パーティー名
「うーん……」
「どうしたものかな……」
「ぜんっぜん分かんないなぁ……」
「どうしましょうか……」
僕らは絶賛、パーティー名考え中なのだ! サイカくんの家でおさくさんに言われてハッと気がついた。
そうだ、僕たちパーティー名ないじゃん!
おさくさん、アイリーンさん、テラーさん、ドロウさん、あと、会ったことないけどジュノンさんの五人は『個性の塊's』というパーティー名。
……絶妙にダサい。しかし、こだわりも強いようで、由来やらなんやらを聞いたら、
『いやー、LINEのグループ名だったんだけどね? いいと思うんだよねー。私が作ったグルなんだけどさ!
この、アポストロフィがね、大切なのよ。この、ちょんってやつが! ね!?』
……個性の塊'sの『'』これ。この記号。これに妙にこだわっているようである。……ってか、このsってなんのsなんだろう。複数形? いや、複数だったらアポストロフィいらないか……。
あ、個性の塊のグループってことで、『個性の塊's』ってことか?
サイカくんたちのパーティーは『雪月花』どういう由来かをその流れで聞いてみたところ、
『僕らの特徴、なんとなく表してみたんです。ミシャは雪みたいに、なんか落ち着いてて大人っぽい感じで、ラーラは明るいから花のイメージで』
『不思議と、サイカは「太陽」って感じじゃないんだよなぁ』
『しない。「月」っていうイメージの方が、しっくりきた。だから「雪月花」』
どんなパーティーでも、名前は大切にする傾向があるみたいだ。一通り話をしたあと、サイカくんたち三人はメロウちゃんを連れて、ギルドに今回のことの詳細を伝えに行くっていってた。だから、それと同時に僕らは宿に戻り、考え込んでいたわけだ。
「……いいの思い付きましたか?」
「ダメだ。全くもってさっぱりだ」
「ポロンくんは?」
「アリア姉率いるヘタレ軍団……は、ちょっとな」
「さすがになぁ……。フローラは?」
「スラちゃん愛好団体……」
「ある意味正しい」
「ぷるぷるっ!(ぼくの名前!) ぷるるるっ!(超早く決めたくせに!)」
「……嫉妬してる?」
「…………ぷにゅ」
どこかむすっとした感じで、スラちゃんは横を向く。……か、かわいい。
「もうスラちゃん愛好団体でいい気がしてきた」
「私もだ」
「私もです」
「ダメだからな!?」
「ぷるっ?!」
「目、キラキラさせんな! ダメだからなーーーっ!?」
はぁ、にしても、このまんまじゃパーティー名決まらないよぉ……。僕らの特徴……とか、入れたらいいのかな?
「僕らの特徴って……?」
「やっぱ、ウタ兄の『勇気』? かなぁ」
「でもそれは、僕の特徴だしなぁ」
そうしてまた悩んでいると、不意に、フローラがぽつりと呟く。
「……そもそも、私たちって、パーティー組んでから、自分達だけで何かを成し遂げたことって、ありましたっけ?」
「あっ……」
そういえば……ないなぁ。どんなときでも、おさくさんからのヒントや、周りからの助けがあった。
キルナンスの時は、アイリーンさんの千里眼に助けられて、チョコレートでカーターのことも助けてもらって。
メヌマニエの時は、テラーさんが奇襲を仕掛けてきた信者の人たちをみんな倒してくれて、そのあと、魔物もおさくさんと二人で倒してくれて。
ベリズの時は、途中で襲ってきた敵はドロウさんが助けてくれたし、なによりサラさんが、僕らを、アリアさんを守るために攻撃から庇い、助けてくれて。
……ミーレスの時だって、僕は、一度は殺されかけて、呪いもかけられて、一歩も歩けないくらいの状態まで追い込まれた。
助けにいかなきゃいけないのに、体が全く言うことを効かなくなって、悔しくて、動きたくて、でも、動けなくて……。
瀕死だった僕のことも、助けてくれた。今回だって、やっぱり……。
本当に……たくさんたくさん、助けられてきた。
助けられすぎなくらいに。
「僕らが……僕らだけでやれたことって、なんなんでしょうか」
「それは…………」
アリアさんは言おうとして、言葉が出てこなかったようだった。
「そもそもどうして、みんな僕らを助けてくれるんでしょうか……?」
「そういえば……何でなんだろうな」
サラさんやエドさんたちなんかはまだ分かるとして、個性の塊'sは、言ってしまえば赤の他人である。僕と出身が同じってことくらいしか共通点がない。
「助けてる理由が知りたい?」
「は……うわぁぁぁぁぁぁぁっ?!」
突然窓からおさくさんがひょっこりはん! び、ビックリしたー……。おさくさんはそのまま部屋に入ってくると――靴は脱いだ――その場にあぐらをかいて座り、優しく微笑みながら話す。
「ま、面白そうっていうのが一番だよね」
「かなり初めの方からいましたよね、おさくさん。それに、なんか他の皆さんも僕らのことを知ってたみたいに……」
「知ってたよ? だって『勇気』なんて珍しいスキル、気になるじゃん」
「やっぱり、『勇気』に興味を持ったから、私たちを?」
すると、おさくさんは首を横に振る。
「だけど、それだけじゃない」
そして、何かを思い出すように上を見上げ、僕らについてのことを話始めた。
「……面白そうって言ったのは、ジュノンだったんだよね」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます