姿がない

 僕らは、ひとまずダンジョンを出ることにした。たった二日ほどいただけのダンジョンではあったが、やっぱり日の光を浴びるのは心地いい。



「……ほんと、ありがとうな!」



 リードくんがそう照れながら微笑む。ソフィアさんたちのパーティーに正式に入ることになったリードくんとは、ここでお別れだ。



「俺……最初、バカだったよな。みんながみんな……同じわけないのにさ、あんなずけずけ聞いたりしつこくしたり」


「もういいよ。ね? ポロンも許してるでしょ?」


「最初はくそ野郎だと思ったけどな! でも、お前ほんとはスッゴクいいやつだった! ソフィアとヒルと、一緒に頑張れよ!」


「おう!」


「…………あいつのこと、頼むな?」



 アリアさんが囁くと、優しい笑みが返ってきた。



「……当たり前ですよ。それじゃあ、僕らはこれで」


「ありがとうございました」


「じゃあなー!」


「まーたねー!」



 元気にかけていくリードくんと、後ろから追いかける二人。……それを見送り、僕らは顔を見合わせた。



「……さて、その辺のカフェにでも入るか」



◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈



 カフェに入り、とりあえず一人一つ飲み物を頼んだ僕らは、最初に、全員のステータスを見てみることにした。

 結果は、これ。



名前 ウタ


種族 人間


年齢 18


職業 冒険者


レベル 35


HP 56000


MP 30000


スキル 言語理解・アイテムボックス・鑑定・暗視・剣術(上級)・体術(中級)・初級魔法(熟練度7)・光魔法(熟練度6)・炎魔法(熟練度5)・氷魔法(熟練度4)・水魔法(熟練度3)・風魔法(熟練度3)・土魔法(熟練度3)・回復魔法(熟練度4)・使役(上級)・ドラゴン召喚


ユニークスキル 女神の加護・勇気・陰陽進退・化学・破滅


称号 転生者・ヘタレ・敵前逃亡・A級冒険者・Unfinished



名前 アリア


種族 人間


年齢 19


職業 皇女


レベル 56


HP 9000


MP 7000


スキル アイテムボックス・剣術(上級)・体術(上級)・初級魔法(熟練度6)・光魔法(熟練7)・水魔法(熟練度5)・氷魔法(熟練度5)・雷魔法(熟練度6)・回復魔法(熟練度5)


ユニークスキル 王室の加護・魔力向上・ジャッジメント・No Name


称号 次期女王・不屈の精神・甘い物好き・A級冒険者・Unfinished



名前 ポロン


種族 人間


年齢 11


職業 盗賊


レベル 34


HP 5600


MP 3700


スキル アイテムボックス・暗視・剣術(上級)・体術(中の上級)・初級魔法(熟練度6)・土魔法(熟練度5)・風魔法(熟練度6)


ユニークスキル 窃盗・短期間ゴリラ・信義


称号 元キルナンス所属・軽犯罪者・癖っ毛・A級冒険者・Unfinished



名前 フローラ


種族 人間


年齢 14


職業 村人


レベル 34


HP 5000


MP 4000


スキル アイテムボックス・暗視・剣術(上級)・体術(中級の上)・初級魔法(熟練度6)・土魔法(熟練度5)・光魔法(熟練度6)・闇魔法(熟練度2)


ユニークスキル 表裏一体・転・レインボー・春の息吹


称号 宿屋の看板娘・さみしがりや・自然を愛する者・A級冒険者・Unfinished



名前 ダークドラゴン


種族 龍種


年齢 127


職業 ――


レベル 100


HP 200000


MP 150000


スキル 剣術(上級)・体術(超上級)・初級魔法(熟練度10)・炎魔法(熟練度9)・雷魔法(熟練度8.5)・闇魔法(熟練度9)


ユニークスキル 龍王の加護・道標


称号 黒き力・災害級



名前 スライム


種族 スライム族


年齢 ???


職業 ――


レベル 35(使役者と共通)


HP 6500


MP 4000


スキル アイテムボックス・透視・剣術(中級)・体術(中級)・初級魔法(熟練度5)・水魔法(熟練度5)・氷魔法(熟練4)・光魔法(熟練度4)


ユニークスキル 劇薬・輝きの意思


称号 心はいつでもぷるぷる・ウタの使役魔物・癒し



 ……これだけでも意味不明だ。ステータスが上がっているのはいい。けど、それ以上にこのスキルだ。どんなスキルなのか全くわからない。……というのも、だ。

 鑑定を使って、ポロンくんの『信義』を調べようとしたところ、僕の目の前に現れたのは『Error』の五文字。



「……あるのにないスキル……ってことか」


「…………」


「……面白いじゃないか?」


「……そうですかね」


「そうだよウタ兄! 下手に心配したって仕方ねぇよ。もっと前向きに生きようぜ!」


「……そうだね」


「それにさウタ? 今、こんなことになってるんだから、そのことについても考えなきゃいけないよ?」



 スラちゃんの声に、またうなずく。『こんなこと』というのは、もしかしたら僕らにとって良いことなのかもしれない。が……それ以上に異常で、謎だった。



「……まずは、探さないといけないかもしれんな」



 ダンジョンから出た瞬間、タイミングよくひらひらと降ってくる、小さな紙切れがあった。なにかと思って広げれば、そこには『漆黒にて』と書かれていた。

 嫌な予感がして探してみれば……異常なことになっていた。


 あの『個性の塊's』が、消えたのだ。

 そして……この町の、この地区の、この国の、この世界の全ての声……全ての気配の中に、彼女らはいなかっだ。

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