第161話 約束

アマリリス村、ガルバディ帝国の首都ベルガーから約150キロ程離れた場所にある。

人口は100人足らずの小さな村、そしてその約9割がお年寄り、女性、子供だそうです。

昔はこの辺りは緑溢れる、穀物がよく育つ土地だったそうですが、あの『ホクトリアの悲劇』により、この辺りの土地もかなりの被害が出たみたいで、今は木々が点々と立っている程度。穀物も育てても小さな実しか育たなく、売り物にもならない。


「けど、あの爆心地から五十キロは離れている場所なのに?」


「それは、ホクトリアのクリスタルが爆発で粒子になり風で飛ばされたせいだ」


朝早くに僕はアルベルにスマホで、連絡をして聞くと、そうアルベルが返答をした。

昔、アルベルはこの辺りの土地も調べたらしいが‥‥‥やはり悪い結果しかでなかったと。

そういった経緯から、この辺りは作物が育たなく、しかたなく男性は出稼ぎに出ている。


「そうか‥‥わかった! ありがとうアルベル。ところで‥‥チィーユは側にいるのか?」


「うん? なぜだ?」


「いやな、なんとなくな」


「チィーユなら隣にいるぞ、気持ち良さそうにスヤスヤと寝て‥‥ハアッ!光!」


「はい! ご馳走様でした!朝早くから悪かったなアルベル」


「あっ、こら待て光!なにか勘違‥」


僕はスマホを直ぐに切りましたよ。

まあ、とりあえずはカイトが僕と一緒にいることはわかったみたいだし、いる場所は後で

メールにでも送っときますかね。

『ブレイク王に連絡よろしく!』

て。


「そうだ! イレイ達にも連絡入れないと!」


「それなら私がお姉様に先程入れておきましたが‥‥‥」


なにやら深妙な顔で、僕を見るエレムなんです。で、


「ダーリン、お姉様に何かしました?」


「へえ? ううん、何も。でもどうして?」


「帰って来たらダーリンに、直ぐにお姉様の所に来るようにて言われましたの」


このエレムのセリフに僕は最初「?」とした顔をしたんですが、改めて考えると思い当たる節があるんですよね。


『光、無理な行動はしないで』


のイレイのあの言葉だと。けど、僕的には無理はしてないんですけど‥‥‥。

けどですねー、僕はそのイレイの言葉の後に約束したんですよね。6人の婚約者の前で。


「行動を起こす前に、みんなに相談する」て、事を。


そうなんですよお〜、僕はすっかりそれを忘れてしまいましたよお〜(焦り)

で、車を止めて表に出て直ぐにイレイにスマホで連絡しました。

いやあ〜、僕はその場にいないイレイに平謝りですよ。


「ミリアからも、今回はカイトさんの件ですので、私の顔に免じて、て言われましたから、今回だけは許しますけど‥‥‥」


イレイは最後、少しご機嫌斜めかな、てな具合で言ってきましたから、


「申し訳ありません、もう二度とこのような事はしません」


僕は更に平謝りですよ。

で、車内で待つカイトは


「お兄様、何故? あんなにペコペコとしているんですか?」


不思議がって見てますよ。僕を。

で、エレムとミレンがカイトに説明したんです。で、で、漸く4WD車に戻った僕にカイトは、


「お兄様‥‥僕の為にすみません」


とショボンとした顔をして言ってきました。

そんなことはないよ、と僕は言いますが、カイトは首を横に振ります。


「カイト、今回はすべて僕が悪いんだ。カイトすまなかった。エレムとミレンも、すまなかった」


カイトはいきなり僕が謝ったので、びっくりしてキョトンとした顔をしてますよ。でエレムとミレンは首を横に振ると、


「いいえ、いいですわよダーリン」


「私も気にしてませんよ旦那様」


「ありがとう二人共」


僕はエレムとミレンに頭を下げると、助手席に座るカイトが言います。


「お兄様はなんで直ぐにあやまるの?」


と。


「うん?それは僕が悪いからね。間違っているから素直に謝るんだよ」


そんな僕にカイトは可愛い顔を傾げます。で、カイト曰く、カイト自身が出くわした貴族の男性は自分が間違っても謝らなかったみたいで、しかも暴言や酷いと暴力までしてきたとか。


「カイトに暴言や暴力!」


どこの貴族なんだよ!僕はプンプンですよ!プンプン!


「お兄様、僕の為に怒ってくれるの?」


「当たり前だよ!大事な弟なんだから!」


この、セリフにカイトの顔が急にパァーッと明るくなり、僕に抱きついてきますよ。で、


「お兄様ダァーイ好き♡!」


顔をすり寄ってきましたよ。美少女の、いや、カイトは男の子です!けど‥‥

あっ!やめてカイト君、そんな事したら、僕は、僕は、いけない道に〜。落ちるとこまで落ちてしまううう〜〜〜‥‥‥


で、そんなこんなで、約2時間程で目的地、アマリリス村に到着しました。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る