第121話 知良浜ダンジョン1日目①
みなさま気遣いの温かいお言葉ありがとうございます。m(_ _)m
┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼
お高いだけあって朝食も美味かった。流石に朝食は部屋では無く、旅館の中の食事処になるので、タマたちには隠れてもらった。
次はペットと泊まれる宿がいいかもしれない。
次と言っても夏休みまで無理だけどな。
宿から知良浜ダンジョンまでは少し距離がある。駅まで戻ればバスがあるが、面倒なのでタクシーで移動だ。
ここ知良浜ダンジョンはドロップが色々な物に加工できる素材として有益なのだが、地理的に若山の端っこということで、交通の便もさほど良く無く一般探索者に人気がない。車が有れば別なんだが。
だが探索者が少ないと言うわけではない。ここは企業所属の探索者が多いのだ。
俺が親父たちからもらった五菱マテリアルのリザードシリーズの素材である、リザードもここには出る。
その他、総合服飾クラブの面々が欲しがりそうな、糸をドロップするモンスターも。
もし手に入ったらバックパックとか作ってもらえないかと思っている。
ぽっちゃり部長が「バックパックも研究対象」と言っていたので、素材をチラつかせ、げふんげふん。提供すれば俺の思うような物を作ってもらえるだろう。
そもそもここを選んだ理由はお袋の一言があったためだ。
「コートもいいけど、その前に夏よね。夏の畑仕事は暑くって、涼しくなるものってないのかしら」
一般向けには販売されていないが、ダンジョン素材を用いたアンダーウエアがある。雪山エリアなどの極寒地仕様や熱帯や火山エリアなどの極暑地仕様など。
その極暑地仕様用いられる素材が、この知良浜ダンジョンで手に入るのだ。
十一階層以下まで潜る必要があるが、三日有れば大丈夫と思う。
皮細工ではないので佐々木さんにはお願いできないが、布加工できる《裁縫士》を紹介してもらおうと思っていた。
見習いの作品になるが、探索者じゃなくってお袋たちが使う分にはクラブメンバーで十分じゃないかと思う。
まあ腕前の程はまだ見てないのでなんともいえないが、そんなに悪くはないはず。悪かったら学校にいないはずだから。
まだドロップすると限ったわけじゃないので、とらぬ狸のなんとやらだけどな。
事務所に行くと揃いの装備をつけた団体さんがいた。あれが企業所属の探索者だろう。装備は支給されるので制服みたいなものか。
ちょうど物資をベースに運ぶ輸送部隊みたいだ。
ここは五階層ごとのボス部屋前に、何社かの企業がベースを作っている。
安全地帯の占有について一般探索者から苦情が出て揉めたこともあるそうだ。
日本では未だダンジョン内の土地については〝持ち主〟のいない土地扱いされているため、占有権を主張して問題になったことがある。
この辺りはダンジョンの所有問題と関係して、現在は協会が長期(三十日以上)の、またスペースの二分の一以上の占有を禁止しており、違反した場合探索者資格が剥奪される。
学校のあるダンジョンは協会所有のダンジョンなので、その辺りは関係ない。
ここもいくつかの企業が所有権を争ったが、結局所有せず素材をとりに自社の探索者を派遣した方が良いと言うことで決着がついたようだ。
タクシーから降りてここにくるまでにエレホーンソードのウエポンケースを出しておいた。今はマチェットと両方バックパックにくくりつけてある。
事務所で二泊三日の探索申請を出し、更衣室へ移動する。
つけるのはリザードシリーズだが、鹿革のナックルガードと緑鋼のバンプレイスも装備する。赤鋼のレガースもあるが、ちょっと色味が何色もあって派手になるのでつけてない。
俺が更衣室から出てきたときには、企業所属の探索者はいなくなっていた。
俺もいくか。
一階層は草原タイプ。地図というほどのものはない。ただっぴろい原っぱだからな。大坂ダンジョンとはちょっと違う。
くるぶし丈から膝丈の草が生い茂り、ところどころ踏み固められた獣道がありそこを進む。
一応見渡せば戦闘中の探索者もいる。一階層は階段から対面の端までは二キロメートルほどあるのだが、戦闘の際、大きな音を出すと近くのモンスターが集まってくるので注意がいる。
基本一階層は群れず単体で行動しているし、行動範囲は広くないが移動しないわけではない。
一階層から四階層までで比較的遭遇率の高いものは脅威度1のオニネズミ、ラビット、ブラックミーアキャット。脅威度2のリトルフォックス、スピンスワローなどなど。他にも遭遇率の低いモンスターもいるが全てコモンモンスターだ。
鳥系のスピンスワローが混じっているが、鳥系は結構な速度で突っ込んでくるので要注意だ。
一階層は早足で駆け抜ける。一応獣道に沿って移動すれば下り階段へたどり着く。途中別れ道もあるがほぼ直進なので間違えることはない。
『マスター、飛んできますにゃ』
スピンスワローの接近にタマが注意を促す。
まっすぐ突っ込んでくるスピンスワローにマチェットを構える。
「ッシ!」
斬りつけるのではなく、面の部分ではたき落とすようにマチェットを振り下ろす。スピンスワローをはたき落とすことに成功し、地面に叩きつけられたことで呆気なく絶命した。こういうタイミングがうまく合わせられるのも《戦士》ジョブの効果だな。
黒い粒子が消え後には羽が残った。
【コモン・アイテム】《スピンスワローの風切羽》スピンスワローの風切羽=
名称と説明が同じなんだが。まあコモンは特殊効果とかないからな。
スピンスワローの風切羽は弓矢とかに加工するから買取はあるけど100円くらいだったような。一応持って帰るか。
ジャンピングワラビーの腹袋に突っ込んで階段を目指した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます