第144話 剣術試験

 前回連休で曜日感覚が狂ってまして月曜投稿でしたが、その後続きませんでした。

 すでにストック切れて週二の投稿ができなくなりまして……今後は不定期になると思いますが最低週一はキープしたいと思っております。何卒ご容赦ください。

┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼


 剣術の模擬試験はEとFクラスが先に始まり、終わればGとHクラスの番になる。対戦相手は二クラスの生徒からランダムに選ばれる。ランダムと言っても実力の近いもの同士で対戦を組むんだけどな。


 俺の相手はよりにもよって鈴木か。木剣を手に前に進み出ると鈴木は前橋と何か話した後、ニヤニヤとこっちを見る。


 武器は木製だがさまざまなタイプが用意されている。俺は授業の最初に使う武器のタイプを選択している。俺はちょっと木刀に心惹かれたがまだ刀型武器を手に入れる算段がついていない頃だったので、若干細めの片手剣を選んだ。ロングソードに分類されるやつだ。


 鈴木の方は俺のより二回りくらい大きい、ツバイハンダーと呼ばれる両手剣型だ。二年時には使っていなかったが、三年になってからは前衛での戦闘職を目指しているようだ。

 そう言えばなんのスキルを取得したか知らないな。前橋みたいにわざわざ教えにこなかったところを見ると、あまり良いスキルじゃあなかったのかもしれない。


「よう、灯り係くん、最近ぼっちではっちゃけてるそうだな」

「……」

「なんだよ、だんまりか」


 いや、今からテストだろ。無駄口叩いている場合じゃあ……あれ、こういう駆け引きも込みだっけ?


「鈴木、早く位置につけ」


 じゃなかった。鈴木は慌てて所定の位置に着く。


「構え」


 教官の声に木剣を正眼に構える鈴木、それを見て俺は脇構えにしてみた。


「!」


 なぜか鈴木が焦ったような顔をする。


「始め!」

「いやああぁぁっ」


 教官の開始の合図とともに奇声を発しながら突っ込んでくる鈴木を、ダッキングの要領で踏み込み、下から木剣をかち上げる。


 あっけなく飛んでいく鈴木の木剣と、驚愕の表情で俺を見る鈴木。

 バカか、こいつ。なんで回避行動を取らないんだ? そうは思ったがその隙を見逃す理由もないので返す刀で鈴木の脇腹目掛け振り下ろす。


「そこまで!」


 打ち込む寸前で教官の静止の声が飛んだ。無視して打ち込んでやってもよかったが、これは試験だ。そういうのを無視すると成績に影響するからな。俺は寸止めで止めた木剣を素直に引く。


 剣の重さ自体も俺と鈴木の木剣は倍近く違う。その重い木剣を弾き飛ばされたことで鈴木の思考が止まったのだろう。

 試験は勝ち負けを見るのではなく、あくまで戦闘能力。思考を止めた時点で鈴木は赤点だろう。

 勝負をつけることが試験ではないので、試験官である教官が成績をつけたら終わりなのだが……


「鹿納は残れ。鈴木はもういいぞ」


「ちょ、ちょっと待ってください。今のは、そうちょっと油断して」


 言い訳をはじめる鈴木。あれ、こいつってこんなに頭悪かったけ? 剣道の試合とかじゃないんだよ。モンスター相手に〝油断〝なんてしたら命に関わる。探索者は常に真剣勝負なんだよ?


 教官がなんとも言えない視線を鈴木に向ける。


「鈴木、これは試合じゃあない。試験だ。間違えるな。早く下がれ」

「くっ」


 なぜか俺を睨みつけながら下がっていく鈴木。

 鈴木を無視して立っていると、教官がボードに挟んだ生徒の評価表をパラパラめくる。そして、対戦相手を決めたようでめくる手を止めた。


「じゃあ次は……前橋」


  え、なんで前橋が相手? これって成績の近い相手とするんじゃあなかったっけ。そういえば評価表をめくっている時点でおかしいのか。

 でもそれを言えば俺って成績最下位だったよな。呼ばれるの早かったことに今さら気が付いた。


 前橋と鈴木では前橋の方がレベルが上だ。前年度班長だったことを利用して優先的にモンスターを倒していたからだ。

 そのせいでパーティーリーダーとしての適性はないとみなされたようだけどな。

 リーダーになりたい生徒なら均等に班員を動かせなければならない。

 実際は班メンバーが不均衡にレベルアップしている時点でもパーティーリーダー失格だ。それがなければもうひとクラス上でもおかしくない実力を持っていた。


 前に出てきた前橋が俺を睨みつける。前橋の武器は俺と同じロングソードタイプだ。

 前橋はサンダーボールのスキルを持っているが、剣術試験なのでここでは魔法呪文スキルの使用は禁止。武技系の使用も二学期の中間考査からだから、一学期の中間考査ではスキルは使用禁止になっている。


「前橋、手加減なんて必要ないからな!」


 鈴木が前橋に声をかける。まるで自分が手加減してたみたいな言い方だな。


「構え」


  前橋がさっきの俺を真似てか、脇構えを取った。俺は今度は上段構えをとった。


「始め!」


 若干フライング気味に前橋が飛び出してくる。そして下から逆袈裟斬りを狙って振り上げてきた。俺はその木剣の剣先を目掛けて振り下ろす。

 本来振り上げるより振り下ろす方が力が乗りやすい。鈴木の時は剣の重さもあり。断然有利だったはずが、結果は逆だったがそこはレベルと《戦士》職による技量の差というものだろう。

 俺が振り下ろす方だと、前橋の振り上げの力は弱すぎる。カツッと木剣を打ち合わせる。

 そのまま前橋の剣先を地面に押し付ける。向こうが持ち上げようとしたところを、微妙に力を抜いてやると前橋の剣が浮き上がる。そこを絡めて剣を飛ばしてやった。

 前橋は剣を失った後、鈴木のように呆然とはせずすかさずタックルをかましてきた。

 それを交わしつつ、足を引っ掛けて前橋の体制を崩すと背中にむけ木剣を振り下ろす。


「そこまで!」





┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼

 前橋の微ざまあ:班の運用が悪くリーダー適正0判定でGクラス落ち。

 いじめとかやってる場合じゃなかったんですよ。この辺りの評価は担当教官(三田)ではなく、学年の指導教官たちが集まってします。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る