第7話 免許証と冒険者ランク

 



 授業において俺はレベルアップなぞ望めず、実技の進級試験ではギリギリの最下位通過となる。

 座学の成績で学年十位内をとったことで進級はできた。必死に座学を猛勉強した三学期だったが、なんとか進級することはできた。


 三年度のクラス替えは、二年度最後の進級試験の結果、成績で分けられる。

 一クラス二十人でA組からH組までの八クラスで合計160人。二年度が一クラス40人で五クラス200人だったことを思えば、俺の下に進級できなかった四十人がいるわけだが、慰めにもならない。


 学年末面談でGクラス以下になったものは今後の進路について、選択肢が提示される。

 このまま続けるか、学校を中退するか、他の科に転科するかだ。

 俺の場合、筆記テストの成績がよかったことで、どの科でも転科できると言われた。


 とりあえず、春休みいっぱい考える時間をもらったが、「新学期が始まってからでも、四月中なら転科可能だ」と言われた。

 なんか「転科しろ」と言われてるんだろうな。


 高倍率の試験をクリアして入った迷高専を、こんなことで辞めるのも口惜しい気がする一方、早々に18歳になるんだから、こんな学校はやめて一般探索者になってもいいんじゃないかとも考えた。


 18歳になれば誰でも一級免許を申請できる。

 原付免許と同じで、学科試験に通れば取得できるのだ。免許証はあくまでもダンジョンに入るための通行許可証でしかない。一級免許を取得した時点で探索者ランクは最低のHランクだ。


 DDSには探索者ランクが設定されており、それによって大まかな実力がわかるようになっている。

 探索者ランクは10段階で、下からH、G、F、E、D、C、B、A、S、SSだ。

 S以上なんて世界中で数える程しかいない。


 IDDSではFランクまでは規定の納税額を越えれば、Eランクへはランクアップ試験を受け、合格すれば上がることができる。

 探索者はドロップ品の売却時に金額の10%をダンジョン税として支払わなければならない。

 FからEランクに上がる時は筆記試験だけなので、実技試で合格しないと上がれないDランクからが世間では一端の探索者として見られる。


 だから。金にものを言わせ、姫プや接待プレイと呼ばれる、「強い探索者」に協力させてダンジョンに潜ったり、ドロップ品を闇で買い取ったりして納税金額を稼ぐ奴もいる。


 そんなことをして楽しいのかと思うが、短期間でランクアップできたことを自慢し、ナンパのネタにする奴もいるんだとか。

 

 一般はHランクからだが、迷高専の育成科5年課程を卒業すると自動的にDランク、サポート科でもEかFランクだ。低ランクをスキップできるることも、迷高専が人気の理由だ。

 Eランクからは税額も8%になるしな。


 迷高専では全員16歳になっている二年度最初に二級免許を、18歳になっている4年度最初に一級免許を取得する。

 だから春から三年度の俺たちは一級免許取得までまだ一年ある。


 いろいろ悩んだ結果免許を持っていてもいいかなと、春休み中に一般に混じって免許を取得することにした。

 進級するにしろ、転科するにしろ春休み中に一般でダンジョンに潜ることで、ちょっとでもレベルアップして、授業での遅れを取り返すことも考えた。

 中退して一般探索者になることもできるし。


 受験料は3万円かかるが、迷高専では無料だ。一般でダンジョンに潜るには学校からの装備貸し出しがない分、費用がかかってしまう。

 それが悩むところの一つでもある。


 今までのお年玉貯金で受験料は足りる。装備はなくても1、2層くらいならなんとかなるだろう。それ以上はドロップ品を売却して装備をレンタルすればいい。


 俺は終業式を終え実家に帰る寮生と極力廊下ですれ違わないよう、人が少なくなってから残寮申請書を寮母のところに提出に行くことにした。


 


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