説明してね!

 ……僕のステータスは、壊れていた。分かりやすいように、前との比較も踏まえて見てもらおう。



名前 ウタ


種族 人間


年齢 17


職業 村人(仮)


レベル 1→1200


HP 1500→1800000


MP 800→960000


スキル 言語理解・アイテムボックス・鑑定・暗視・剣術(初級→上級)・体術(初級→上級)・初級魔法(熟練度1.2→15)・使役(初級→上級)


ユニークスキル 女神の加護・勇気


称号 転生者・ヘタレ・敵前逃亡




 これは、なんだ?

 完全にフリーズしている僕の目の前でアリアさんが手をヒラヒラさせ、心配そうに覗きこんでくる。



「……大丈夫か?」


「アリアさんも見たら同じ反応しますよ」


「は?」



 僕はステータスを一つ一つ丁寧に読み上げる。



「……は?」



 ほらフリーズした! ね? 僕は正常ですっ!



「ど、どうなってるんでしょう、僕のステータス! 壊れた? 壊れたのか!?」


「これはあれか……? 勇気が、発動したのか?」


「発動してたんですかぁ?!」


「だって、鑑定できたんだろ?!」



 それにしたってレベル1200はおかしすぎるだろ……。



「これはーあれか? ドラゴンを倒したことで、レベルが12まであがって、そのステータスが100倍になってるってこと、なのか?

 というか熟練度15って……熟練度の限界は10のはずなんだが」


「そんなチートあります!?」



 いや、それにしたっておかしい! だって、100分の1にしてもHP18000だ。アリアさんどころか、エヴァンさんをも大きく上回っている。



「それは、『勇気』のおまけだな」


「おまけってなんだよ!」


「そうですよ! おまけって一体!」


「ぷるるっ!」


「……あれ?」



 僕らは顔を見合わせる。『おまけ』とか言ったその人の姿が見当たらないのだ。思わず突っ込んでしまったけど。



「こっちだ、人の子よ」


「……ウタ、私は今、猛烈に嫌な予感がしている。よって振り向きたくない」


「激しく同意します」


「おい」



 あー! これは分かってても振り向かなきゃいけないやつ! 僕はアリアさんの手をつかんだ。



「いいいいい、いきますよ? せーので、いきますよ?」


「わ、分かった。せーのだからな」


「……いきます、」


「「せーのっ!」」



 振り向いたそこには、倒したはずのドラゴンがいた。

 僕がつけたはずの傷はすっかり塞がっていて、もう元気はつらつって感じですね、はい。



「人の子よ、我はダークドラゴン。この地を治めていた龍種の王であり――」



 そんなドラゴンの言葉は、僕の耳には届いていなかった。



「……アリアさん、さ、叫びたい」


「わ、私だって我慢してるんだ……男だろ、耐えろ」


「そこで性別出さないでぇ……」



 そ! そうだ! 今僕のステータスは壊れてるんだから、きっと大丈夫! うん!




名前 ウタ


種族 人間


年齢 17


職業 村人(仮)


レベル 12


HP 18000


MP 9600


スキル 言語理解・アイテムボックス・鑑定・暗視・剣術(初級)・体術(初級)・初級魔法(熟練度1.5)・使役(初級)


ユニークスキル 女神の加護・勇気


称号 転生者・ヘタレ・敵前逃亡




 勇気きれたぁぁぁ! そういえば時間制限あるんだった! え!? ヤバイヤバイ! 絶体絶命ってやつ?! というか3分は短いだろ! 僕ウルトラマンじゃないんだから!



「……おい、聞いているのか?」


「はい! 全く聞いていません!」


「ばっ、正直に答えてどうする!」


「うわぁぁぁぁぁ!」


「…………」



 あからさまにあきれたような表情をするドラゴンに、スラちゃんが「ぷるっ(ごめん、ちょっと待ってあげて)」と目で訴える。……スラちゃんが一番肝が座っていた。



「……はぁ、我はこんなやつに助けられたのか」


「ごめんなさい! ごめんなさい! だから殺さないでぇっ!

 ……え? 助けられた?」


「お主らに手を出すつもりは、今はもうない。だから頼むから、落ち着いて話を聞いてくれんか?」


「は、はい……」


「ぷるる(やれやれ)……」



◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈



「……気を取り直して、だな。我はダークドラゴン。この地を治めていた龍種の王であり、これからお主に遣えるであろう者だ」


「ストップ! いくつか質問させてほしいです!」



 一旦落ち着いてドラゴンの話を聞き始めた僕らだが……開始早々意味が分からないよ! どういうこと、どういうこと?!



「王?!」


「この辺りだけだがな。仲間にはそう呼ばれている」


「で、これからウタに遣えるとか言ったな?」


「そうだな。我はこやつに助けられた。だからそうするまで。なにかおかしいか?」


「助けるもなにも、剣ぶっ刺したんだけど……。あ! あとそう! さっきおまけとか言ってましたけど、おまけとは……?」



 まぁまぁ慌てるな、とドラゴンは僕らを制し、ゆっくりと説明し始めた。



「簡単な方からいこうか。お主……ウタ、といったか? ウタ殿のスキルである『勇気』の基本的な能力は発動したときにステータスをあげることだ。

 しかし、発動していないときにも勇気はちょっとした仕事をする。それが、『ステータス制限無効』だ」


「ステータス制限無効?」


「ウタ……お前、そんな力もあったのか」


「いやいやいや! 分かんない分かんない!」



 アリアさんに聞いたところ、普通の人はレベルが1から2に上がったところでステータスが二倍になるわけじゃない。そこにはある程度の制限がある。よって、ある一定の割合でちょっとずつ増えていくのだ。まぁ、だからこそのアリアさんたちのステータスというわけだ。

 しかし、僕のその能力があれば、制限なく、二倍なら二倍、三倍なら三倍と限りなくステータスが伸びる。そういうことらしい。



「……っていったって、僕がヘタレなのには変わりありませんから、どっちにしろ戦いはへなちょこですけど」


「まぁ、それが『勇気』のおまけというわけだ」


「おまけにしてはでかすぎる気が……」


「だな」



 やはり、なんだかんだで僕は規格外らしい。ヘタレだけど。

 ……はいここ重要! テスト出るよ! リピートアフターミー、『ヘタレだけど!』

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