お願いがあるのだ
さーて、テラーさんのステータス、どれから鑑定していこうかなぁ。短期間ゴリラ、三時のおやつ、プランツファクトリー、ポイズネーション、生活魔法、飛行ってあるわけだけど、おさらいがてら『三時のおやつ』と『プランツファクトリー』を鑑定する。
三時のおやつ……一時的にパーティー全員のステータスを10倍にする。発動時間は30分間。パーティーで行動していない場合、対象(1~5まで)を選択可。
プランツファクトリー……対象(無限に選択可)に草木が絡み付き、完全に動きを封じる。発動時間は解除しない限り無限。焼却するには熟練度9以上の炎魔法。
うん、もうすごいよね。でも、これはまぁ知ってたからさ。ましっていうかさ? ……いや十分おかしなことになってるんだけど。よーし、次は『短期間ゴリラ』だ!
短期間ゴリラ……パーティー全員を高速、自身を神速にさせた後、対象(1~3まで)に大ダメージ。高速、神速の発動時間は30分。連続しての使用可。また、高速、神速状態の時、HP、MPが常に大回復する。
神速ってなんですか。あのめちゃ速い動きをしてたのはこれの影響なのか……。
ていうか、神速のときはHPとMP、常に大回復とか……。そりゃあ減らないよなぁ、MP。
うーん、強すぎる……。ところで。だが
「ポイズネーションって」
「ネーミングについての質問は拒否するよ?」
「いや、あの……ポイズネーション、ですよね?」
「そうだね」
「ポイズネーション? ポイズンか?」
アリアさんが首をかしげると、同じようにポロンくんが疑問を口にする。
「ポイズンって、闇魔法のあれか? でも、ポイズネーションなんて聞いたことないけどなぁ」
「……うん、まぁ、でしょうね」
気になったので、とにかくポイズネーションを鑑定してみる。
ポイズネーション……対象(無限に選択可)を猛毒状態にする。発動時間は解除しない限り無限。解除には熟練度9以上の回復魔法。
……純粋に思ったことを言わせてもらおう。
「これ使われた人、めっちゃ苦しくないですか!?」
「えーそう?」
「だって、ほぼほぼ解除できない毒ってめっちゃ苦しくないですか!?」
「……ジュノンの侵略すとアイリーンのジャッジメントよりはましかと」
う、うーん。確かにそうかもしれない(?) 侵略すの方は知らないけど。
とにかく! 残りの二つも鑑定だ!
飛行……空中を自由に移動できる。発動時間は10分。
生活魔法……稀に手に入れられる属性魔法。ユニークスキルに分類される。平凡な生活で行うことであれば、この魔法で代用可。
はーい、ありがとうございましたぁ! と、そこまでの情報をポロンくんとアリアさんとで共有する。
「……個性の塊'sはみんなこんななのか」
「あのね、私なんかまだ人間だよ? アイリーンとジュノンはマジでヤバイから。特にジュノンね。会っても絶対怒らせないでね。
アイリーンはチョコレートあげたらどうにでもなるけど、ジュノンは死ぬまで終わらないから」
「なにその人! 怖い! めっちゃ怖い!」
「ま、それはともかくとして……あ、ウタくん、ドラくん帰してあげて?」
「あ、はい。……ありがとうね、ドラくん」
すると、ドラくんは少し照れくさそうに笑った。
「お主は我の主君だろう。当然のことをしたまでだ。テラー殿、感謝する」
「いえいえ。ドラゴンお粗末にしたらどこかの誰かに殺されそうだし?」
ドラくんはそんなテラーさんに改めて一礼し、空に高く舞い上がると、王都の方へ向かって飛んでいった。……なんか、ドラくんも人間味出てきたなぁ。
テラーさんは馬車の中を覗き込み、震えるばかりのコルトンさんに声をかける。
「終わりましたよー。もう大丈夫ですよー」
「……え? た、倒せたんですか!?」
コルトンさんが驚いたように顔を覗かせる。そして、目をぱちくりとさせて、それから馬車から飛び降りてきた。
「す……すごい! あれだけの数のキマイラを……! あれだけいたらもう無理かと思ってました。ありがとうございます!」
「いや……ほとんど倒したのテラーだよな」
「おいらたち、なんかしたか?」
「なにもしてないね。したとしたらドラくんだね」
そんな僕らをにこにことしながら見ているテラーさんは、不意にこんなことを言ってきた。
「まぁまぁ。とりあえずみんな無事に助かりましたっと。
……ところで、話したいことがあるんだ。馬車出してもらって、中で話してもいいかな?」
特に断る理由はない。僕らはうなずき、馬車の中に乗り込んだ。
全員が乗り込み、馬車が動き出すと、テラーさんはこんな風に切り出した。
「助けてあげたからっていうのもなんだけど……一つ、お願いがあるのだ」
「お願い? って、なんだ?」
ポロンくんが聞く。お願いといっても色々ある。助けてもらったし、僕らにできることなら協力したいけど……。
「喫茶店をやってるんだけどね、隣に宿があるんだ。そこに泊まってほしいってこと」
「……え?」
「一泊のお金も結構安いし、ご飯も美味しい。そこに泊まってほしいんだよね」
言ってはなんだが、テラーさんにとっての利点が見当たらない。全てが僕らにとっての利点ではないか?
「……なぁ、どうしてそこに泊まってほしいのか、聞いてもいいか?」
アリアさんがそう訊ねると、テラーさんは素直に教えてくれた。
「守ってほしい子がいましてね」
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