第119話 ランクアップF


0時更新に戻ってきました。

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 査定待ちの間に着替えを済ませる。中途半端な時間なのですいててよかった。

 二日風呂に入ってないからちょっと臭うか?

 ま、アパートは浴槽ないから、実質ひと月風呂に入って無くてシャワーだけど。


 査定終了を知らせるモニターに、俺の番号があったので空いているカウンターへ行き、免許証と番号札を渡す。


「鹿納様、オークションに出品されていた品が落札されております。こちらが明細になります」


 先週生狛ダンジョンで出した《スマッシュ》のスクロールは二十四万円で落札されたようだ。《スラッシュ》より需要がないかと思ったが、二万円上だった。

 税金10%と手数料5%引かれて二十万四千円か。


 タブレットとペンを差し出されたのでペンを受け取る。


「確認していただいたらこちらにサインを、受け取りはどうされますか」


 サインをしてタブレットを返しながら返答する。


「チャージでお願いします」

「承りました」


 職員はキーボードをカタカタ叩くと、タブレットをこちらに向ける。

 そこにはチャージ金額と【同意する】【同意しない】という文字をタップする場所がある。【同意する】をタップすると、「チャリ〜ン」という音がなる。

 それが終わると、また紙を差し出された。今度は査定表だ。


「こちらが今回の買取査定一覧です」


 今回は三日で十六階層まで到達したものの、倒したモンスターの数は六十に届かなかった。生狛だと二日で百を超えていたことを考えると、三分の一ほどになる。途中採掘もしたから、探索意外にかけた時間があるというのもあるが、それでも少ないな。

 やはり人気があるダンジョンは探索者が多いから、エンカウント率が下がるな。

 それにアイテムがスチールアームハンマーとミドルポーションの二個だけというのもあり、売りに出すアイテムがない。


 採掘した鉱石も合わせて合計金額が十万六千円で税引後は九万五千四百円か。

 三日分としては少な……日給三万円だとしたらまあまあ?

 でも装備とか色々諸経費引いたら少ないな。


「えっと、四万円チャージで残り現金でもらえますか」

「はい、少々お待ちください」


 そして先ほどと同じ繰り返し。「チャリ〜ン」という音がなる。


「鹿納様は納税金額が十五万円を超えましたので、探索者ランクがFに上がりますね。おめでとうございます」

「っ、おめでとうございます!」


 受付の後ろを通り過ぎようとしていた職員さんが、足を止めてお祝いの言葉を大声でかけて慌ただしく去っていった。

 忙しいんだからいいのに。

 しかしそれを聞いて周りからもお祝いの言葉がかかる。


「「「おめでとう」」」

「「ランクアップ、おめー」」

「あ、ありがとうございます」


 後ろの探索者からも声がかかり、礼を言う。これ慣れないなあ。


 そして最後に別の職員がカートをゴロゴロと押してやってきた。

 俺のスチールアームハンマーを積んでいる。


「鑑定結果はこちらです」


 そして三度タブレットを差し出される。そこには〝レアウエポン・スチールアームハンマー《アームインパクト》の固有スキル付き〟と書かれていた。

 

「ウエポンケースはハードケースタイプとソフトケースタイプがありますが、どちらにされます?」


 ちゃんと用意してくれていて、カートに積まれている。ちょっとギターケースっぽい。ハンマーだけじゃなく空き部分に荷物が詰められるようにもなっている。ここはハードケースタイプにするか。キャスターがついてるから引いていけるし。

 バックパックやエレホーンソードのウエポンケース背負って、さらにハンマーケースは背負えないわ。


「ハードケースタイプで、チャージ分から引いてください」

「はい、九千八百円になります」


 簡易キーだから安いな。いやキャリーケースとして考えたら高いのか?

 全ての処理が終わり、現金と明細書を受け取った。


【本年度納税額合計】【159,980円】


 まじか。一ヶ月で百五十万円稼いだんだ、俺。


 ちょっとニマニマしながら事務所を出て駅に向かって歩き出した。前から人が歩いてきて思わず頬を抑えたよ。


 探索者免許を取ってひと月でランクがFまで上がるやつはザラにいるが、俺の場合学校へ通いながらのいわゆる〝週末探索者〟なのだ。フルで探索者をやっている連中よる断然探索時間が短い。


 それもこれもダンジョンマスターというズルっこのおかげではあるが、モンスターと戦ってドロップ品を手に入れるという行為自体はずるをしていない。

 ドロップでウエポンやアーマー、スクロールを手にいれられるかどうかは運なのだ。

 これからは裏山ダンジョンを使って、多少操作はするけど、今までのドロップに関しては自分でどうこうしてないからな。 


 そう思えば俺が探索者免許を取るきっかけを作った連中も、可愛く思えてくるので不思議なもんだ。


 実際実力的にも前橋たちとは差がついているだろうな。

 ゴールデンウイーク開けたら中間テストに向けて皆必死になるだろう。

 五月末の中間テストはダンジョン外施設での体力テストもある。俺もどれくらいレベルアップしてるかな。


 さて、駅のロッカールームで荷物を預けるふりをして、ウエポンケース二つを《倉庫》収納する。

 奥の人のいないところでも監視カメラはあるから、ロッカーの中に押し込んでからの収納だ。

 

 さ、これで身軽になったから電車で知良浜へ向かおう。

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