聞くと、やはり突然高熱を出したらしい。その前は少し体がだるいと言っていたみたいだと。で、風邪ではと本人も早くに寝たそうなんですが、しかし次日には高熱を出したと。

それを聞いた僕は嫌な予感がしました。

けど‥‥‥


「この異世界に存在するのか? いやもしかしたらこの世界に転移した僕らのせいかも‥」


僕が真剣な顔で、一人ぶつぶつと言っていると


「ダーリン?どうかしたの?」


「お兄様?」


心配そうな顔で僕を見る、エレムとカイト。

僕は今回のサラ姉さんの病気の事は正直に話そうと、隠せばとんでもないことになるかもと思い、皆んなを集めて言った。と同時に僕はスマホでアイをここに呼んだ。


「旦那様、そんなことしたら村のみんなが驚きます」


ミレンが村の人達を心配して言って来たが、


「ミレン、それぐらいで済めばいい方だよ。あと、ミレンにもこれから話す僕の事を聞いてほしい」


ミレンは最初驚くが、僕が真剣な表情でミレンを見て言ったので、ミレンは頷いた。


「みんな落ち着いて聞いてほしい‥‥‥サラ姉さんはこのままでは死んでしまう」


「「「「「「えっ!」」」」」


確かにこんな事言われれば驚きますよ。

ミルとミサさんは信じられない様な顔をしています。『そんな事ない。嘘よ!』と顔を見ただけでわかるぐらいの顔つきで。

エレムとミレンは僕が嘘を言ってないのがわかるので、何とかならないの的な顔をして僕を見ます。

そしてカイトも‥‥‥


「お兄様‥‥‥嘘‥でしょ?」


僕は首を横に振ります。

そんな僕を見たカイトは僕を見て絶望します。やはりカイトの中の僕は何でも出来るスーパーマンみたいな存在だったらしい。

けどね、カイト。僕は普通の男。なんでもかんでもできるわけないよ。


「そう‥‥‥出来る事なら出来る」


「えっ?」


「サラ姉さんは死なせはしないよ!絶対に! ただ少し待って欲しい」


そう言うと4WD車のエンジン音とクラクションが「ブゥー」と鳴ったのが聞こえた。そして僕のスマホが鳴ると、スマホを取る。


「着いたか!」


「ハイ、イマスグソコニイマス」


「わかった!直ぐに行く!」


「リョウカイ」


「サラ姉さんを4WD車の所に連れて行きます」


僕はそう言うと、母親ミサさんに似て、美人のサラ姉さんをベッドからお姫様抱っこをするとベッドからサラ姉さんの黒い腰まで有ろうか髪がするりとベッドから落ちる。で、4WD車の所へ行こうとすると‥‥‥


「「あーつ!!」」


エレムとミレンはなんだか羨ましいそうな顔でこちらを見ますよ。これは緊急事態だからしかたないんですよお、二人共。て言っても二人は僕をジィーと見てますよ。

で、しかたなしに、城に戻ったら二人にもお姫様抱っこをする約束をしましたよ。けどね、そんなとこイレイ達に見つかると、今度はイレイ達にも、て考えると、気が重いです。


「あのう〜、お兄様‥」


「うん?」


「僕も‥‥して欲しいですぅ」


「えっ?なにを?」


「‥‥‥お姫様抱っこぅ/////」


カイト君、君は男の子だよ、男の子。美少女の姿をしてるが男の子。ほんとにねぇ、僕はですね、僕はですねぇ、思わず首を縦に振りましたよ//////。

え〜え〜、僕は縦に振りましたよ。縦にね。

あー、このままズルズルといってしまうのかなあー、僕わあぁぁぁ!


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