第70話 稼いでた
更衣室から着替えて出てきた時には若干気分が上向いていたが、それでも幾分落ち込んでいる。
内緒の探索にエレホーンソードが使えなくなってしまった。
学校で出すことはできても、整備が終わればしまわなければならないし、三年度一学期中の実戦授業では自前の武具の使用は許可されていないから、放課後の鍛錬場に持ち込むこともできなかった。
仕方ない、仕方ないけど何か他の武器を手に入れるべきか。
若干俯き加減で買取の窓口に戻った。
査定は終わっており、今日の買取金額は十六万九千七百円で、税引き後十五万二千七百三十円となった。
昨日の約半分だが、これだけあればダンジョン武器も買えるのだが。
今回の買取金は免許証に全額チャージするのではなく、明日の買い物用に一部を現金で受け取ることにした。
引き下ろしはどこの協会施設でもできるので、学校のダンジョン外施設の一階の協会事務所でもおろせるから。
明細を見ると今年の納税額が表示されている。
【本年度納税額合計】【90,990円】
おお、いつの間にか九十万も稼いでた。というか今日だけでチャージした金額六十万近いって、自分でもびっくりだ。税金10%に、オークション手数料の5%、武器レンタル代も引かれてこれだ。スクロール一つがでかいな。
交通費や食費もかかっているから実質の利益はもうちょっと減るけど、お袋に確定申告頼もうかな。
Fランクアップまであと六十万稼げばいいのか。これって来週の土日頑張ればランクアップできるんじゃあ無いだろうか。
うん、踏破する前にもうちょっと稼ごう。今週中にあの三人組とかに踏破されたら、別の踏破推奨ダンジョンを探さなきゃならないけど。
帰りの電車の中で協会の武具販売サイトを覗いてみた。
協会を通して手に入るダンジョン武器は最低のショートソードで五万くらいのものがあるが、これは全く役に立たない。ハンマーの方が攻撃力があるのでなんのために売ってるのかと思うが、新人鍛治師の作ったものらしく売れたらめっけものっぽい。しばらくしたら鋳潰されるのだそうな。
レンタルで最低価格のショートソードでも買えば十万円くらいする。
アイアンソードになれば二十万くらいだ。十階層以降ではあまり役に立たない武器を購入するくらいなら……
「しばらく刺身包丁だけでやっていくより、ホームセンターで鉈を買う方がマシな気がする」
刺身包丁だけと言うのは若干心許ない。特に十五階層のボス相手には心許ないどころではない。そして竹割用の鉈の方が、ショートソードより使い勝手も攻撃力もあると思う。
明日の放課後は帰りにホームセンターへ行くか。アパートとは反対方向だけど、この辺りじゃあそこが一番品揃えが豊富なはず。
幸い爺ちゃんの刺身包丁分を除いても、まだ軍資金には余裕がある。
突きに特化したエレホーンソードは威力はあるが、俺のスタイルとはちょっと違うんだ。
いつかは刀タイプの武器を手に入れたい。
しかし、職業スキルや武技スキルが手に入った場合はまた考えなきゃな。
駅からアパートに向かって歩きながら独りごちったつもりが、返答が返ってきた。
「今から帰って食事作るのもだるいな」
『牛肉は今日は食べないのですかにゃ』
念話だから頭の中にだけど。
「あーそれなあ。明日にするわ」
『残念ですにゃ』
夕食は帰り道の途中にあるラーメン屋で、唐揚げセットを注文した。ラーメンと唐揚げと白飯のセットだ。野菜もとらねばと野菜炒めも追加する。
なんだかお小遣いの残りを気にせず注文できるっていいよね。
満腹食べて二千円も払うなんて贅沢今までできなかったから。
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大和は庶民ですから一食に千円かけるのも贅沢だと思っています。そのあたり琳太の価値が観反映されておりますが。
昔は普段の食事にお昼食五百円、夕食千円以上は贅沢って思ってましたが、最近はそれ以下で外食は難しくなりましたね。物価の違いを感じて『歳をとったなあ』としみじみ実感しております。
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