第57話 場所探し
週明けの月曜日からは通常の授業が始まる。
この一週間は座学と普通学科の授業が続く。その間に来週からの実戦授業をおこなう上での大事な面談が放課後にあるのだ。
面談は担任と副担任と本人の三者面談。先週提出したカリキュラム申請に基づいた個人面談だ。
順番は成績順なので当然俺は最後である。
月曜の朝のショートホームルームで面談の日時が知らされる。
放課後になるのだが、一人当たり30分として一日四人。俺は金曜の最後で五時開始の予定だ。
月曜から木曜までの放課後は時間が空いたから、生狛ダンジョンの探索に当てられるな。
昼休み中に《階層転移》が使えそうな場所を探し校内を巡る。
この第三校ダンジョンは一階層には二階建ての治療院とJDDSの建物と三階建の一般校舎がある。
世界中には制覇されたダンジョンを利用して、ダンジョン内施設を作られた場所がいくつもある。
施設を作れる条件は建物を建てられる広いスペースがあること。学校のあるここは三階層まではそこそこ広いフィールドタイプで、四階層からは坑道タイプもある複合ダンジョンで学校に最適だ。
なぜダンジョンの中に施設を造るのか。
それは取得したスキルやドロップや宝箱で手に入る
上昇した身体能力はダンジョンの外に出ると十分の一以下となり、スキルは全く発動しない。
ポーション類も効果がなく、ただの不味い液体と化す。
実は外でスキルを発動させる手はあるが、それはまだ一般には知られていない、たぶん。俺も今は体内に蓄積された魔素しか使えないし、一度使ってしまえばダンジョン外で補充することができない。
スキルを活用するためには魔素が必要なので、ダンジョン内でなければならない。だからDDSはダンジョンの中に施設を作っている。
何より有益とされるのは病院だ。治療系スキルを持った治療師がいれば大概の病気も怪我も治療できる。
この治療スキルはスキルのランクにもよるが、医学の知識も必要で、看護師程度の知識がなけれは十全に発揮されないと言われている。
サポート科にはこの治療師を目指すコースがある。だが治療系のスキルスクロールは高価なため、毎年全国にある五校の中から数人にしか与えられない。他は自身で手に入れるしかないため、手に入れられなければ普通の医者や看護師の道に進むことになる。
治療系のスキルスクロールはオークションで時に億の値段がつくこともあり、自身で手に入れるのは至難のわざだ。
一つドロップすれば一生遊んで暮らせる一般探索者の誰垂の逸品だが、自分で手に入れるならドロップさせるしかない。
ちなみにこの治療師による治療は保険が効かない。
治療系スキルを得られれば一生食いっぱぐれないどころか、ウハウハである。
そんなことより転移場所だった。
一階層の入り口入ってすぐの場所には、JDDSの事務所が建てられている。
学生が実践実習で中ボス部屋から転移してくることを考慮して、エントランスには転移エリアが設けられている。監視もあるので当然ここは使えない。
次が一階層の下り階段前だが、ここは学校の校舎が建てられている。
学生と関係者しか二階層へ降りられないようになっているのだが、ここは放課後は学生の行き来が多い。
階段を降りて二階層へ出ると、ここもすぐに校舎がある。ダンジョンの階段が校舎の階段のようなものだからな。
二階層には鍛錬場と呼ばれる校庭と校舎の中には実技専用教室に更衣室、サポート科の実習室や各種工房とかも併設されている。
この二階層にはモンスター舎と呼ばれる檻もある。ポップしたモンスターを閉じ込めるためのものだ。
無闇に倒してしまうとどこにリポップするかわからないので閉じ込められているのだ。
二階層に出現するモンスターはラビット。学校で飼育されているウサギみたいに見えるが、油断すると怪我をするので学生が近寄ることは禁止されている。学生の安全と言うより、間違って倒さないようにだな。
一階層にモンスター舎はない。なぜかというと一階層のポップモンスターはスライムなのだ。
スライムは建物の汚物処理に利用されているのだ。
三階層以降は普通のダンジョンのままで、建物等の施設は作られておらず、生徒の実戦授業に使われている。
授業以外での三階層への立ち入りは許可がいるが、三年度生には許されていない。
残るは二階層の下り階段前。
昼休憩の間も鍛錬場で自主鍛錬をする生徒がいるので、鍛錬場をうろついていても変には思われないのがありがたい。
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