嘘やん
……ひんやりとした土の感触が心地いい。あぁ、このままずっと寝ていたいな。現実なんて見たくない。うん、僕ほら、死んだし? また死んだし? ちょっとさぁ、死ぬまでのスパンが短すぎるっていうかさぁ、ヘタレには無理ゲーっていうかさ?
…………。
「生きてるぅ!?」
そう思うのに少し時間がかかった。だって、死んだと思ったし。血っぽいのだって見たよ? やっぱ死んだよね? でも生きてるじゃん。
「やっと起きたか」
「なぁぁ!?」
思わず声に後ずさる。後ずさってから、ここに来て初めて人に会ったんだと安心する。いや安心するところ違うんだけどね。
「とりあえず落ち着いてくれ。私はお前をどうこうしようってんじゃないさ」
「あ……あの、えっと?」
少し落ち着いてからその女性の顔を見る。綺麗な金髪を蝶の髪飾りで纏め、ポニーテールにしているその人は、『美人』というそれだった。服装はというと、白と銀を基調にした鎧のような服を着ている。手にはなにやら剣のようなものを携えていた。(一番最初、胸に目が行ったことは内緒である。しょうがないよ、男の子だもん)
「ったく、キマイラに襲われてるの助けたら気絶したまま起きないもんだから心配したぞ。大丈夫か?」
「あ……えっと、大丈夫です。助けていただいてありがとうございました」
「礼なんていい。それより、早くここから離れた方がいいぞ? この辺りはよく魔物が出る。ほら、これ、お前の金だろう?」
その女性は僕に麻袋を手渡した。そして、早く家に戻るか街に行くかしろと言われるが……。
「……あのう」
「なんだ?」
「迷惑かけついでに聞きたいんですけど、街って、どこにあります?」
「はぁ?」
わっ、なんかすごいあれな反応された! お前そんなことも知らないのか的な反応された! め、めっちゃ睨んでる! 怖い怖い!
「街がどこかって……お前、そこから来たんじゃないのか?」
「えええええっと、もも森の中に、い、家があって、でもその、や、焼けて……」
「焼けた?」
「ド……ドラゴンが……」
僕はそれから時間をかけ、今までのことを説明した(転生のことは伏せたけど。いやだって、なんか、めんどくさそう)。その人は腕を組ながら僕の話を聞き、それから、こうきりだした。
「そうか……。ならお前、私と一緒に来るか?」
「……へ?」
「なに驚いてる。かなり大きい家を二人で使っていてな。部屋には空きがある。お前がよければ、来るか? 大したものはないが寝床と食事くらいならだそう」
「え……あの……いいん、ですか?」
「ダメな理由は特にない、と、思う」
いやほら、色々想像しちゃうんですけど。年頃の男の子ですし。
「というか逆に、私が今ここからいなくなって、お前は街に辿り着けるのか? 道が分かったって魔物に会うぞ?」
「無理です」
即答する。だって無理だもの。倒せないから無理です。
「なら私と来い。とりあえず今日は。そのあとのことはあとで考えればいい。異論はないな?」
「は、はい……」
「よし……」
そしてその女性は、すっと右手を僕の前に差し出した。
「私はアリア。アリアだ」
「あっ、柳原羽汰です」
「ウタか。珍しい名前だな。まあいい。とりあえず、よろしくな」
「は、はい! よろしくお願いします!」
アリアさんは優しく微笑むと、少し歩いてから振り向いて、僕に手招きした。
「こっちだ」
「あっはい」
少し小走りにアリアさんについていく。歩きながら、アリアさんは僕に色々訊ねてきた。
「そういえば、ウタはどうして森の中になんて住んでいたんだ? 普通に街で暮らせばいいものを」
「えっ、それは、えっと……」
神様(?)に無理矢理転生させられたからです。
「それに、こんな丸腰の癖に、どうして金ばかり持っている? 普通は商人でもある程度の防具は持っているはすだが?」
神様(?)に無理矢理転生させられたからです。
「あぁ、そうだ。ウタのジョブはなんだ? それから、レベルも」
「……ジョブ? レベル?」
なんですかそのRPGみたいなの。知らないですそんなの。
「まさか……知らない、何て言わないよな?」
「……その…………」
「知らない、のか? だったら、ステータスをみせてみろ」
「すてーたす?」
「…………」
あぁ、アリアさん、絶句してるよ。でもごめんなさい、分からないんです。
「お前……何者だ?」
これは言わなきゃいけないパターンですね。はぁ……こんなに早く転生者であることを話さなきゃいけないなんて。これは波乱の予感だよ。とほほ……。
って、うわぁぁぁ! 言うから! 言うから剣をおろしてぇ!
――数分後。
「なんだ、お前転生者だったのか。それならそうと早く言ってくれればいいものを」
「え? あの……」
「この世界ではあまり転生は珍しくなくてな。一ヶ月に2、3人、転生してきてるぞ」
…………。
「うっそぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
「本当だ。でもそうか。それなら話が早い。一度、ステータス画面を開いて、それを読み上げてくれ。あぁ、ステータスって言うだけでいい」
はぁ、どうやら僕も、ちょっとばかし心のどこかで『僕は選ばれた人間なんだ!』……なーんて浮かれていた節があったんだなぁ。少しショックを受けつつも、ステータス画面を言われた通り開く。
「ステータス」
目の前に、透明な液晶のようなものが現れた。
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