学校に内緒でダンジョンマスターになりました。

琳太

Ⅰ章

第1話 プロローグ

 なろうに短編としてあげた《学校に内緒でダンジョンマスターになりました。Ⅰ〜Ⅲ》の連載版です。

 短編とは設定や名称などがいくらか変更されております。

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 俺の名前は鹿納大和かのうやまと 4月2日生まれの十七歳、いや今日で十八才になった。


 日本探索者協会立第三迷宮高等専門学校迷高専探索者育成科──迷宮探索者ダンジョンダイバーを育成する学校に通っている。

 五年の過程を無事卒業できれば、晴れてランクDの探索者ダイバーとなれるんだ。


 だけど三年度進級を前に、俺は岐路に立たされた。


 育成科二年度の二学期になると〝小隊パーティー戦闘実習〟が始まる。

 探索者はおおよそ三人から八人くらいの小隊パーティーを組んで探索をするのが最近では定石とされている。


 二年度の〝小隊戦闘実習〟のメンバーは学校側が決める。クラスメート六人から構成され、メンバーに自分たちの意思が反映しないことから、生徒からは〝パーティー〟ではなく〝班〟と呼ばれていた。

 

 三年度以降はメンバーは自分たちで選んで組むことができるようになるし、選出もクラス制限がなくなり同学年から探すことができるようになる。しかし三年度からはクラス分けが成績順ということもあって、そこそこ固まりを見せる。

 四年度からは四、五年度生からと学年制限もなくなる。



 二学期の最初にクラス内で班わけが行われ、その班は二年度中よっぽどのことがない限り固定だ。


 そんな〝小隊戦闘実習〟での出来事だった。

 それまでは教官が単体トレインしてきたモンスターを倒すことしかしてこなかったが、二学期半ばからは生徒主体での探索となる。

 付き添いの教官はいるものの、自分たち主導で行うダンジョンアタックに皆少し舞い上がっていた。


 草原をこちらをめがけて駆けてくる草原狼ステップウルフに、前衛の二人は学校の備品であるポリカーボネート製のラウンドシールドと鉄製のロングソードを構える。

 中衛の二人はその後ろで槍を構え、後衛はクロスボウの照準を合わせた。


 まだ〝パーティー戦闘実習〟は始まったばかりなので、授業ごとに武器とポジションは変わる。

 いずれ自分にあった武器を選ぶが、それはまだ先の話だ。


 クロスボウの攻撃範囲に入ったことで、後衛の俺と鈴木が最初に攻撃をする。

 俺のボルトはステップウルフの片耳を吹き飛ばすが、鈴木のボルトは草の中に消えた。


「ヘタクソ、ちゃんと狙えよ」


 槍を構えた前橋が怒鳴る。


「ご、ごめん」


 なぜか外した鈴木でなく、俺が反射で謝ってしまった。

 勢いが止まらないステップウルフに前衛の田中と中村がシールドを合わせ跳ね返す。


「どっせい!」


 シールドバッシュのタイミングがうまく合い、ステップウルフは「ギャウッ」と悲鳴を上げ転がった。

 そこに前橋と佐藤が槍を突き出す。俺も新たなボルトをつがえ、ステップウルフの頭に狙いをつけ放つ。

 前衛の二人もロングソードで腹部を刺した。

 オーバーキル気味の攻撃にステップウルフは抗うこともなく黒い粒子となって消えた。


「みろ、スクロールだ」

「すげー、初めてのスクロールドロップだ」


 最弱モンスター相手とはいえ命のやりとりと言う戦闘が終わり、過度の緊張から開放されたところにドロップで皆舞い上がった。

 いや、舞い上がるというか、アドレナリンの放出過多で落ち着きを失っていたんだと思う。

 そこにスクロールをドロップしたことでさらにテンションが上がってしまった。


「ほら、大和!」

「お前たち、はしゃぐな!」


 付き添いの教官から叱咤の声が飛ぶ中、班リーダーの前橋が俺に向かってスクロールを投げた。


「こら!」

「え、あ、うわっと」


 教官の怒声に驚いたことと、不意に投げられたことでスクロールを俺は受け止め損ね、お手玉のように両手の中で数回跳ねさせてから、かろうじて端っこをつかんだ。


 ぱらり……


 投げたり、お手玉したりがよくなかったのか、掴んだ場所が悪かったのか。

 スクロールは解けてしまった。


「「「「「あ…」」」」」


 淡く光ったスクロールはそのまま光の粒子と化し消える。

 スクロールは一度開けると、開けたものにスキルを与え消失するのだ。


 そして皆の興奮は一気に覚めた。班員は監督役の教官の方を振り返り、若干青ざめる。


「あ~~~っ」

「何やってんだ、大和」

「おまっ、バカ!」

「うそだろ!」


 戦闘実習中ということも忘れ、班員全員が大声で騒ぎ出した。

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