姉さん

「やっと会えた! 探してたんだ!」


「そうなのか? いやー、アリアが来てるんなら城にいてもよかったか。あまりにつまらなくてなぁ」



 嬉しそうに笑いながらサラさんと話すアリアさん。僕がポカンとして見ていると、フローラが僕の袖を引いた。



「あの……アリアさんって、小人族のお姫様の妹さんなんですか?」


「いや、さすがにそれは違うと思うよフローラ」


「うん、おいらも違うも思うよ」


「でも、姉さんって」


「その思考回路でいくと、おいらにも該当するからな!?」



 すると、二人で話していたアリアさんが思いだしたようにこちらを見る。



「あぁそうだ。忘れてた。

 姉さん、知ってると思うけど、私は今冒険者として旅をしていてな。こいつら、私のパーティーメンバーなんだ」


「へー、そっか! アリアの仲間ってことだな。へへっ、あたしはサラ・ミネドール。この国の時期女王さ。よろしくな!」



 サラさんはそういいながら右手を差し出す。とっさにその手を握り返しながら僕も自己紹介する。



「あっ、僕、柳原羽汰です。よろしくお願いします」


「おう! そっちのちびは?」


「お、おいらはちびじゃないやい! おいらはポル・ポロン! れっきとした仲間だい!」


「そうかそうか。悪かったなー、ちび!」


「またちびって言った!」


「そういえばポルボロンってお菓子あったなぁ」



 あっ、確かに。聞いたことがある。



「なるほど、ポロンくんはお菓子だったんだね」


「違う!」



 突っ込みまくるポロンくんを抑えつつ、フローラが言う。



「私はフローラです。よろしくお願いします、サラさん」


「オッケーオッケー……ウタ、ポロン、フローラな。よし! 覚えた!」


「えっと……ところでですね、」



 僕はさっきから疑問に思ってることを聞いてみることにした。見てたってよく分からないなら聞くしかないだろう。



「どうした、ウタ」


「その……アリアさんとサラさんって、どんな関係なんですか? 本当の姉妹……では、ないですよね?」


「まさか」



 笑いながらも、サラさんはちゃんと教えてくれた。



「マルティネスとミネドールは古い付き合いだからな。私はアリアが小さい頃から知ってるんだ」


「だから、ほら……私にとって、姉さんみたいな人なんだ。だから、サラ姉さんってな。

 魔法とか剣術とか、全部姉さんに教わったんだよ」


「へぇー!」


「ステータスちゃんと見たことないけど、強いぞ。見せてくれないんだ、姉さん」


「えー、気になります。……見ちゃダメですか?」



 それとなーく、サラさんにお願いしてみる。



「ダーメだっ!」


「えー、何でだよー! おいら気になる!」


「いいかちび。女には秘密の一つや二つあった方がいいのさ。私は基本的に、誰にもステータスを見せない主義なんだ。父さんや母さんにもな」


「でも……私もすごく気になります。今のところ、お名前しか分かりませんし」



 すると、少し考えたあと、サラさんはこんなことを言ってきた。



「……私は何歳に見える?」


「あっ」


「アリアは黙ってろよ? それ当てたらステータス、見せてやるよ」


「……当たらないだろ、それ」


「えっ、えーっと……」



 僕のパッと見の印象としては、アリアさんよりは年上と言うことを考慮して、20ちょっとくらいなのかなぁって感じだ。



「にじゅう……に、くらいですか?」


「ほうほう。ちびは?」


「おいらはちびじゃない! 21!」


「フローラは?」


「えーっと……25でしょうか?」


「へぇー……なぁ、アリアー! 私はそんなに若く見えるんだな!」


「なんならもっと若く見えるぞ、姉さん」



 あれ? じゃあもっと上だったのか。この二人の反応から察するに、30近くいっていたのだろうか。



「当たらなくて残念だったなー! いいかよく聞けよ? 私の年齢は……」


「年齢は……?」


「94だ」


「9…………え?」



 へぇー! 94歳ですか! いやー、すごく若く見えます! いやいや、本当に若いですね! ねー、さっきも風船、華麗にゲットしてましたしねー……。

 いや、おかしくない? なに? 不老不死になる薬でも飲んだの? だって、94だよ94。よぼよぼのおばあちゃんになってておかしくないじゃん!


 戸惑いを隠せない僕らに、アリアさんが補足で説明してくれた。



「小人族っていうのは、ある意味で最強の種族と言われているんだ。寿命に関しては他のどの種族よりも長くて、平均寿命は800歳だ」


「800!?」



 そ、それはもう……。だって、日本でいったら室町くらいからずっと生きてるってことでしょ? すごくない!?



「そ、だから私たちは約800年分の本当の歴史を見てきたことになる。本当を知ってるのは私たちだけなんだ。

 だから、他の国は幸運にもミネドールに優しくしてくれる。私たちはそれだけの知恵もあるしな」


「特に、昔、マルティネスはミネドールと手を組まざるをえなかった。マルティネス帝国に多くいるのは一番寿命が短い種族、人間。

 国を守るためには、ミネドールから知恵をもらうのが一番だった」



 なるほど……そんな因果関係もあるんだなぁ……ん? あれ?



「あの、アリアさん」


「なんだ?」


「サラさんって、エヴァンさんよりも年上ですよね? ってことは……」


「エヴァンか? エヴァンに『威圧』の使い方を教えたのは私だぞ! アリアの3代前のやつらから知ってる!」



 エヴァンにたいしてもこの態度……そして威圧を教えたって……。

 この人の強さ、わからないけど絶対強い。塊'sの次くらいに強いかもしれない。


 ……ちなみに、個性の塊'sより強かったら僕は失神します。

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