第160話 ウォーキングフィッシュ

 長らく更新ストップして申し訳ありません。

┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼


 普段の何倍もの速度で前に進むと、視界がぶれるというか周囲がまるで車窓から見る風景のように流れる。そしてウォーキングフィッシュが鱗を飛ばす前に接敵し、〈ラッシュ〉を繰り出した。


 今までエレホーンソードでのラッシュは5回だったが、今回は6回に増えていた。地味にレベルアップしているようだ。


「ギョギョワワ〜」


 悲鳴を上げつつ、ラッシュによって空いた穴から何か白い液体を撒き散らし、やがて動かなくなった。


「お疲れ様ですにゃ」

「お疲れですワン」

「おう、お疲れ」


 ウォーキングフィッシュが黒い粒子に変わって消えた後には、鍵と……


「えっと、リボンに見えるな」

「装飾品ですにゃ」

「うむ、女子おなごの飾りのようですワン」


 おなごって、いや女子とかいておなごと読むか。

 左手でドロップを拾いつつ、右手で《猛進の羽飾り》を外して倉庫に収納する。《猛進の羽飾り》をつけていると振り向けないからな。決してデザインのせいでつけていたくない訳では……いえ、ちょっとあります。


水色の布のように見えるが、若干の虹色の光沢があって、これは。


=【エピック・アクセサリー】《水虹の鱗飾り》ウォーキングフィッシュの鱗付きタリスマン/スキル〈スケイルカッター〉/装備効果:水属性付与(炎耐性上昇、雷耐性低下)=


 ウォーキングフィッシュがビッタンビッタンしながら鱗飛ばしてきた鱗が〈スケイルカッター〉ってスキルだったのか。

 結構な距離飛んでいたから遠距離攻撃として有効だとは思うが。


「エピックアクセサリーって効果付きが多いって教わったけど、これも《猛進の羽飾り》も効果だけじゃあなくスキルもついてるってことは、あたりかな。まあどっちも見た目に難がある気がするけど」


 タリスマンと言ってもどう見てもリボンだよな。頭につける必要はなくってどこにつけてもいいんだけど。


「これも《猛進の羽飾り》並に付けづらいな」

「かわいいではないですかにゃ。きっとお似合いですにゃ」


 タマがにやりと笑いながら、子虎サイズになって俺を見上げている。

 そうか、かわいいか。


 俺はスッとタマに手を伸ばす。


「にゃ?」

「うん、かわいいな、似合っているぞタマ」

「うむ、ピッタリだワン」


《水虹の鱗飾り》をタマの喉元につけてやった。タリスマンはブローチのように留め具がついている訳ではない。引っ付けただけで貼り付き、少々のことでは取れない不思議仕様だ。


「にゃあ!」

「あ、外すなよ。せっかくのエピックアクセサリーなんだから」


 タマが《水虹の鱗飾り》を外そうと前足を喉元に伸ばしたが、その前足をガシッと掴んで止める。

 

「や、大和様……」

「水属性付与もあるし、この後水属性モンスターが出た時に役に立つぞ」


 けど子虎サイズにリボンはめっちゃ似合うな。巨大化したら笑えるかもだけど。


「うむ、よかったではないかワン」


 そう言ってタマに絡むから、お前たちは。


「じゃあ次にリボンドロップしたらポチにつけてやろう」

「ワン?」

「そうですにゃ、私だけ装備をもらうのは不公平で気が引けますにゃ」

「わ、ワン?」


 ちょっとは仲良くしような。ああ。できたら色違いでお揃いの形のアクセサリー出ないかな。

 

 それぞれ階層キーを取り込んで十六階層へ上がる階段へ向かった。



 十六階層はこれまでとガラッと雰囲気を変えてきた。

 ぱっと見、厳島神社を思い出した。

 海の上に立つのは朱塗の柱ではないが、海なのか湖なのか水面の上に板の間の廊下があちこちに枝分かれして建物につながっている。


 水面の上に立っているのが日本家屋じゃなかったら、どこかのリゾート地の水上コテージっぽいか。


「これ廊下から外に出られるのかな」


 欄干から身を乗り出して水面を覗き込むと、サーチに急に反応があった。


 バシャンと水飛沫を上げ、飛び上がってきたのはウォーキングフィッシュによく似た、けれど身体のバランスが人よりで顔だけが魚のモンスター。

 水棲モンスターとして授業でも習ったことのあるサハギンだ。



【エピック・レッサーサハギン】【魔石40%・素材30%・アイテム20%・なし10%】


「レッサーか」


 飛び出してきたレッサーサハギンが欄干に手をかけて飛び越えてきたが、飛び上がったところをすかさず、狼刀できりつける。


 肩から胸まで狼刀が食い込んだため、レッサーサハギンの腹を蹴り狼刀を引き抜く。


「ギョギャッ」


 声を上げながら水弾ウォーターボールを飛ばしてきたので、サイドステップでそれを交わす。

 タマからスケイルカッターが何枚もレッサーサハギンに向かって飛んでいく。

 なんだかんだと言いながら、早速スキルを使ったようだ。


 レッサーサハギンは水面を蹴り再度飛び上がってきた。水面蹴るって沈まないのか。

 今度は狼刀を横薙ぎに振るうと、首を中程まで切り裂いた。


 欄干に手を伸ばすレッサーサハギンだたが、その手は欄干に届かずそのまま落ちていった。


 また上がってくるかと警戒していると、水面に細く黒い粒子が立ち上った。

 

「あれ、もしかして水の中に落としたらドロップも水の中ってこと?」

「ですにゃ」

「そのようですワン」


 うわぁ、エピックのドロップがあ……


┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼

お知らせ。


 本作の書籍はファミ通文庫より、来年1月発売予定です。

 ファミ通文庫はB6版と文庫がありますが、文庫です。

 現時点(2021年12月9日)では予定であって決定ではありません。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る