第22話 新たなスキル
九階層はフロアタイプだった。
目の前には先の見えない森が広がっていた。
「ここにきてタイプチェンジかよ」
果ての見えない森、果てが見えないだけで果てはある。そこに到達すると、向こうが見えるのに進めないという現象に会うのだ。
足元は膝下までの草が生い茂っている。
「草刈り、いるかなこれ」
ここで考えても仕方ないので、気持ちを切り替え帰途につく。
四日目、九階層に降り立った。今日中にクリアして十階層へ降りたい。
草原タイプなら学校の実習でも経験があるが、森タイプは初めてだ。
注意する箇所が増える。木の上から襲ってきたりもするし、洞窟タイプと違って警戒すべき範囲が三百六十度に広がる。
そのため森タイプは中級探索者以上で、パーティー向きとされている。
ガサガサっと草をかき分ける音がして、両手の武器を構える。
草の動きでモンスターの位置を捉えた瞬間、飛び出してきたモンスターに刺身包丁を振り下ろす。
「え、ラビット?」
黒い霧に変わっていくのは一階層にでた脅威度1のラビットだった。
「九階層でラビットなのか?」
ドロップした魔石を回収していると、また草が揺れる。
俺に向かって飛び込んできたのはビッグフットだった。
ここまでの戦闘で、ビープシープまでなら一撃で屠れる様になっていたが、続け様にツインテールキャットまで現れた。
「結構モンスター密度こいのか?」
警戒しながら先に進むと、今度は木の上から小爪リスが降ってきた。
「もしかしてここまでの出現モンスター揃い踏みか」
近くで「ビービー」うるさいビープシープの鳴き声がした。
「やばい、あれ早く倒さないと他のモンスターが寄ってくる」
ビープシープの声を辿って接敵速斬! ってスキップゴートとビッグフットが左右から突っ込んできた。
ここにきて初の多対単戦闘に突入した。
「くそっ、やってやる、やってやるさ、オラアァァ!」
ばかです、自分で自分の首閉めました。
叫んだせいでさらにモンスターが寄ってきました。
どれくらい戦闘が続いたか、20体くらいまで数えたがそのあとはわからん。
もうこの辺りにモンスターはいないだろうと。座り込んでジャンピングワラビーの腹袋をめくる。
バラバラとドロップ品が散らばるが、それは放置で中学時代の体操着袋を取り、中からペットボトルのお茶を取り出す。
ジャンピングワラビーの腹袋に入るサイズの鞄がなかったので、引っ張り出してきたのだ。
お茶を飲みつつジャンピングワラビーの腹袋を再度貼り付ける。
時計を見ると一時間ほど戦闘していた様だ。
九階層まで降りてくるのに三時間、戦闘一時間でちょうど昼どきだ。
「さっさと回収して一旦階段に戻ろう」
体操着袋からさらにお袋が塗ってくれた巾着袋を取り出し、魔石と牙と爪を分別して詰めてからジャンピングワラビーの腹袋に入れていく。
このジャンピングワラビーの腹袋は大体100リットル、でっかいバックパック1個分くらいの収納力だった。
毛皮やら爪やら魔石やらを回収していると、スクロールを見つけた。
「初日以来だ」
=【エピック・スクロール】《サーチⅠ》=
サーチスキルは自分の周囲の特定のものの位置を教えてくれるスキルだ。
熟練度Ⅰはモンスターの位置を教えてくれる。「こっちの方向、距離は○メートルくらい」って風に感じ取れるのだが、《マッピング》との相乗効果が優秀で《マッピング》を持っていると対象の位置が《マッピング》に脳内再生されるのだ。ただしこれも他人には見せることはできない。
因みに熟練度Ⅰではモンスター、Ⅱでモンスター以外の生物(大体人間)Ⅲでトラップである。
「もっと早く出てれば……」
そう呟きながらスクロールを開き、光の粒子に変えた。
脳内マップにモンスターの位置が表示され……ない!
「ああ、あたりのモンスター、全部倒したのかも」
《サーチ》の範囲は熟練度Ⅰでも二、三十メートルはあると言われている。
そこまで接近すれば対応できるだろうと、もうここで昼食をとることにした。
体操着袋から婆ちゃんの握ってくれた爆弾おにぎりを取り出し、その場に座り込んでかぶり付く。
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