第120話 合間に

 





 スチールアームハンマーとマチェットのウエポンケースを《倉庫》に収納したことで、荷物はバックパックにエレホーンソードのウエポンケースだけになって身軽になった。


 駅の近くのコンビニを見つけて、ドリンクを買おうと中に入る。そこで宅配便のマークが目についた。


 うーん、学校の粟嶋先輩宛に採取した鉱石とインゴットを送っておくか。今からだと明日には届くだろうし。

 サイズは小さいが重さが五キロを超えていたがまあいい。あとで連絡入れておこう。

 《倉庫》から粟嶋先輩に渡す予定の土嚢袋をバックパックに移す。この土嚢袋で送れるかな。いや一応箱購入しよう。


 発送手続きを終え、奥の冷蔵庫に向かう途中棚の商品に目が止まる。


「最近のコンビニはペット用品も売ってるのか」


 しかし残念なことにシャンプーは置いてなかった。

 あったら買ったのにな。


 そして電車を乗り換え、知良浜に到着した時には五時を回っていた。

 送迎バスは時間が合わなかったので、タクシーを使うことにした。

 贅沢になったな、俺も。


「ようこそいらっしゃいました」


 玄関を入ると着物姿の女性が出迎えてくれる。


「予約していた鹿納ですが」

「はい、ではチェックインの手続きをしますので、こちらにおかけください」


 案内されてフッカフカのソファに座ると、中居さんがおしぼりとウエルカムドリンクをさっと差し出す。

 あったかい梅昆布茶だ。お菓子もついている。

 若山の有名銘菓か○ろうの横に梅干しが。いや梅干しじゃなくって蜂蜜漬けなのかな。塩分と糖分が疲れた体に染みるなあ。


 ここはそこそこお高い温泉旅館だ。俺は露天風呂付きの個室を予約していた。よくゴールデンウイークの予約が取れたと思う。たまたまキャンセル空きがあったのだ。

 一泊二食付きで三万円なり。




「ふい〜〜」


 ベランダに壺を置いたような露天風呂で、景色もあんまり見えないが、それでも沈む夕日とちらほら瞬き出す星空を眺めながら入る風呂はいいな。

 二日風呂に入ってなかったから結構汚れてたかも。

 寝る前には大浴場にも行ってみるかな。


「ふむ、あったかいですワン」

「あついですにゃ」


 誰にも見られない部屋風呂なので、タマとポチを洗ってやった。人間用のボディソープよりシャンプーの方がいいかなと、備え付けのシャンプーを使う。

 炭シャンプーとオレンジシャンプーと馬油シャンプー。なんで温泉旅館ってこういう品揃えなんだろうな。

 流石にタマとポチに臭いのきついのはダメだろうと、炭シャンプーにした。

 あんまり毛が抜けないのはモンスターだから? まあそのほうがありがたいけど。

 タマの方は熱いのは苦手なのかな。じっくりと浸かることはせず、浴槽の端っこでほぼ身体を外に出している。

 ポチの方は俺の膝の上で首まですっぽり浸かって温泉を堪能していた。


 どちらも長毛種じゃないから乾かすのにもさほど時間がかからず、と言っても一時間は風呂にかけた。

 その間に食事が運ばれている。部屋食にしたんだよ。ゆっくり食べるためにな。

 一旦タマとポチには隠れてもらって、居間に戻るとテーブルには豪華な食事が並べられていた。

 お造りに天ぷらと定番の料理に、和紙を器にした鍋にはお肉と野菜が入った鍋になっている。


「こちら火をつけてさせていただきますね。この砂が落ち切ってから蓋をお取りください」

 

 いろいろメニューの説明をしてから中居さんが去っていった。


「よし、いっただっきまーす。まずはお刺身〜」


 こんな贅沢していいのか、いいよねちょっとくらい。ランクアップしたお祝いってことで。

 ランクアップ前に予約してたけど。


「タマとポチもお造り食べる?」


 実際、ダンジョン外の食品は食べてもタマたちの栄養というか力にはならないんだけどな。


「ご相伴に預かりますにゃ」

「かたじけないですワン」


 汁椀の蓋と空いた皿にお造りと鍋の中のお肉を入れてやる。


「肉は熱いから気をつけろ」

「う、うまいにゃ」

「ハフ、あつ、うまいワン」


 二匹が食べるのを眺めつつ、八寸に箸を伸ばす。綺麗に飾られているが、味もなかなか。


「今度親父たちをどこかの温泉に連れていってやりたいな」


 農家というのは年中無休だし。家族全員で出かけるとなるとそう遠くない場所で一泊くらいしかできないけど。


 竜神温泉か斗津川温泉ならいけるよな。観光とかしなくっても美味いもん食って温泉に浸かるだけでもリフレッシュできる。


「そのためには稼がないとな」


 明日行く予定の知良浜ダンジョンは出現するモンスターの種類が多い。

 フィールドタイプなのだが、一つの階層に何種類ものモンスターが出る。

 大坂や境ダンジョンのように階層を進むと増えていくタイプではなく、一階層目から数種類のモンスターが出るのだ。

 四階層までは大体同じようなモンスターが出る。というかフィールドも同じ系統で、少しずつ数が増える感じだ。

 ボス階層はボス部屋のみなのだが、六階層へ降りるとフィールドのタイプが変わり、出現モンスターも変わる。


 一階層から四階層までは草原タイプで動物系モンスターが多い。六階層から九階層までは森タイプで動物系プラス爬虫類系モンスターも出る。そして節足動物系も。いわゆる昆虫とか蜘蛛とかだな。

 知良浜ダンジョンは女性探索者には不評なのだが、そこから取れる素材はありがたがられるダンジョンなのだ。



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 体調不良にて更新滞りました。

 そして異様に眠いのですが、春眠暁を覚えずというやつでしょうか?

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