第20話 八階層

 

 出口の扉の横にソフトボールサイズの水晶玉が設置されている。

 これは「帰還オーブ」と呼ばれていて、ボスがいないときだけ使用できる転送装置だ。

 水晶に触れ、〝帰還〟と唱えるとダンジョンの入り口まで移動できる。

 帰還用なので、帰りしか使えない一方通行だが、これがあると帰り道が短縮できる。

 これ帰りだけでなく行きもあったら便利なのにな。


 今は先へ進むのでスルーだ。

 扉をでて階段を降りると六階層。ここも洞窟タイプなのは変わらない。俺は刺身包丁だけを手に、先へ進む。


 六階層ではスキップゴートという跳ねる山羊。

 ぴょんぴょん飛び跳ねながら頭突き攻撃をかましてくる。山羊だけどアンゴラみたいでフッカフカの毛がドロップする。これ何気に高額取引されるドロップ品なんだよな。

 でもジャンピングワラビーの腹袋のおかげで、問題なし。回収回収っと。


 爺ちゃんの包丁代金、早く貯まりそうだな。


 七階層出現モンスターはビープシープ。ビービーうるさい羊だ。てかもふもふダンジョンか、ここ。

 それに攻撃が突っ込んでくるのばかりだ。魔法攻撃とかないので楽だけど、そう思い込んでると突然攻撃方法の違う奴が出てきたりすることもあるから、注意は怠らない。


 ドロップ品はやっぱり毛皮と魔石で、スクロールは最初以降でてない。アイテムも宝箱のローポーションだけだ。

 探したいのは山々だけど、今回はレベルアップ優先。できれば十階の中ボスもしくはボスを倒したい。


 この二日でかなりのモンスターを倒した。

 6、7階層のモンスターは実習中に遭遇するモンスターより上だ。この調子で行けばクラスメートより強くなれると思う。

 八階層へ下る階段を見つけ、今日の探索を終わることにした。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 3日目は流石に低層ではリポップしていたが、極力戦闘を避け進む。

 この三日で随分レベルが上がったと思う。走る速度がかなり上がり、息も上がらず走り続けることができた。

 おかげで三階層までは遭遇したモンスターを振り切ることができている。

 ラビットや小爪リス、ビッグフットは素早いものの長距離移動に向かないタイプだ。

 ツインテールキャットのみ戦闘になったが、それでも二匹に遭遇しただけで五階層に到着。中ボスは復活していない。復活まで二十四時間以上だな。


 中ボスは最短二十四時間で復活する。最長は不明だ。一年経っても復活しないのがあるらしく、検証中なのだ。


 6、7階はリポップしてないみたいですんなり八階まで進めた。

 だが、八階は低層より広く、罠も出始めた。

 隠しスイッチ踏んだら石が落ちてくるタイプと、落とし穴と言うほどではないが、20センチほど陥没して躓いてしまうタイプ。戦闘中だと命取りである。

 八階層ではモンスターを発見したら、少し後退して安全地帯で戦闘を心がけた。


 現れたモンスターは驚異度5のハウンドウルフ。灰色の狼(?)で《ライト》のスクロールを落としたステップウルフより上位のモンスターだ。

 狼なのにハウンドとはこれいかに? 狼なのが犬なのか、一体誰が名付けたんだろう。


 ここまでは教科書に載ってる出現率の高いモンスターばかりだ。

 唯一乗ってなかったのはジャンピングワラビーだな。

 モンスター図鑑になら乗ってるだろうけど、あれバカ高いから購入してない。

 毎年新しい版が出るし。最初は第○版ってなってたけど、いつの頃から年数に変わって2020年度版とかになってるしな。


 ウルフは場所によっては群れというか、複数で出現する。その場合、連携を取るので非常に厄介だが、単体ではそれほどでもない。

 嘘です。


 突っ込んできたところを躱しつつ刺身包丁を下から振り上げたが、避けられました。

 なんと空中で体を捻られた。

 大きさは大型犬ほどもある。早めに避けたことで距離が開き、向こうにも避ける余裕を与えたか。

 腰にさしていた鉈を引き抜き両手に持つ。どちらも刃渡りが短く、もう少し長めの武器が欲しかったな。

 しかし、ないものは仕方ない。





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