第8話 迷高専

 

 迷高専の校舎はダンジョンの中にあるが、寮は外にある。


 DDSは【制覇】したフィールド型ダンジョン内に各種施設を作り運営している。

 それは「スキルがダンジョン内でしか発動しないなら、ダンジョン内で事足りるようにすればいい」と言った初代会長の言葉で始まった、迷宮内施設化プロジェクトによるものだ。


 スキルごとに必要となる施設を、【制覇】済ダンジョンに建設する────簡単なようで簡単ではない。

 まず施設が建設可能な広さがあるかどうかで、候補ダンジョンが限られる。

 【制覇】した後もモンスターのリポップはあるので、それも懸念の一つだったが、外から持ち込んだ無機物の上にはリポップしないことが判明して、迷宮内施設化プロジェクトは飛躍的に進んだのだった。


 JDDSができて数年後、日本では【迷宮探索者】を育てるための日本探索者協会立迷宮高等専門学校が設立された。

 ここを無事卒業できれば冒険者ランクDとなり、一流どころの探索会社やクランに就職できるのだ。

 初期の学校はダンジョン外にあったが、現在日本に五校ある迷高専は全て、ダンジョン内にある。

 俺の通う日本探索者協会立第三迷宮高等専門学校は、そこそこ田舎だがそこそこ交通のべんのよい場所にあったフィールド型と洞窟型の複合ダンジョンの中に作られた施設の一つだ。


 迷宮高等専門学校は普通高校とは違うが、ちゃんと高校卒業資格ももらえる。

 三つの科に分かれており、コースによって就学年数が異なるのだが、どの科も三年を終えれば高校卒業資格が与えられる。


 まずは探索者育成科だろう。育成科は5年課程でちょっと長い。当然ダイバーを目指しているものはここ。

 一年度は共通課程といわれる一般科目のほか迷宮基礎知識。

 二年度はそれに加えてダンジョン実習がある。

 日本ではダンジョンに入れるのは十六歳からと決められている。迷高専では全員十六歳になっている二年度の初めに二級免許ライトパスを貰える。

 十六歳で取得できる〝ライトパス〟はいわば仮免許で、ダンジョンに入るにはJDDSの指導員資格を持つものが同伴しなければならない。

 そして入れるダンジョンも制覇済みの二級許可ダンジョンのみだ。


 三年度終了で高校卒業資格と探索者免許がもらえる。この時の探索者ランクはGになる。

 四年度以降はさらに探索者としての実力をつけていくため実戦がメインになり、終了時探索者ランクはE。

 五年度では学外の一般ダンジョンへも挑戦し、そして無事卒業できれば探索者ランクはDとなる。


 育成科は三年度を終了すれば、いつでも卒業できる。3年度終了で一級免許が取得でき、一般探索者として始めるランクHより一ランク上で始められることから、ここで卒業する者も少なくない。

 四年度以降でさらに高度な探索者としての基盤を作るとか言っているが、一部ではDDSの実験場とかもいわれている。


 次に普通科。3年課程だ。

 普通科と言いつつ、普通じゃないけど。

 2年度には頻度は少ないが、普通科にもダンジョン実習がある。DDSに勤める以上、免許と探索経験は必須なのだ。

 ここを卒業するとGランクとなり、DDSの事務職としての就職が有利になる。


 最後はサポート科。四年から六年と学部によって違う。

 二年度までは探索科と同じだが、三年度からはそれぞれの職業別カリキュラムに分かれる。職業別カリキュラムによって年数も違ってくる。


 一番偏差値の高いのは医学部。医学の知識とそれに必要なスキルを手に入れ、将来はDDSの病院に勤めることになる……のはごくわずかだが。 

 ここが六年と一番長いが後半の三年は提携大学の医学部に通うことになる。


 二番目は薬学部。ダンジョンアイテムを使った薬を作る薬剤師になれる。五年課程だ。ここも二年は提携大学の薬学部に通う。


 次は技術学部。職人育成コースとも呼ばれており、鍛治師の他各種細工師や加工師など、探索者専用の探索に必要な様々な装備を造る職人になる。四年課程終了前には企業からの勧誘がすごい。


 最後は魔素学部。魔素や魔石などを研究する研究職を目指すものが行く。通常四年なのだが、ここはあえて留年して研究を続ける変わったやつ、マッドサイエンティスト予備軍と呼ばれる奴がいたりする。


 迷高専では条件を満たせば二年度終了後、転科することもできるのだ。

 希望で転科する奴と、俺のように進められるやつ──成績が転科を選ばざるを得ない奴とかな。

 

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