第2話 力を貸してください
走り出した4WD車の車内。
「僕は乙川 光。改めてよろしくチー」
「こちらこそ。光、先程誰かと喋っていたみたいなんですけど‥‥‥」
チーが辺りを見渡すが誰もいない。ちなみにチーは助手席にチョコンと座っている。
「あー、それならこいつだよAIナビのアイ」
「えっ?どこですか?」
「アイ、あいさつして」
そう僕が言うと、運転席の前にある野球ボールぐらいの物がクルリとチーの方を向くと
「コンニチワチーサン」
「‥‥‥‥‥‥ええええええっ!!!!」
驚いたチーは座席の上を一回転して座席の下に落ちた。そしてゆっくりと顔をあげると
「ひ、光今のは誰?」と怯えながら言うチーに僕は、
「だから、AIナビのアイだよチー」
車を止めるとチーをヒョイと持ち上げると運転席の前の球体の横にチーを置いた。
するとアイは球体をキュィと動かすと
「ヨロシク、チーサン」
「!!!!!!!!!」
驚いて言葉も出ないチーに僕は
「そんなに驚かなくても‥‥‥」
「光!これは魔法ですか?魔法の球ですか?」
そう聞くチーに僕は魔法と言う言葉にはピンとこない表情で
「ああ、これは魔法じゃないんだ。コンピュータだよ」
「コンピュータ?」
チーがいまいち理解してないみたいなので、
「科学てわかる?」
「科学ですか。それならなんとか魔法科学がありますので」
この世界には魔法科学なんてのがあるんだと僕は思って、
「そう、科学だよチー」
「科学ですか」
チーはアイをペタペタと触り出した。
「ヤメテクダサイ、チーサン、ヤメテクダサイ」
科学、科学と言ってアイを触るのをやめないチーにアイは球体をキュィキュィと左右上下に動かす。まるでいやいやしてるみたいに。
「アイ、少しは触らせてあげれば」
僕は笑顔で言うと
「そうよ、アイ」とチー
「ヤメテクダサイ、ヤメテ」とキュィキュィと球体を動かすアイ。
そんな光景に笑う僕は車内のルームミラーの自分の姿に驚ろきましたよ。
「な。なんなんだよ!これは!!?」
◇◇◇
そのころプリム小国では、アレク王とイレイ姫が馬車で小国を出る所だった。
小国内では道は石畳で舗装されている為馬車でもスピードはでるが、一旦山道に入ると砂利道やぬかるんだ道の為、馬車は否が応でもスピードが落ちてしまう。
「何をしている!」
「はあっ、このぬかるんだ道では思うように進みませぬ」
馬車を操る兵の2人は王にそういうとなんとか馬車を前に進ませようと悪戦苦闘していた。
「くっ、このままではあのゲイルにイレイを‥‥‥‥」
アレク王は握りこぶしを作りグッとそれに力を入れた。
「お父様‥‥‥」
心配そうに見るイレイにアレク王はイレイの頭を軽く撫でると
「大丈夫だ。安心しなさいイレイ。必ず時間までにはアレム城まで届ける」と。
◇◇◇
自分の姿に驚ろく僕ですよ。
だってですねぇ、ルームミラーに映っていたのは50歳の自分ではなく明らかに青年の姿をした男が映っていた。
僕は自分の顔をペタペタと触ります‥‥‥
するとミラーの中の男も同じようにペタペタと。
「こ、これ‥‥‥僕なのか?‥‥‥」
するとチーは
「あ、それは多分異世界に繋がるトンネルを通ってきたせいですよ。年老いた者はある程度若返り、赤ん坊はある程度老いる。ですから今の光はだいたい20歳前後の姿になっているとおもいますよ」
チーが説明すると僕は納得した顔で質問した。
「まさかと思うけど‥‥このまま若返り過ぎて赤ん坊になんて‥‥」
「えっ?赤ん坊?なりませんよ。ここからはまた老いるだけですよ。ゆっくりとね」
チーがそう言うと僕はホッとしましたよ‥‥‥
‥‥‥‥‥‥‥‥えっ?ゆっくりと?
