「勇気」
名前 ヤナギハラ・ウタ
種族 人間
年齢 17
職業 村人(仮)
レベル 1
HP 1500
MP 800
スキル 言語理解・アイテムボックス・鑑定・暗視・剣術(初級)・体術(初級)・初級魔法(熟練度1)・使役(初級)
ユニークスキル 女神の加護・勇気
称号 転生者・ヘタレ・敵前逃亡
…………。
以上がステータスで確認した内容だ。色々突っ込みたいが、ここはアリアさんに説明を求める。
「へぇ。アイテムボックスのスキルがあるのか。便利じゃないか」
「アイテムボックス?」
「色んなものを空間に収納できるスキルだ。空間内では時間が止まり、食べ物が腐ることもない。取り出したいときにはそのものを念じるだけで取り出すことができる」
「めっちゃ便利じゃないですか!」
「そうだな。まぁ、こっちの住民ならまず必ず持っているだろうな。だが、転生者は持っていない可能性もある。ラッキーだったな。
とりあえず、金くらいは入れといた方がいいんじゃないか? その方がいくらか安全だ」
「……どうすれば?」
「ステータスのスキル一覧の中の『アイテムボックス』をタッチしてみろ。そうしたら画面の中に色々放り込めばいい」
言われたようにタッチしてみる。すると、画面が切り替わり、真っ黒くなった。
そこに金貨の入った麻袋を突っ込むと、『金貨500・麻袋1』と表示された(500もあったのか。どうりで重いわけだ)
とまぁこんな調子で、他のスキルの説明もアリアさんに求めた。
言語理解……ありとあらゆる言語で人とやり取りができる。読み書きも可能。
鑑定……薬草などを文字通り鑑定したり、他人のステータスを見ることができる。相手のレベルが自分より高い場合などは失敗する可能性もある。
暗視……暗闇でもしっかりと目が見える。(そもそも暗いところは怖いので結構嬉しい)
使役……魔物と主従関係になり、パーティーを組むことができる。
HPとMPはRPG的な解釈であってました。
その他剣術、体術、初級魔法などは文字通りだった。その威力はレベルに完全依存するらしく、レベル1の僕はスキル初級の熟練度も1だ。
称号はその人を簡単に表しているらしく、特に能力はない。つまり僕はヘタレで敵前逃亡する転生者だってことだ。……否定はできない。
「……で、ユニークスキルだが……これは私も分からないな」
「ええっ!?」
アリアさんが分からないんじゃどうしようもないじゃん! なにこの気になるやつら!
「でもお前、鑑定スキル持ってるだろ?」
「みたいですけど……」
「そのユニークスキルを鑑定してみろ。使い方と能力くらいは見えるだろう」
「……スキルってどう使えば?」
「心で適当に念じればいい」
「適当!?」
一番困るやつだ……。とにかく、適当と言われたので僕はステータス画面のユニークスキルを睨み付け、鑑定、と、心の中で念じた。すると、スキル名の横に、説明文のようなものが追加で書かれているのが見えた。
女神の加護……小さな女神様の加護。若くして死んだ少年を気遣った神様の本気。HP、MPが常に大回復する。また、一度だけ蘇生可能。他人には使用不可。
つっっっよ!? え、なにこれ強い。死なないじゃん! え!? すごくない!? しかも蘇生できるって! えぇー……。
やはりというかなんというか、こういったスキルは珍しいようで、アリアさんも少し驚いた様子だった。
そしてもう一つの方。
『勇気』
なんかあれかな。いつも勇気100%みたいなことかな? そう思って鑑定する。
勇気……自分の限界を越える。自らの心が恐怖や圧力に打ち勝った瞬間から3分間のみ発動する。このスキルが発動している間、ステータスの値、またスキルの威力が全て100倍になる。強靭なメンタルを持つ場合、連続で発動可能。自身の意思とは無関係。
……え?
おっかしーなー。今なんか、100倍って書いてあるように見てたんだけど? 気のせいだよね? うん、きっとそうだよね? ね? だって100倍だよ? 100……。
「ひゃくぅ!?」
「うわっ! なんだ、どうした?!」
「あああああアリアさん、仮に、仮にですよ? 僕のこの『初級魔法』の威力が100倍になった場合、どうなります?」
「……は? どうって……威力が100倍? ってことは……大体、熟練度が10になるってことだろ?」
「そ、それっていかほどで?」
「さっきのキマイラはレベル50だが……そいつを一発で仕留められるくらいだ」
「ええええっ!?」
「人に表してみれば、レベル100くらいのやつがやるのと同じだな」
「なんてこったいだ……」
これあれじゃん。ヤバイじゃん。スッゲー強いじゃん。そうだ忘れてたけど僕には加護もついてるんだよ? 死なない上に攻撃力これって……マジか。
「……まさか、ステータスが100倍になるスキルだったのか?!」
「あ……はい。で、でも! 発動条件があって、」
そう。このスキルを使用するには『自分の心が恐怖や圧力に打ち勝つ』ことが必須なのだ。ここで問題が生じてくる。
「……僕はヘタレなんですよぉ……」
「……うん、だろうな」
生まれてこの方、面倒な争いなどは全て避けて通ってきた。そんな僕が、ヘタレとしてはレベルマックスの僕が、恐怖や圧力に打ち勝つ? ででで、出来るわけない! というか、
「魔物とか怖くて戦えません!!!」
「それ断言するのか」
「だってあんなに大きいんですよ!? あれと戦うんですか!? 無理ですってぇ……」
「ヘタレだな」
アリアさんは呆れたように首を振り、僕の手を引く。
「ほら行くぞ、チキン野郎」
「わっ、ちゃ、ちゃんと歩けますから!」
「早くしろ。全く……これだからヘタレは」
アリアさんは僕の手を掴んだままずんずん進んでいく。その横顔が、少しだけ柔らかくなったのを覚えている。
「ていうか、鑑定しないとスキルの使い方分からないって、不便じゃないですか?」
「あぁ、不便だ。ものすごく」
「デスヨネー」
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