バレンタイン逃した!

作者「バレンタイン逃したぁぁぁぁ!!!!! 遅刻してますが、バレンタイン話を」


スラ「ぷるぷる(お前が書きたいだけだろ)」


作者「さーせん」



◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈



「……で、結局どうなんですか?」


「なにがだ?」



 僕が唐突にそう訊ねると、アリアさんはキョトンとした様子で僕を見た。


 2月14日、バレンタイン。その文化はこちらにもあるらしい。と、いう話を、アリアさんの部屋で今聞いたところなのだ。(ちなみにオセロらしきゲームをしていました。アリアさんとっても強いです)

 バレンタイン文化は国によって色々あるが、マルティネスでは日本と同じ。となると、気になるのは……、



「だから、アリアさん、ディランさんに渡したんですか? チョコレート」


「え、あ!? それ!? それを今聞くのか!?」


「だって、バレンタインといえばそうですよね? あげたんですか? 手作りとか」


「あげ……なくもない、けど! それを今話す必要はないだろ?!」


「えー、聞きたいです」


「やーだよ!」



 アリアさんはそう言って、ぷいっとそっぽを向く。聞きたいのに聞けないジレンマ……。くっ、こうなったら!



「……じゃあ僕、ポロンくんとフローラ呼んでこよっと」


「え?」


「きっと二人も聞きたいだろうなぁ、アリアさんの恋ばなー。アリアさん押しに弱いから、二人が来たら話してくれるんだろうなぁー」


「おいっ! 一人が三人になったって、私は話さな――」


「本当に話さないんですか?」


「うっ……」


「じゃあ、呼んできていいですね」



 僕がそういいながら部屋から出ようとすると、慌ててアリアさんが止めてきた。



「ま、待てって! 分かった! 話すから!」


「話してくれるんですか?」


「……二人に聞かれたくない。恥ずかしすぎるだろ、こ、恋ばななんて……。

 お前も! そういう手を使うのは卑怯だと思うぞ! ちょっとヘタレから離脱したからって!」


「あはは……確かに今のは無理矢理でした。すみません」


「……そんなに聞きたいのか? 私の、その、恋ばな」


「とっても聞きたいです」



 アリアさんはため息をつくと、ベッドにぼすっと腰を下ろして話し始めた。



「バレンタイン、渡したことはもちろんあるよ。だって……一番、好きな人だもんな。渡さないわけないさ。

 父上と、エドと……ディラン。その三人には必ず渡していた」


「へぇ。エマさんはどうなんですか?」


「エマと一緒に作ってたんだ。あと、アキヒトからは貰ってた。めちゃくちゃ美味しいんだ、あいつの」



 そりゃそうだろう。彰人さんの料理はどれも絶品だ。チョコレート系は食べたことないけど、和菓子の腕もなかなかだ。



「……というかこれ、もうお互いに告白、とか、しちゃったあとだから、そんなにドキドキするような話はないぞ?」


「いいんです! で、どんなの渡したんですか?」


「初めのほうは上手く作れなくてなぁ。ただ溶かして固めただけのとか。慣れてきたらケーキっぽくしたり、生チョコ作ってみたこともあるぞ」


「それで、お返しは!?」


「毎年二人で出掛けて、それでご飯食べたり、ケーキ食べたり、だな。倍以上のものが返ってくるから、私も毎年気合い入れて……って、なぁ? もういいだろ?」



 どこか恥ずかしそうに顔を赤らめたアリアさんを見て、思わず笑ってしまった。わりとありがちな話で、そんなにドキドキするような要素もないのに、こんなに恥ずかしがるなんて……。

 普段は強気な方で、実際強くて、頼り概のある人なのに……。



(ディランさんが好きになるのも分かるなぁ。こんなにかわいらしい女の子なんて、なかなかいないや)


「……おい、なに笑ってるんだ!? 変なこと考えてるんじゃないだろうな?!」


「いやいや! そんな変なこと考えてませんよ!」


「本当か? っていうか、私は話したんだ! お前のほうはなにかエピソードとかないのか!?」


「僕はお姉ちゃんとお母さんからしか貰ったことないんで。ごめんなさい」



 そうやって笑っていると、不意に僕の前に箱が差し出された。


 ……え?



「なんだ、じゃあ私が、身内以外で初めてお前にチョコやった女なのか」


「え……えっと、くれるんですか?」


「義理だぞ?」


「分かってますよ」


「くれないと思ってたのか?」


「くれないと思ってました……」



 僕が綺麗にラッピングされたチョコを受けとると、アリアさんは優しく微笑んだ。



「やるに決まってるだろ? 美味しく食べてやってくれ」


「あ、ありがとうございます!」


「こちらこそ、いつもありがとな。これはその気持ちだ」



 僕は手の中のチョコを見つめた。……やった、バレンタインのチョコレート! 誰だってバレンタインにチョコ貰ったら嬉しいものだ。

 そう僕が心の中で歓喜していると、部屋のドアがノックされる。



「ん? 誰だ?」


「あ、私ですよ!」


「フローラか、いいぞ!」



 扉が開き、フローラが入ってくる。その手には、リボンが結ばれた袋があった。



「あ! あの! これ、バレンタインの作ってきました! お二人の分です!」


「わ、ありがとう! 作ったの?」


「はい! アキヒトさんに教えてもらいました! だからその、味は、悪くないはず、です!」


「ありがとう、フローラ。これ、私からだ」


「わぁ! ありがとうございます!」



 すると、今度はなんの前触れもなく扉が開く。



「アリア姉! ウタ兄! フローラ! ……ん!」



 突然ポロンくんが押し入ったと思ったら、そんな感じでチョコレート押し付けられました。



「……え?」


「は、早く受けとれよ! せっかく作ったんだから!」


「え、だってポロンくん、男の子だし……」


「……え、男はチョコあげないの!?」


「ないことはないけど、……珍しい、かな」



 すると、ポロンくんはちょっとショックを受けた感じで、僕らを見た。



「え!? だ、だってバレンタインって、好きな人にチョコ渡すんだろ!?」


「うん、まぁ」


「……なら、あってるじゃん」


「…………」


「おい! なんか言っ――」


「「「好き!」」」


「え!? お、おいらもだけど……」



 そんな、平和なバレンタインでした。



◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈



「オオー! このチョコ大福うまい!」


「チョコレート、神……」


「アイリーンにとってバレンタインは天国だね」


「彰人さーん! おかわり!」


「はいよ! だけど二つ目からはお代とるからな!

 へへっ、日本人同士ってのはいいものだ!」



 ……こちらはこちらで盛り上がったそうです。

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