第161話 永岡天満宮ダンジョン2日目①


 どうも水の中にいるとサーチ範囲が狭まるというか、感知しにくいようだ。


 しばらく廊下を進んでみたが、欄干に近づかなければサハギンもこちらを認識しないようで襲われなかった。

 けれど、タマポチが面白がって欄干から顔を覗かせて、サハギンを引き寄せては叩き落とすので、ドロップが確認できずにいる。


「もったいないから、上に上がらせたら?」


 流石にエピックモンスターのレッサーサハギン相手だから、タマポチは本来の大きさに戻っている。

 両方大きいと幅二間にけんはありそうな廊下が狭く感じるな。


 十六階層、十七階層と進んでいくが、出現モンスターは十四階層までの鳥系から水棲系に完全に変わった。

 サハギン以外に海馬シーホースが水面に飛び出してきた。

 シーホースはタツノオトシゴではなく、前足が蹄ではなくヒレになっていて魚の下半身をもつ馬だ。「ひひん」と鳴く馬の顔でオットセイみたいに廊下の上を移動するのだが、これがなかなか侮れない速度だった。タマポチには瞬殺されたけどな。


「お、スクロール」


 水に落とさずゲットできたスクロールは《状態異常治療キュア》だった。


=【レア・スクロール】《キュアⅢ》状態異常を治す=


《キュア》はレアスキルだが、初期状態だと、レアポーションのローキュアポーションほどの効果しかない。これはステージⅢのため最初からめエピックのミドルキュアポーションと同等の効果がある。医学知識のあるものだとさらに効果は高い。


「どうしましたにゃ?」

「使わないのですかワン?」


 手の中のスクロールをじっと見る。


「い、今の所状態異常を仕掛けてくるモンスターはいないし、ちょっと考えようかな、なんて」


 そう言いながらジャンピングワラビーの腹袋ではなく、《倉庫》にしまった。


 そうして十七階層までを探索し、休憩するためにマイボス部屋に転移した。



 休憩を挟んで十八階層の探索を開始する。

 水上廊下を渡る家というより、昔の寝殿造りといった風貌の建物にたどり着く。

 廊下でで建物を繋ぐ感じのやつだ。建物の中は多くて三部屋ほどしかなく、十四階層以下と比べれば部屋数が圧倒的に少ないが、その分一部屋の広さはかなりある。

 どこも一面、場合によれば三面の障子が開け放たれ、水面が見えており部屋に入るとモンスターが飛び込んでくる。

 どれも水棲モンスターなんで、鳥系モンスターのように最初から部屋の中にいない。

 これ、何気にサーチが効かない構造だ。


 他の探索者が少ないので、タマポチが出張ってくるから、俺の出番が少ないのがちょっと。

 今回も一気に六体のグリーンタッドポールが現れた。


 最初ナマズかと思ったが、鰭ではなく水掻きのついた手が見えて、サハギンもどきにもみえたんだよ。


【エピック・緑おたまじゃくしグリーンタッドポール】【魔石40%・素材20%・アイテム20%・なし20%】


 緑といっても濃い深緑なのだが、大きさがバランスボールほどある。小さいが手足がちゃんと生えていてそこそこジャンプ力があった。

 そしてどこまで開くねんと、ツッコミ入れてしまうくらい、玉の部分の半分以上が開く大きな口で噛みつこうと襲ってくる。

 大きな口の中にはギザギザに尖った牙がカニバサミを彷彿とさせた。


 六体のうち半分が飛びかかり、残り半分は水弾を飛ばしてくる。俺もタマポチも難なく水弾を避け、接敵即断でグリーンタッドポールを倒していく。

 さすがエピックモンスター相手に一撃というわけにはいかず、数撃お見舞いすることになるが。

 グリーンタッドポールも馬鹿正直に狼刀を受けているわけじゃあない。

 後ろ足で床を蹴ると、畳の上をまるでカーリングのストーンのように、いやもっとスピードは出てるか。バビュンと滑っていく。


 逃げたグリーンタッドポールを振り返る。あ、つっかえた。

 自分たちが水弾で畳を抉ったせいで、滑りが悪くなっていたようだ。そこにタマから何か飛んできた。

 カツカツッとグリーンタッドポールに刺さったそれは虹色をした楕円形の鱗。


「ふむ、あまり効果はないようですにゃ」


《水虹の鱗飾り》のスキル、《スケイルカッター》のようだが、水属性の攻撃っぽいから水属性のグリーンタッドポールに効果が薄くて当然だと思う。


 けれど《スケイルカッター》の攻撃を受け、一瞬怯んだ隙に狼刀を振り下ろす。

 半ばまで両断されたグリーンタッドポールは、粒子に変わっていった。

 それが最後の一体だったようで、他はすでに倒されていた。


「あ、おかわりが来たようですワン」


 ポチのいう通り、追加で三体のグリーンタッドポールが飛び込んできた。

 半分ならそう手こずることもないな。


 おかわりを倒し終わると、さすがに三杯目はなかったようで、散らばったドロップを回収する。


 九体倒してハズレ1、魔石が四個、皮が一枚、エピックアイテムであるミドルキュアポーションが一本。そして、これはスクロール……ではなかった。


「似てるけど、封蝋がない」


=【エピック・アイテム】《契約書》契約を交わすことができる証書=


「契約書か」

「契約書ですにゃ」

「契約書ですワン」


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神加護の原稿送ったので校正が始まるまでのしばしの休息……

けど書こうとしてたネタ忘れてしまって、新たに考える。

忘れるくらいだからたいしたものでもないと思うけど。


さて、書籍発売日まであと8日です。ドキドキしております。

 













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