作戦実行!
「ギルドカードを」
「……はい」
かなり強面なその人に、僕らはギルドカードを渡した。それを確認すると、その人はギルドカードを返し、道を開ける。
「早く行け」
「は、はい!」
そそくさとその場を走り抜け、ホッと一息。
「全く……あぁも検問が多くちゃ、着くまでに日が暮れてしまうな」
「そうですね……無事にたどり着ければいいんですけど」
「あいつらが保証できないって言うんだ。……危険なことには変わりないさ」
今、僕とアリアさんはミネドールを出て、北から回り込む形でクラーミルの王都に入ろうとしていた。ひたすら北に進み続け、ようやく街に出たと思ったら今度は検問地獄だ。
……まぁ、クラーミル内では国王と女王が殺されたことになっているわけだから、当たり前といっては当たり前のことなんだけと。
「にしても……本当にすごいな、個性の塊's」
そう、そうすると疑問になってくるのは、どうして僕らは検問をクリアできたのか、ということだ。その秘密はギルドカードと僕らの見た目にある。
「よし、じゃあ囮になってもらおうか!」
ニッコリと笑って、当たり前のことを言うかのように、ジュノンさんは爆弾発言を投げ込んだ。
……いや、いやいやいや。
「しれっととんでもないこと言わないでくれます!?」
「いやいや、冗談でいってるんじゃないよ?」
「なおさらですよ!」
「はーい、ギルドカード出してねー」
「何するんですか!?」
「死なない風にしてあげるんだよ」
「風……」
「ウタ……」
「抵抗しても無駄な気がします」
「奇遇だな、私もだ」
僕らからギルドカードを受け取ったジュノンさんは、アイテムボックスから、小さな本を取り出す。
「あ、単語帳」
「ムーディーフライ、学歴を修正する」
「ジュノンが言うと雰囲気変わるな」
ジュノンさんが持っていたギルドカードがほんの少し光り、それを確認したジュノンさんは、それを隣にいたおさくさんに見せる。
「どう?」
すると、なぜかおさくさんは吹き出し、笑いながら他のメンバーを手招きする。
「ちょ、ちょ……」
「……どんな内容にしたの、ジュノン」
「いやいや、ふつーだよ? ふつー」
「……あっ」
「ドロウも微妙な反応やめてくれるかな?」
「これは……」
「ウタくん大変だねー」
「え、怖い」
「まぁいいや、はい」
ジュノンさんから手渡されたギルドカードは、内容が見事に変わっていた。
『マルティネス・アリア(18) ランクB』だったものが、『クリアネル・サミラ』に、『ヤナギハラ・ウタ(17) ランクB』だったものが、『ハラライ・オト』になっていた。
なるほどなるほど、修正されていますねー……って、そうじゃない。
名前が……まるっきり……違う……。っていうか、『オト』って、ウタよりも女の子っぽい名前……。
「これは……」
「ちゃちゃっとギルドカードを偽証したから」
「それ大罪だぞ!?」
「名前だけ差し替えただけだからっ」
「ちなみに『オト』ってなんか男っぽくないじゃん? その通り、女の子の名前です」
「…………ドウイウコトデショウカ」
「ウタくんさ、女装してよ」
「なんでですか!?」
「全体的に女子っぽいから?」
「テラー、頼んだ」
「よしきた。いい感じの服くらい出せるぞー」
「待ってくださいよー!」
……色々あって、僕は男の娘にされたらしい。なぜだ。
髪を伸ばされ一つ結びに。目も、自分ではよく分からないが、緑色になっているらしい。
まぁおかげでバレてはいない。アリアさんはフードつきの服を着て、髪を全部その中にいれ、目の色と肌の色をテラーさんに変えてもらっていた。赤い瞳は深い青に、肌は褐色に。全くの別人に見えるが……これはこれで、美人だ。
「なんとかなるもんだな」
「そうですね、あ……サミラさん」
「オト、気を付けろ」
「すみません」
僕らが二人っきりでクラーミルに向かう理由……それは、目立たないから、というのが大きな理由だった。
もちろん、寝たままのポロンくんたちを起こすわけにいかないのはもちろん、個性の塊'sが一緒にいると、安全だけど目立つ。近づくことができなくなってしまう。
その点、二人ならばある程度こそこそ動くのにも適した人数だ。容姿を変えたりだとか、そういう部分でも二人なら言うほど面倒じゃない。
「……で、アールたちが起きたら、城の前にいく計画だったよな」
「そうです。僕らに連絡、来るはずですよ!」
アールと言うのはレイナさんとロイン……二人のことだ。
個性の塊'sの見解……というか、当たり前のことなのだが、クラーミルの国民たちは、自分達の国王、女王が殺されたかる怒り狂っている訳なんだ。
ならば、二人が死んでいないことを証明すればいい。生きている姿を見せればいい。……つまりはそういうことなのだ。
「しかし……ブリスのやつ、一体いつから潜り込んでいたんだろうな」
「結構前から……みたいでしてもんね」
「……例えばの話だ。軽く聞き流してくれ」
そう前置きすると、アリアさんはどこか虚空を眺めながら、ポツリと呟いた。
「……もし、あいつの目的が二カ国の戦争なのだとしたら、もっとら楽な方法があると思うんだ」
「うーん、確かに」
この件……まだもう少し、裏がありそうです。
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