「あのう〜どう言うこと?」
僕はチーに聞くと、
「えっとですね。人が100まで生きるとしたら光は500までは生きますよ」
衝撃の告白だ!まさか僕が500まで生きられるとは。それでゆっくりと‥‥か。
「まだまだこの世界では驚ろく事はいっぱいありそうだな」
そして僕は4WD車で、また異世界の道を走り出した。
その先に何が待ち受けてるかも知らずに。
◇◇◇
「アレク王、やはらこの道では前に進む事は‥‥」
兵が王に言うと王は
「どけ!私が綱を引く!」と自ら馬の綱を持つが
「はあっ!はあっ!動け!前に進め!出なければ!出なければ!‥‥‥はあっ!はあっ!」
しかし馬は少しづつしか進まない。
そしてついには馬がバテ動かなくなった。
「はあっ!動け!動いてくれ!頼む‥‥」
「お父様‥‥‥もう‥‥もう‥いいです」
「何を言うか!イレイ、お前はあのゲイルの妃になるつもりか」
怒りやるせない王にイレイは
「‥‥‥仕方ありませんわ」
と言うとニコリと笑った。しかしその瞳は潤んでいた。
「神よ‥もし奇跡があるならイレイを救いたまえ!‥‥神よ‥」
祈るアレク王に虚しくも答えるのは周りの木々の風でゆれる葉だけだった。
◇◇◇
「所で僕達は今から何処へ向かえば‥‥‥て、何処に向かって走っているんだ?」
運転しながら助手席に座り直したチーに聞くとチーは
「そうですね〜、このまま行くとある小国に着きますよ。反対側に行くとアレム大国になります」
そう小さな指を指すチーに僕はウンと頷くと
小国と大国か‥‥‥
「所で光。この車と言う乗り物すごく良いですね。馬車に比べ椅子も硬くないし、なんだかこの中だと暑くも寒くもないし。おまけに馬車より速いですよ」
チーは物珍しいのかキョロキョロしてます。
僕そうかな?とスピードメーターを見たが時速25キロ程しか出てない。この世界を堪能しながら(ようするに脇見運転)走っている為だが(脇見運転は絶対しないように!)
そしてもう1つ、やはり知らない道なので無闇にスピードを出すのは危険とアイが判断したので。
そもそもナビが使えない現状、チーだけがたよりだからな。
「所でチーは魔法を使えるのかい?」
「魔法ですか‥‥‥ええ」
「だったらその魔法で‥‥‥‥」
言いかけた時アイが
「キケン!ゼンポウ二ショウガイブツアリ」
「障害物?何があるんだい?」
「ワカリマセン‥‥‥データ二ショウゴウサセマス‥‥‥バシャデス」
「馬車?あの馬が引く馬車かい?」
「ソノヨウデス」
因みにアイのカメラは車内の球体の360度カメラと4WD車の外に前後左右上下に各4つの計25個のカメラが取り付けられている。言わば室内車外にも360度カメラがある状態。だからナビがあればアイだけで自動運転をすることも可能だ。
「なんでこんな山道に馬車が?しかもこんな悪路を」
そう言うと4WD車を人が歩く速度まで落としゆっくりと馬車の横に横付けすると馬車を押していた2人の兵らしき人物と馬車に乗っていた女性が驚いた顔をしていた。
しかし1人の男はそれに気づかず馬の綱をビシッと何回も叩いていた。
光は車の窓を開けると、
「どうかなされましたか?」
見慣れぬ4WD車(て、当たり前ですよね)を見る2人の兵は初めて見る車に
「なんだ!貴様!見たこともない乗り物乗って、我々をどうかするつもりか!」
と警戒された。
し、しまった!いつもの癖で。ここは異世界だった!
「もしや山賊か物取りか!」
兵は腰の剣に手を置くと僕を睨みつけますよ。
これわやばいかも!車の窓を閉めようとした時、馬車内の女性と目が合った。
「えっ?‥‥‥綺麗な目をしてる‥‥‥」
その時、自然と自分の体が動き車のドアを開け車から降りていた。
「あ、あ、あ、のうう。怪しいものでは」
僕は両手を頭より高々とあげると
「こんなのに乗った奴が怪しいもなにもあるか!」
兵は言うと腰の剣を抜き僕の首元に。
「わ、わ、わ、たしは、ほ、本当に怪しい者はでは」
僕はガクガク震えながら答えた。
「だまれ!」
兵は僕の首元を掴んだ時
「おやめなさい!」
馬車の中の女性が馬車から降りてきた。
それを見た兵は剣を納め頭を下げた。
た、助かったあ。この世界では人助けをするとこんな目にあうのか?
光はまだ足がガクガクと少し震えてる。
「これはあなたの乗り物ですか?」
女性が言うと僕は女性を見ますよ。
その姿はまさに天使? いや女神様か‥‥‥
明るい黄緑色の腰までありそうなストレートの綺麗な髪、肌色はまるで雪の様な純白の白色に近い、瞳は薄い緑色、その瞳に見つめられるとまるで‥‥‥吸い込まれそうだ。
服装もエンパイヤドレスのスカートを短くした感じか。
身長は150ちょっと位、胸とお尻は‥‥‥恥ずかしくて見れません‥‥‥けど(チラリ)でてますよね〜。
「目も綺麗だが‥‥顔も容姿全て‥‥綺麗な人だ」
見とれていた僕。
「もし、どうなされましたか」
「えっ!あ、ああああ、す、すいません」
頭を下げる僕に女性はニコリと微笑んだ。
「イレイ姫様。その者にかまってなどいられません!早く馬車を動かさないと」
この人はイレイ姫と言うのか。うん良いなだよな。
するとイレイは何を思ったのか僕に向き合うと頭を下げ
「わたくしに力を貸してください」と
「へえ?」
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