第154話 永岡天満宮ダンジョン④

 

 ボスドロップのドロップ率表示も減らしてます。

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 順調に四階層へ上がる。そういえば襖の絵は階層ごとに違ってたが何か意味があったのかな。松竹梅で次は何かと思ったが桜の絵だった。

 奇抜な絵柄はなく、昔ながらの襖絵って感じだ。


 四階層に出たモンスターは脅威度3のコモンモンスターで、回転ムクドリ。

 ギュルンと旋回しながら突っ込んでくる。ドリルっぽいな。


【コモン・ロールスターリング】【魔石60%・牙10%・爪5%・アイテム5%・なし20%】


 突っ込んできたところを避けると、ズボッと障子に突っ込んだ。

 普通の障子なら貫通するんだろうが、そこはダンジョン。全長三十センチを超える体の半分くらいがめり込んで止まった。


「なんか、間抜けだよな」


 若干ジタバタしているところをタマがパシッとはたき落とすが、そのまま黒い粒子に変わっていった。


 そして肉がドロップした。

 ムクドリって食べてもいい狩猟鳥獣の一つだったっけ。昔爺ちゃんがいろいろ狩ってきたけど、なんの肉かまでは聞いてなかったか、聞いても覚えなかったか記憶にはない。

 ああ、でも昔の焼き鳥は雀だったって、どこかで聞いた気がする。


 大きさは元のサイズが小さいからだと思うが、アンガールースターの半分、重さにして五百グラムくらいと少なめ。

 

 三人前と考えたら量少なく、一食分としては足りない。


「一人一個はいるよな。調理するときはアンガールースターの肉と混ぜるか」


 そうして四階層の探索を続け、今回は四部屋で廊下に戻ったのだが、階段近くに戻っていた。


「ここから入れば、向こうの階段近くに出れたんだよな」


 廊下を進むほうが早いけどな。

 四階層ではトレジャーボックスの発見はなし、スクロールドロップもなしで階段を登った。


 五階層は真っ直ぐな廊下が奥まで続いていたが。


「渋滞してる……」


 廊下自体の長さは二十メートルほどありそうだが、そこに何組かの探索者が左右に分かれて座り込んだり、食事をしたりしながら順番を待っていた。


 五階層の中ボス部屋の扉は土蔵の漆喰塗りの扉ふうだが、ボス部屋の扉だけあって大きかった。


 ここ永岡天満宮ダンジョンは塔タイプダンジョンだった。

 全階層にキーパーがいるタイプではないが、最初のキーパーは五階層だった。


 倒すと時間経過でポップする通常の中ボスと違い、中に入ると扉が閉まりボスモンスターがポップするタイプだ。

 入り口側の扉は常に開いており、中に入った探索者が中ボスを倒すかもしくは戦闘不能になった時に開く。

 通常とは逆だな。

 今はしまっているので探索者が戦闘中ということだ。


 ギギギィッと、軋む音を立てて扉が開いた。


「お、やっと終わったか」

「じゃあ、お先に」


 左側にいた探索者二人が中に入っていったが、扉は閉まらなかった。

 彼らは〝鍵持ち〟ですでにここの鍵を手に入れている探索者だろう。

 〝鍵持ち〟が中に入っても扉は閉まらないし、モンスターも現れない。

 そのまま奥にある扉を開けて出ていったようだ。


 そのあと、右側の先頭にいた三人が中に入っていくと、今度は扉が閉まっていく。右が鍵なしの列のようだ。

 前が開いたことで、皆が少しずつずれていった。俺も右側の壁際に座って順番を待つことにした。


 次に扉が開くまでの時間は五分ほどだった。次の探索者パーティーが中に入ると扉が閉まる。

 俺の前にはあと二組の探索者がいたので、もう少し時間がかかりそうだ。


 バックパックをおろし、中に手を突っ込んで倉庫から水のペットボトルを取り出す。蓋を開けていると下から階段を上がってくる気配がした。


 三人組の探索者はそのまま俺たちの前を通り過ぎ、左側に並んだ。


「鍵持ちか。これ先に次の鍵も手に入れてから探索したほうがいいかも」


 また扉が開き、さっきの探索者が先に入っていき出口へと向かうと、右側の探索者パーティーが中に入っっていった。






「ようやくだ」


 タイミングが悪かったのか、俺の後に並んだパーティーは一組だけ。ちょうど渋滞している時だったようだ。


 中に入ると後ろで扉が閉まる。中は剣道場のような板張りで、天井は高く十メートルくらい、広さは三十畳はありそうな部屋だった。


 片側の板扉は開けっぱなしにされていて、そこから日の光っぽいものが差し込んでいるため、中は明るい。

 正面の床が僅かに光る。召喚陣というか中ボスポップ用のマーカーだ。そこからリソースである黒い粒子が溢れ出しモンスターを形作る。


「考えたらポップの瞬間って初めて見るかも」

「そうでしたかにゃ」

「珍しいものではないですワン」


 扉が閉まったことでタマとポチが現れ、足元で待機している。


 現れたのは狂雉鳩、脅威度5のレアモンスターだ。


【レア・マッドタートルダブ】【魔石40%・素材40%・アイテム20%/キー】


「ギョゲェェェー」


 翼を広げると一メートルくらいありそうな、雉鳩が叫声を上げながら向かってきた。

 だけどこれ、アンガールスターよりランク下なんだよな。ただ飛ぶから厄介かな、なんて思ったんだけど。


 狂ってるだけあって、走りながら突っ込んできた。

 そういえば狼刀で《ラッシュ》試してなかったなと、思い出し真正面から突っ込んでくる狂雉鳩に向かって使ってみることにした。

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