第159話 十五階層のゲートキーパー

 

 朝一番に十五階層へやってきた。

 昨日マーキングした十三階層に転移したが、周囲に探索者はおらずことなきを得た。

 残り三部屋を通って廊下に戻れたので、十四階層は飛ばして十五階層の、今ここです。


 扉は開いており、待っている探索者もいない。


 十三階層を三部屋通ってきたことで、ウォーミングアップも終わっている。 

 だけど十階層ではエピックモンスターだったので、ここはエピックとしたら脅威度11くらいのモンスターが出るかもしれない。


 装備をあらためておこう。

 

 武器は狼刀では若干力不足と思われる。粟嶋先輩が作った武器だがレアリティは《レア》なのだ。


 自分が持つ中で最上武器はブラックウルフからドロップしたダブルファングだ。レジェンドウエポンなのでレアモンスターあたりには効きすぎる。

 だがエピックモンスターでもかなり効果が高いというか、高すぎる可能性もあるだろう。

 しかしダブルファングは武器種で言えば〝短剣〟なのでリーチが短い。

 固有スキルの《ブラックファング》を使えば中距離程度の位置から攻撃できる。


 でも直接攻撃はかなり接近しなければならない。


 エレホーンソードはエピックだからこっちでもいいかと思ったけど、雷耐性があると効きが悪くなるので、今回は予備としていつでも取り出せるようにはしてある。

 エピック武器はスチールハンマーがあるが、ここ長岡天満宮ダンジョンのモンスターは素早い鳥型なので、取り回しに難があるハンマーは向いていない。

 当たれば一撃っぽいんだけどな。


 防具は麻痺耐性の指輪と毒耐性の指輪、赤鋼のレガースと緑鋼のバンプレイスにブルマントとフル装備だ。

 ブルマントとミラージュケープで悩んだけど、ここは認識阻害よりも回避力上昇を選んだ。


 物理防御のアミュレットも忘れず首からかける。


「じゃあ挑戦しますかね」

「行きますかにゃ」

「お供しますワン」


 今回はタマとポチも参戦する。


 俺自身のレベルアップも大事だが、このダンジョンを制覇するという目的もある。昨日五階層十階層とソロで戦闘をしたし、昨日は二匹ともあまり活動できなかったからな。


 中に入ると背後で扉が閉まる。


 中の様子は五階層の剣道場と同じ感じだが、広さが倍以上ありそうだった。


 そして中央にボスが現れる。



【エピック・ウォーキングフィッシュ】【魔石25%・素材40%・アイテム35%/キー】


「ここにきてモードチェンジかよ!」


 目の前に現れたのは人の手足が生えた巨大な魚だった。


 ギザギザのサメのような歯を覗かせる口を大きく開けたウォーキングフィッシュ。

 咄嗟に俺たちは三方向に飛び退る。

 さっきまで立っていた場所に、バレーボールほどもありそうな水球が飛んできて、板の間をえぐる。


 最初に攻撃に移ったのはタマだった。

 着地した瞬間にはもうウォーキングフィッシュに向かって飛びかかっていた。

 しかしそのタマめがけ、また水球が吐き出される。

 口を開けているが口から吐いているわけじゃあないのか。


 身体を空中で捻ることで、水球を避けるタマ。

 その隙に後方からポチが仕掛ける。


 ポチが横をすり抜けざま放った前脚の攻撃が、ウォーキングフィッシュの腕を切りとばした。


「ギョワ!」


 今度はポチに向かって水球よりも小さい、テニスボールほどの水球が数発連続して放たれる。


 その隙に今度はタマがもう一本の腕を切り飛ばした。


「ギョワワ!」


 憎らしげにタマを振り返るウォーキングフィッシュ。


 余所見をしたウォーキングフィッシュの足元に、俺が滑り込むように駆け込んで、ダブルファングで両足を切り落とす。


「ギョワワワ!」


 さすがレジェンド武器だ。綺麗に両足を切り落とされたウォーキングフィッシュは、横倒しに倒れる。


 両手両足を失ったウォーキングフィッシュは……


「うん、ただの魚だな」


 板の間の上でビッタンビッタンとはねる様はまさに陸に上がった魚。


 トドメを刺そうとするも、突然大きく跳ね上がったウォーキングフィッシュが、何かを飛ばしてきた。

 避けきれなかった一つをダブルファングで弾き飛ばす。


 床に落ちたそれはウォーキングフィッシュの鱗のようだ。


 ビッタンビッタンと跳ねつつ、たまに大きくはねると鱗を飛ばしてくるため、なかなか近付きにくい。


 タマとポチは回避に徹している。


「トドメは譲りますにゃ」

「最後はお任せしますワン」


 と、譲ってくれたのだ。多分ああなったウォーキングフィッシュに対しては、タマもポチも一撃で倒せるんだろうな。


 そんなわけで、とどめの方法を考える。


「あ、あれ使ってみるか。《ファイヤーバレット》」


 近づけないなら遠距離攻撃。しかし相手は水性に特化したウォーキングフィッシュだったので、コモンスキルの《ファイヤーバレット》は着弾したものの鱗に焦げすら作らなかった。


「じゃあこっち《ストーンウォール》」


 ウォーキングフィッシュとの間に石壁を作り出し、防御壁にしてみた。


 バキンバキンと石壁に鱗がぶち当たる音とともに皸が入っていく。


「うーん、レア呪文だからかな」


 壁があるうちに《倉庫》からエレホーンソードと、唯一装備してなかった装備品を取り出す。


「これつけると間抜けっぽいんだよな」


 水性に対し雷性は有効だ。そして《猛進の羽飾り》を頭に装備する。羽根飾りは後頭部に来るようにした。


「《ダッシュ》《ラッシュ》」




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ウォーキングフィッシュはパ○アくんのタン○くんではありませんよw

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