第90話 話し合い

 

 ♡1万超え、ありがとうございます。楽しんでいただければ嬉しいです。

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 ダンジョン外施設には自習室というものがある。

 本当はただの〝多目的室レンタルルーム〟なんだけど。


 寮で落ち着いて勉強ができない生徒のために、生徒であれば無料で借りれる小部屋である。ダンジョン外施設なので六時の制限もない。

 大きさは多人数で会議ができる部屋から、少人数で使える部屋まで色々でPCが設置されている部屋もある。部屋サイズバラバラなところがカラオケルームみたいな感じ?


 一般探索者も借りることができるが、生徒の専用で一般が借りられない部屋は図書室と同じ階にある。

 ちなみにそこには外部サーバーにつながっていない協会端末がある。

 生徒専用の窓口は図書館司書が兼ねているので、一応終了時間いっぱいまで借りるよう手続きをする。


 図書館の入り口で待っていると、待ち人が……


「あ、鹿納氏、お待たせしたか」


 両手に紙袋を抱えた佐々木月子だった。


「あー、肝心の待ち合わせ相手がまだきてないんだ。悪いが」

「あっれー。ルナぴんじゃん。工房棟以外で会うのって珍しーやん」

「あ、昌邑氏」


 待っていた俺ではなく、佐々木月子に声を掛ける正村。そこでようやく俺に気がついた様だ。


「なんやルナぴんとヤマぴん知り合いなん?」

「そういうそっちは知り合いなのか」

「うん、親同士が知り合い。それにお互い科目は違うけど工房棟ではよく顔を合わすし」


 佐々木は正村の言葉にピコピコ頷いている。


「あ、もしかしてルナぴんもヤマぴんから素材を分けてもらうことに?」

「我だけでなく、昌邑氏も?」


〝も〟って決定事項みたいに。しかしここで大声で話すなら部屋を借りた意味がなくなるだろ。


「とりあえず自習室借りてるから入ろうか、二人とも」

「えー個室に美少女二人連れ込んで、何する気ぃ?」


 正村がニヤニヤ顔で佐々木の後ろに回る。


「……帰っていいか?」

「ごめん、まじめにします」

「わ、我も……」


 ほら、入り口とはいえ図書館で騒ぐから司書さんが睨んでるじゃねえか。







「とりあえず、自己紹介から」


 そう言って俺が切り出すと、二人とも椅子の上で姿勢を正しこっちを注目する。


「鹿納大和、探索科三年度生四月二日生まれで十八歳になった。一般で探索者免許を取得して今はGランクだ」


 俺が終えると次は正村が手をあげた。


「正村明希緋、サポート科技術学部鍛冶専攻、七月十八日生まれなのでまだ十七歳。将来は刀鍛冶を目指してます」


 最後に佐々木。いや声小さいって。


「……佐々木月子でしゅ、です。サポート科二年度生で来年は技術学部細工専攻するつもりです。将来は皮だけじゃなく色々なものを細工できる細工師になりたいです。九月十四日生まれなのでまだ十六歳です」


「で、まずは正村からだな。俺は刀型の武器が欲しいので、素材を提供すれば加工費なしで作ってくれるのか」

「代わりに座学を教えて欲しいってお願いしたし」


 前にも言っていたが正村は詰め込み勉強が苦手というか、長時間じっと座って勉強するのが苦手という。

 それって教えても難しいんじゃね?


「なあ、正村はゴールデンウイークの宿泊研修申し込んだか?」

「あれ探索科以外も参加できるけど、サポート科からの参加は少ないで。ゴールデンウィーク中は、工房が解放されるよって」


 隣で佐々木もペコペコ頷いている。


「俺の主観というか、レベル上がると身体能力が上がるのは当然なんだが、記憶力とか判断力とかも上がるっぽいんだよ。俺ここのところダンジョンに潜って急激にレベルアップしたから、ちょっとそういうの実感してるんだ」

「なん、やて」


 学校の授業ではモンスター討伐数はさほど稼げない。というかパーティーだと頭割りだからな。

 俺は今回ソロで一気に数を稼いだこともあり、身体能力の変化だけでなくそっちの能力上昇も感じていた。


 スーパーで買い物をするとき、レジ前に合計金額計算できてたりとか、プリントアウトした地図を見直さなくても覚えてたりとか。


「鍛冶をするにも体力は必要だし、誕生日が七月なら当分自前で免許習得もできないだろ。宿泊研修はレベルアップできる機会だと思うぞ」


 レベルアップでは身体能力の上昇しか取り沙汰されてないが、脳の機能が上がるんだからそっちもあるよな。


「うち、今から申し込んでくる」


 立ち上がる正村を抑え、話を続ける。


「ちょっと待て、刀の方はどうなるんだ」


 正村は目をシパシパ瞬いてから椅子に座り直した。


「刀型武器の作成なんやけど、うちだけやったら無理なんで、先輩に手つどおてもらうことになるんやけど……」


 ちょっと言い淀む正村。彼女は三年度生でまだスキルを持っていない。父親がキープしている《鍛冶師》は三年度を終了しないともらえないと言っていた。



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 身体能力のように定期的に測定しないし、急激な変化ではないので頭脳関係の能力上昇についての自覚は薄いのです。

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