第87話 二日目の探索③

 

 

 カウ肉を食べてタマはご機嫌である。

 ゆっくり食事をとっていたので、午後の探索開始時間が少し遅くなってしまった。


「2時半まわってた。帰りのこと考えたら十四階層の探索時間三時間くらいしかとれないぞ」


 時間配分ミスったな。三時間じゃあ下り階段見つけられるかな。


「十四階層は下り階段捜索優先するから、探索済みの場所はさっさと移動しよう」

「了解ですにゃ」


 十四階層のアンゴーラカウにはマチェットは使えないので、エレホーンソードと刺身包丁を装備、手に入れたレガース、バンプレイス、ナックルガードも装備する。

 認識阻害は必要ないかとブルマントの方を装備した。


「なんか見た目派手というか、色彩が……」


 色の統一感が全くないが、ここは機能優先で。


「じゃあ行くぞ」


 そして十四階層の階段前に転移した。


 結果、探索終了時間までに下り階段を見つけることができなかった。


「うーん、今回で十四階層終わらすつもりだったのに。午前中に宝箱探しやり過ぎたか」


 未踏破エリア探索に時間をかけ過ぎてしまった。地図の広さから考えればあと少しのような気もするんだが。


「仕方ない。また放課後頑張るか」

「戻りますかにゃ」


 巨大サイズだったタマが、子猫ヴァージョンになって影に沈んだところでマイボス部屋に転移した。


 リザードシリーズとエレホーンソードと刺身包丁以外のつけていた装備を外し、倉庫にしまう。

 今回は十二階層まで進んだってことで売り物を選別する。

 生狛ダンジョンの最終到達階層十三階層だって言ってたもんな。


 下り階段を探すんじゃなければ、戦い方はある。

 先に進むなら無理でも、階段へいつでも逃げ込める様に階段周辺のみを探索する方法だ。

 十四階層は低層と違い短時間でリポップする設定ではない様だから、分かれ道に気をつけていれば、後方から襲われることなく撤退できる。


 探索を進める上で新しい階層へ移動した時の基本は、ある程度その階層に出現するモンスターの特徴を掴み、戦闘をこなしてから先へ進む。

 探索の進め方の授業で教えられた。そういえば俺は全然実践してないけど。


 最初の裏山ダンジョンの時も「とにかく先へ進む!」って感じでひたすら先に進んだな。ちょっと焦ってたかもしれない、授業内容なんて全然思い出さなかった。


 ヤバイな。実践授業でもやってないぞ。今まで暗闇だったから教官にはバレてないけど、来週からはそのあたりちゃんとやらないと成績に響くかも。

 でも二年度でも七階層までは行ってたから、その辺りやりすぎるのもマイナスに査定されるかな。

 頭で覚えたことって実践するときに繋がらなかったりするんだよな。

 ペーパーテストのためにとにかく詰めこむ勉強やり方したし。


 よし、魔石と牙と爪と角は小分けした分はバックパックに入った。

 毛も衣類圧縮袋を買ってきたから詰め込めるだけ詰め込んだ。

 百均ってなんでもあるんだな。


 今回は二日分なんで数がすごい。放課後探索の分も足してるが、魔石はリソースに回したのでその分はさほどの量ではない。皮を売らずに残すと嵩的には少ないのだ。全くないのも変なので、レアの皮は売ることにする。

 あれ、皮を売らずに残すと嵩が極端に減った。思ったほどの量じゃなくなった。バックパックと手提げ袋一つですんだよ。じゃあ出るか。


 時間も時間なので買取のコンテナの前には結構人がいた。三十分ほど待ってようやく順番が回ってきた。

 今回は買取のほか、スクロールを鑑定に出す。《裁縫》《ウォーターボール》《スマッシュ》の三本だ。《魔力強化》は《ウォーターボール》が手に入ったので習得することにした。


 鑑定は大きなダンジョンなら《鑑定》のスキル持ち職員がいるが、ここの様なところは鑑定のアイテムを使う。一回千円するが一度に出すと二つ目から半額なので、今回は二千百円だな。


「一つはコモン星4の《スマッシュ》、もう一つはレア星2の《ウォーターボールⅢ》、最後がレア星3の《裁縫》ですね。いかがなさいますか」

「《ウォーターボール》と《裁縫》は持ち帰り、《スマッシュ》はオークションに出します」

「では手続きを行いますので、しばらくお待ちください」


 返してもらったスクロールをバックパックにしまって、買取の査定待ちの間に着替えを済ませる。

 表向き武器はエレホーンソードのみなので、ウエポンケースに収納の済ませないといけない。




 その日の買取額は三十四万三千九百円、税金引かれて三十万九千五百十円だった。十二階層分を含んでも皮を売らなかったせいか、金額はそこまでいかなかった。

 

 ランクアップはまだ先だな。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る