第86話 二日目の探索②

 

 

 

《刀術》のスクロールを使うかどうするか悩み、とりあえず倉庫に温存することにした。

 刀型の武器がないのにスキルを取得すると、ますますエレホーンソードが使いにくくなる。刺突特化のエレホーンソードを持っていてもスキルに引きずられた戦い方をしてしまうのだ。


 少し考える時間が必要だ。エレホーンソードを売って刀型の武器を買うのが一番いいんだろうが、良いものがすぐに手に入るというものでもない。刀型は当たり外れが大きいんだ。

 とりあえずマチェットの成長を願って十一階層から下を目指すことにした。

 正村さんの伝手でなんとか……ならないよな。同じ選択授業をとっているだけのクラスメートでもなんでもないし。


「きますにゃ」

「おっと」


 ダンジョンで考え事してる場合じゃない。一旦気持ちを切り替えよう。


 昨日と同様に未踏破区域を探索しつつ、モンスターを倒していく。タマが。

 中ボス戦に参加させなかったせいか、ちょっと鬱憤がたまっているような?

 出会い頭にかたっぱしから瞬殺している。


 お昼にアンゴーラカウのお肉奮発してやるか。残りのお肉と乳でクリームシチューを作ろうと思ってたけどいいか。十四階層でまたドロップすることを祈ろう。


 八時過ぎから始めた十一階層以降の探索は概ね順調だった。

 一度十三階層で戦闘中に罠を発動させてしまい、ギリギリ槍衾を躱すことができた時はほっとしたよ。

 ボス戦いがいでもブルマント装備しておこうかな。裏地が真っ赤なんでちょっと装備するの恥ずかしいんだよ。

 十三階層以降は他の探索者に出会わないし、つけておくか。


 メイン武器はマチェットといきたいところだが、ヘッドバットゴート以外はレアモンスターなので、マチェットは耐久度に不安が残る。

 エレホーンソードはレイピアのように細くはないがエストックのような刃もない。

 近いのはフランベルクだろう。なみなみじゃなくてねじねじの刀身だが。

 やっぱり刀型が欲しいな。


 十三時を少し過ぎた頃に十四階層に到達した。途中宝箱を一つ発見した。

 鋼シリーズを期待したがそこまで甘くはなかった。

 中身はミドルヒールポーションと指ぬきグローブだった。


=【エピック・アーマー】《鹿革のナックルガード》衝撃吸収(中)=


 なんと衝撃吸収効果付き。これが焦げ茶色でなく真っ黒だったら厨二病心をくすぐる一品であったろう。試しに装着する。柔らかい皮が掌に馴染む感じで、武器を握ったときのフィット感が良い。これはめてると指輪はつけられないけどな。

 カシミールリンディアの革かな。いやあれは鹿じゃなくトナカイ だったっけ。


 あとはドロップに関しては素材以外は十階層で解麻痺ポーションが一つと、十一階層で解毒ポーションが一つでた。これって罠の麻痺矢スタンアロー毒霧ポイズンスプレーに対応しているっぽい。なんだか親切設計なダンジョンぽいが当然かもしれない。

 ダンジョンは人を呼び込まねばならない。制覇されても困るがあまり人が寄り付かなかったり、すぐ死んでしまってはリソースが回収できないからだ。

 生かさず殺さずの加減が難しいね。


 そして十二階層で、ミラージュリカオンからアーマーがドロップした。


=【レア・アーマー】《ミラージュケープ》認識阻害(小)=


 フード付きマントかと思いきやケープだった。マントとケープの違いって何?

 ただ認識阻害がついているのが良いな。効果が小ってことはそんなに高くはないけど、気配隠蔽と合わせれば良いんじゃないか。


 しかしケープか。マントと装備部位が重なる。

 ゲームのように装備スロット数があるわけじゃないから、重ね付けも可能だ。

 指輪だって一本の指に一個と決まっていないので二個三個とつけたっていい。

 ピアスとかイヤーカフとかジャラジャラつけるのは、俺は趣味じゃないけど確かアメリカの探索者で耳に装飾品(効果付き)をいっぱいつけてた探索者がいたな。

 まあ重ね着するかどうかは、姿見のあるところで一度試してからにしよう。


 あとはカシミールリンディアから肉が一つ。これは星二つなので協会がライズアップシープより上と判断したということだ。アンゴーラカウの星五つよりは下だけど。そういえば睾丸も星五つだったけ……


 昼食にはカシミールリンディアの肉は置いておいて、予定通りタマにはアンゴーラカウの肉を振る舞うか。

 凝った調理はマイボス部屋では無理なので、シンプルに塩胡椒で良いかな。

 俺も野菜炒めにしよう。味付けは中華出汁を使うかな。


「タマ、昼休憩に戻るぞ」

「了解ですにゃ」



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 初レヴューいただきました♡


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