第69話 ランクアップG
「あ、ありがとうございます」
いつ頃から始まったのか知らないが、ランクアップに居合わせたら祝辞をおくることが習慣になっている。
コンテナの扉が開放されているので、査定待ちや俺の後に並んだ探索者、職員からも声がかけられた。
HからGへのアップなんてこっぱずかしいだけだが。それでも前に進んでいる気持ちになれる。
しかし俺まだ50万も稼いでいないぞ。納税5万円に達していないはず。
「オークションに出されたスクロールが22万円で落札されています」
「あ、金曜日閉め日だったんだ」
先週スラッシュのスクロールをオークションに出した。協会のオークションは出展三日の延長なしで、入札後すぐに入金される。落札から二十四時間以内に入金しないと落札資格が取り消されるのだ。
一時期払う金もないのに落札して、権利を転売して稼ぐやつとかがいたので、この辺りは厳しくなったらしい。
「オークションの売却額が22万円で税金と手数料を差し引いて十八万七千円になります。確認していただいたらこちらにサインを」
そう言ってタブレットとペンを差し出す。
このタブレットにサインすると、自分の字じゃないみたいに見えるよな。
全額チャージのところにチェックを入れて返す。
「昨日の査定分ですが、三十万千百円になります。税金と武器レンタル一日分を差し引いて二十六万六千九百九十円になりますが、受け取りはどうされますか」
「それもチャージで」
これで爺ちゃんの包丁代がたまったな。
しかし探索5日分の稼ぎが50万円(俺の場合ズルっこ分含むが)となれば、一攫千金を狙って探索者になりたくなるよな。
今日の分はこれから査定なんだ。
ランクFになるには納税10万、あと100万稼ぐのにどのくらいかかるかな。来週の土日もくればランクアップできそうな気がする。
「注文されていた武器ケースはレンタル窓口の方に用意してますので、そちらにお願いします」
通常営業時間だから窓口は別になる。先にケース購入して着替えに行こう。
レンタル窓口は別のコンテナになる。
ここは武具のレンタルだけじゃなく、キーオープナーでの武器の取り出しもしている。そんで探索の間武器ケースを預かってもくれるようだ。
ダンジョンによっては、武器ケース専用ロッカーがあったりするが、ここにその設備は作られていない。
武器ケースはそんなに高額ではない……って剣用って見た目バットケースっぽいけどバットケースが数千円なんだから価格は十倍近い。そう考えたら安くはないか。
「すみません、武器ケースを注文していた鹿納ですが」
職員の人は俺が免許証を差し出すと用意していた剣用の専用ケースを持ってきた。
「こちら税込二万九千八百円になりますが、こちらでよろしいですか?」
エレホーンソードより少し大きめだが、購入することにした。そしてエレホーンソードを収納する。
「では免許証をお借りします」
武器ケースの鍵は本人の免許証がキーになり、それと協会のキーオープナーがないと開けられない仕組みだ。
これを登録すると、鍵をいつ開け閉めしたかのデータも記録される。
だがこれで武器の持ち歩きが可能になるのだ。
「はい、登録がすみました。これで協会の専用端末のある場所以外で開け閉めすることができませんし、あなたの免許証以外で開けることもできません。代金はチャージ金から差し引くのでよろしいですか」
「それでお願いします」
手続きが終わって免許証と武器ケースを返してもらった。
『武器の手入れはどうやってするんですかにゃ?』
武器ケースを持って更衣室に向かう途中、タマが念話で聞いてきた。
『協会施設に整備室があるんだ。自分でやってもいいし、委託してもいい。学校の協会施設にもあるから。そこでやるつもりだ』
『そうなんですにゃ。ところで、放課後の探索の時はどうやってそれを出すんですかにゃ?』
「あ……」
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Ⅰ章7話の「ランクアップに試験がある」という設定を変更し、「最初に試験があるのはFからEに上がる時」としました。
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