第155話 押し問答

ブレイク王の前に揃った僕ら。

そんな僕らを見るブレイク王は、


「よくぞあの『ホクトリアの悲劇』を繰り返すことなく食い止めてくれた! もし、あの悲劇が起きていれば、ガルバディ帝国の三分の一はホクトリアと同じ運命になっていた。国民に成り代わり礼を言う」


ブレイク王は椅子から立ち上がると、僕らに頭を下げた。


「えっ! ちょ、ちょっと! ブレイク王、何もそこまで。僕らはこの国に住む人達の為に当たり前の事をしたまでの事。それに今回はこの2人が居なければ『ホクトリアの悲劇』を止める事は‥‥‥」


僕はブレイク王に真剣な表情で慌てて話すとクラウドとエミリを見た。

いきなり話をふられた2人は少し慌てるが、クラウドが、


「いえ、ブレイク王、やはりこの乙川 光が居なければ今回の件は無事に終わる事は無かったと。それに一時とは言え、あの『自由の翼』に入っていたのは事実です。ですから私はどんな処罰も受けます。ですから‥‥ですからエミリにだけはお咎めを、こいつは騙されていただけです‥‥」


クラウドはすぐ横に居るエミリに目を合わさず、真剣な面持ちでブレイク王に言った。

するとエミリは、


「いえ、私も同罪です! ですから私にも処罰を!」


エミリもクラウドを見ずに、ブレイク王の方を見て言った。ただその瞳は何かを護りたいそのようなに語りかける瞳に見えた。

そのセリフにクラウドは、


「何を言うか! お前は関係ない! これは私の罪だ! 私が処罰を受ける!」


「いいえ、私も同罪です!ですからクラウドの罪を軽くして下さい!」


「お前は関係ない!」


「いいえ!」


「関係ない!」


「いいえ!」


その2人の押し問答に周りにいた人達は唖然としてます。まあ、これだけお互いを思う気持ちが表だしして言い合ってますからね。

そんな2人を見たブレイク王は、最初は驚いていたが、なにやら薄っすらと笑みを浮かべて、(この時僕は、この笑みを見てこの人はまた何か考えたな、と)


「(少し笑顔)ウム! ではお前ら2人に処罰を言い渡す!」


ブレイク王のセリフに2人の言い合いが、ピタリと止み、周りの雰囲気が重くなる。

2人は生唾を飲み込んだ。そして‥‥‥


「クラウド=デ=アウターとその妖精付きのエミリ!アウター家の復活とホクトリアの復興に全力に当たるように!」


「「はあ?」」


ブレイク王の言葉に驚き固まる2人に、ブレイク王は再度、


「聞こえなかったのか。アウター家の復活とホクトリアの復興に当たるように、だ!聞くところによるとアウター家は三年前に血筋が途切れたとの事で、お取り潰しになったそうだが、今、アウター家の血筋は復活した。よって、アウター家も復活! 今後はアウター家の血筋を止めぬようにしなさい」


ブレイク王のセリフに2人は見つめ合うと、涙をポロポロと流しましたよ。

で、2人はブレイク王に向き合うと、


「ブレイク王! ありがとうございます!」


頭を深々と下げた。その光景にみんなは拍手を送った。祝福の拍手を。


「ところで光よ。改めて聞くが、お前はミリアの事をどう思っているのか?」


「えっ?」


いきなり、今度は僕にふってきたブレイク王。で、そのセリフに僕は直ぐには答えません。何故?

それはですねー


「僕は‥‥ミリアの事は好きです。一緒にいたいです‥‥‥ですが‥‥‥」


僕はイレイ達の方を見て、


「‥‥‥イレイに言われたんです。もう僕は僕一人だけの者ではないと。だから、彼女達の意見も尊重したいんです」


僕はミリアを見るとミリアも僕を見ます。そして、彼女達を見ると



「今更、なにをもうしますの?」メイル


「旦那様。私はよろしくてよ」ミレン


「ダーリン。私もよろしくてよ」エレム


「光様、私も」クリエラ


「光、もうミリアは私達の家族ですよ」

イレイが笑顔で頷いた。


「ありがとう! みんな(涙)」


僕は泣いちゃいましたよ。みんなの言葉に。


「「「「「「光、ダーリン、旦那様、光様が浮気をしないようにしないと!」」」」」」


「へえ?」


つまりは僕はこのお姫様達からは逃れられない運命にあるんですねー。


「よかったね、お兄様♡」


僕の背中にまだおぶさっているカイト。て、よくない!よくない!よくないよおおおー。

僕の自由は?ねえ!僕の自由はどこにあるの?てか、お兄様はまだ早いよカイト君。

(また前回と同じ落ち〜い)



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