第3話 経験値とドロップ

 

 IDDSが公開している【迷宮指標】は、現在ダンジョンについて判明している仕組みをまとめて、世界統一基準としたものだ。新事実が判明するたびに改訂されてきたが、現在改訂は年一回と決まっている。

 ここ、試験にでるからな。


【迷宮指標】の第一章に能力向上について記載されている。

 身体能力上昇の原因を、モンスターを倒すことで得られる〝なにか〟が原因だと定義つけた。

 その〝なにか〟を【経験値】と称し、一定の【経験値】を得ると身体能力が上昇する。この身体能力上昇を【レベルアップ】と称した。


 この【迷宮指標】を作り上げた研究者の中にゲーマーがいたんだろうな。

 RPGなどで使われていたシステムを参考に【経験値】を得て【レベルアップ】することで【ステータス値が上昇する】という概念がピッタリ符合したのだ。 

 実際ゲームのようにステータスが表示されたり、レベル表示があったりはしないから、力を確認する方法は体力テストをするしかないのだけど。


 とにかく、人間は【レベルアップ】することができるようになった。

 

 この【迷宮指標】は最初に発表されてから2ヶ月後に最初の改定がされた。

 初期は新事実が明らかになる度に改訂されている。ここ数年は年に一度と決められたことで、覚え直すことが少なくなって助かる。

 最初の改定は年齢についてだった。


 多くの人間がダンジョンに潜ることで解ったこと。それは【レベルアップ】に必要な【経験値】の割合が、年齢によって異なることだった。

 若い方が【経験値】を得られやすいのか、【能力値】が上がりやすいのかは判明していないが、若い方が能力の上昇が早いのである。

 20代と50代では倍ほどの差が現れた。

 特に著明に上昇を見せたのは第二次性徴期後半、いわゆる思春期に当たる若者だ。

 思春期というものには個人差があるが、著明に上昇を見せたのが、おおよそ15から20歳の青少年だった。


 今はない某北の国ではさらに低年齢者のダンジョンアタックを行ない、多くの犠牲を出して解ったのは10歳以下はステータスが上昇しないと言うことだった。

 のちに亡命したものからこの情報は世界中に知れ渡った。

 10歳以下をダンジョンに無理やり突っ込ませると言う非人道的行為は、世界中から非難を浴びたが、今はもう無くなってしまった国だ。

 北の某国はモンスターを捕らえ他国を侵略する兵器にしようとして失敗、核を暴発させて壊滅状態に陥った。現在の世界地図には北の某国の名前は無く、半島は南を巻き込み消失、残った南は大陸と断絶されて小さな島になっている。


 おかげで低年齢では【レベルアップ】は起こらないと知れたわけだが。

 現在IDDSでは十五歳以下のダンジョンアタックを禁止しており、国も法律に組み込んで破れば本人だけでなく保護者や周辺の大人まで罰則対象になる。



 

 ダンジョンでは【レベルアップ】以外にも、特殊な力を手に入れることができる。

 IDDSによりそれは【スキル】という総称で統一された。


「ダンジョンモンスターは摩訶不思議な存在だ。ダンジョン自体摩訶不思議な存在だがな」と親父達は口を揃えていうけど、俺にとっては「ダンジョンとはそういうもの」という認識で摩訶不思議とは感じない。

 ジェネレーションギャップというやつかな。


 ダンジョンモンスターは生物の営みによって生まれない。突然湧き出すのだ。

 モンスターを倒すと、その体は黒い粒子となって消える。あとには【ドロップ】と呼ばれるものだけが残り、死体はない。

 だがモンスターがダンジョンから出ると、その理りから外れ肉体をもつ。これを【受肉】と呼んでいる。あ、これも試験に出るぜ。


 【ドロップ】の多くは【魔石】と呼ばれる【魔素】と名付けられたエネルギーを内包した石や、【素材】と呼ばれるそのモンスターの身体の一部だ。

 だが稀に【アイテム】を落とすことがある。

 この【アイテム】には武器や防具、薬など様々な物があるのだが、その中に【スクロール】と呼ばれる巻物がある。

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