Ⅲ章

第56話 プロローグ(今までのお話)

 少し早めですがメリークリスマスでございます。

 プレゼントはⅢ章の投稿開始でございます。

(いやそれプレゼントとちゃうから)


 今回のみ2話投稿です。56話いらんかったかなって、書き上げてから思いはした。思いはしたがあえて投下☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆

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 地球にダンジョンが出現して二十年以上経つと、ダンジョンは日常となり、今やなくてはならない資源を生み出す鉱山かのように扱われている。


 俺、鹿納大和は日本探索者協会立第三迷宮高等専門学校探索者科、迷宮探索者ダンジョンダイバーを育成する学校に通っている。


 本来なら一般に混じって探索者免許を取得するための試験を受けなくとも、三年度の課程を無事終了すれば探索者免許がもらえる。しかも最低ランクのHではなくFランクとして。


 だが、それを待たずに十八歳の誕生日に俺は探索者免許を取得した。

 授業外でダンジョンに潜るためだ。

 前年度最終学期に教師黙認で、いやもう教師ぐるみと言っていいかもしれないいじめによりレベルが上がらず、成績を伸ばせずに進級が危うい状態に陥った。


 レベル上げと言っても、ゲームのようにステータスが見えたりレベル表示があるわけじゃない。

 ダンジョン内で活動を続けると、身体能力が徐々に上昇していく。だがその能力の上昇はダンジョン外では十分の一しか発揮できない。

 探索者としてダンジョンで活動を始める前の身体能力を基礎値として測定しておき、後の身体能力の上昇割合をIDDSの設定した基準に沿ってその上昇率をランク分けして判断しているだけのものだ。


 三年度最終学期中に、全くレベルが上がらなかった状態を改善したかった。そのため授業外でダンジョンに潜ることを考えたのだ。


 本来はより安全に優秀な探索者を育てるための学校のはずが、学校の成績を上げるために一般に混じってダンジョンに潜るなんて、本末転倒もいいところだけどな。


 そして免許を携え春休みに実家に帰省した際、思いもよらぬことが起こったのだ。


 実家は通学するにはやや不便な場所(田舎とも言う)にあるため、多くの学生と同じく寮に入っていた。

 四月二日生まれの俺は、誕生日当日に探索者一級免許を取得してから帰省したのだが、帰省翌日に両親が実家の裏山でダンジョンを発見したのだ。


 ダンジョンを発見した場合、日本探索者協会──Japan Dungeon Diver societyJDDS──に知らせなければならないが、厳密に発見後いつまでにと期間が決められていないのをいいことに、家族に頼んで報告を待ってもらった。


 いじめにより学校の授業で思うようにレベル上げができていなかったことを打ち明け、裏山ダンジョンでレベルアップしたいと家族を説得した。

 学校に戻る4月8日までのわずか五日間だが、裏山ダンジョンを探索することになった。


 その結果JDDSへの報告は必要なくなったので、結局していない。


 春休み期間中だけということだったが、裏山ダンジョンはできたばかりで10階層までしかなく、難易度1(一階層に出たのは脅威度1のラビットだった)でHランクのダンジョンだった。

 そして春休み最終日、俺は十階層の守護者ガーディアンを倒し、ダンジョンを踏破に成功した。


 学校で教わったのは、というか世間一般的に知られている〝ダンジョンを踏破した者はそのダンジョンの今後を決めることができる〟ということ。

 ダンジョンコアに触れることで〝存続〟か〝消失〟を選ぶことができる。そう【迷宮指標】にも書かれている。

 前記の〝存続〟とは、それ以上ダンジョンが成長せず、踏破した時点の階層数のまま維持される。五階ごとの階層主中ボスは出るが最終階層ボスガーディアンは出なくなる。モンスタードロップ率が落ち、宝箱トレジャーボックスも出現率が落ちる。いわゆる〝いいものが出にくい〟状態になるのだ。

 しかし変化がなくなるということは、稀に起こる〝構造変革〟もなくなる。


 DDSの各種施設が作られたダンジョンは、この〝存続〟されたダンジョンだ。俺の通う学校もその存続ダンジョンの中にある。


 後記の〝消失〟はダンジョンが消失する。

 ついこの前まではそう思っていた、というか世界中が今もそう認識している。


 俺は裏山ダンジョンを〝消失〟させるつもりでダンジョンコアに触れた。


 だがその時、提示された選択肢は3つあったのだ。

 三つ目の選択肢は〝運営〟

 選んだつもりじゃなく、三つ目の選択肢に驚き、つい声に出してしまったらそれが選択となってしまい、俺はダンジョンマスターになってしまったのだった。


 ダンジョンマスターになったことで知ったことがいろいろある。

 協会の発行する【迷宮指標】は間違った解釈が多かった。


 まさか〝消失〟がダンジョンの入り口ゲートだけが無くなっていただけなんて、思わなかったよ。

 ダンジョンの入り口ゲートが消えただけで、ダンジョン自体がなくなったわけではなかった。

 入り口が消失したダンジョンは、しばらく休眠状態に入りダンジョンの構造変革に入る。

 稀に起こる〝構造変革〟はダンジョンが成長することで、階層の構造や出現モンスターが変化すると思われていた。

 それも間違いじゃない。ただ成長限定じゃなかったということだ。

 入り口ゲートを〝消失〟したダンジョンは階層を減らし、規模を縮小することでリソースを回収。ある程度(ダンジョンによって個別差があるためばらつきあり)時間が経過すると新たな入り口を作るのだ。


 元のダンジョンより階層数も広さも小さくなるため、実は同じダンジョンだったなんて誰も気がつかない。

 しかも新しい入り口ゲートは近くに現れるとは限らず、国すらも異なる場所に現れることもあるのだ。


 ダンジョンコアは再び踏破されることを避けるため、離れた場所に開くのが一般的ではある。


 テストで正解書いたら、不正解になるので注意しよう。





 春休み最終日にダンジョンマスターとなってしまった俺は、翌日からの新学期に備えて夜までに新しく学校の紹介で借りたアパートへと戻らなければならない。

 とりあえずダンジョンの入り口ゲートを封鎖(消失ではなく、一時的にダンジョンマスターの意思で閉じることができる)し、モンスターのポップも中止した。

 休眠状態にすればリソースの消費は抑えられるが、回収はゼロになるので、それはしていない。

 休眠にすれば俺のマスター権限とスキルの使用に制限がかかると言うのも理由だ。


 始業式を終え、午前のスクロールの配布という授業を終えた俺は、午後の自習時間は学校外へ出てこの周辺で一番大きい大坂ダンジョンへ向かって、レベル上げ&資金稼ぎに向かった。


 爺ちゃんの包丁代を稼がなきゃならないのだ。


 そしてその週末は裏山ダンジョンと同じモンスターが出る生狛ダンジョンへ向かった。

 生狛ダンジョンは消失推奨ダンジョンだ。探索終了間際十階層ボスを倒し踏破したと思ったら、まだ先があった。ここは十階層超えのダンジョンだったのだ。


 そしてドロップ品を売却したが爺ちゃんの刺身包丁代には届かなかった。

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