第91話 刀型武器作成について

 

 

 探索科と違ってサポート科は学部によって必要なスキルが違う。

 絶対数が少ない医術部においてはレジェンド星5の《治療師》スキル付与は年度中一人あるかないか。次善のエピック星5《治療魔法》ですら全く出回っていない。

 よくてレア星5の《治療キュア》や《回復ヒール》だが、これ単品だとよくてミドルポーションほどの効果しかない。

 それでも探索者にはありがたいスキルだが。

 薬師のスキルに関しては治癒師系よりドロップ率が高いので、そこまでではない。


 他の技術部では希望すれば低ランクスキルが一つ付与される。

鍛冶の場合は下からコモンの《加工》レアの《鍛冶の知識》《鍛冶》エピックの《鍛治師》レジェンドの《剣鍛治》ゴッドの《刀鍛冶》となる。

 ちなみに《鍛治師》は《鍛冶の知識》と《鍛冶》を両方備えたスキルだ。

 鍛冶に限らず《加工》は全ての製作の基本となるスキルで、職業スキルにはついている。これがないとダンジョン素材が扱えないのだ。

 あれ? 俺ダンジョン食材扱えてるよね。


『ダンジョンマスターがダンジョン素材を扱えるのは当然ですにゃ』


 俺はわざわざ《加工》スキル取る必要はないのか。そして当たり前すぎてあえて情報としてなかったようだ。


 学校側から無償で得られるのはこの《加工》スキル。レア以上は有料。と言ってもゴッドは手に入らないが。


 正村の父親は娘が勉強そっちのけで鍛治に勤しむことがないよう、高卒資格をとるまでスキルを渡さないことにしたんだろうな。


「粟嶋先輩は《鍛冶師》スキル持ちなんよ。本人はゆくゆくは《剣鍛冶》狙ってるけど、うちと同じで刀型作りたいってお人やねん。素材提供してくれるんやったら手つどーてくれると思う」

「本人に確認せず安請け合いしていいのか」


 先にその粟嶋先輩とやらと話をした方がいい気がする。


「最終的には会うて話してもらわなあかん。でも刀に関しては粟嶋先輩は譲れんもんを持っとるから、最終的にはヤマぴんしだいやと思う」


 でもそれって作るのは正村じゃなくて先輩ってことになるんじゃあ。


「しゃあない。うちまだスキル持ってへんよって。でも作りたいもんは作りたい。せめて助手としてでも参加したいんや」


 正村が俺の心を読んだ? というかわかってるってことか。


「なんかヤマぴん出汁にしてるみたいで申し訳ないけど」


 誰が作っても、俺が刀型武器を手に入れられるならいい。というかスキルなしの正村が作るより、その先輩が作ってくれた方がいいものが出来上がるので、否やはない。


 正村とチャットアプリのフレ登録をして、俺が提供できる素材の一覧を書き出したメモを転送した。


「近場のダンジョンで手に入る素材で、必要なやつがあれば取りに行くことも可能だ。あんまり深い階層のは無理だけど」


 生狛ダンジョンは十二階層まで行ったことにしてあるから、素材は今手元になくても放課後に取りに行けるから、一通りリストアップしてある。


「そうだ、再利用ってことなら俺が使っていた鉈とかも鋳潰して使えるか」


 リストを見てニヤニヤしていた正村が顔を上げる。


「どれくらい使うたやつ?」

「どれくらいって日数は短いけど、十階層の中ボス戦で折れたやつ」

「「え?」」


 正村だけでなく佐々木も揃って驚きの声をあげた。


「……中ボス」

「ヤマぴん、外でパーティー組んでんの?」

「いや、ソロだけど」

「……ソロで、中ボス」

「ヤマぴん、ソロで中ボス倒したん? なんでHクラスにおるんよ」


 クラス決めは前年度の成績だからな。俺のレベルアップは4月始まってからのことだから。来年は上クラス入りできると思う。まあ来年在学してればの話だけど。


「ソロだと討伐数が増えるからな。その分危険も多いけど」


 ただ俺にはマスタースキルがあるし、タマもいる。戦闘、索敵、警戒のどれをとってもタマは中級探索者より頼りになる存在だ。


『お任せくださいにゃ』


 念話とともにドヤ顔のタマのイメージが伝わってきた。


「じゃあそういうことで、その先輩と話し合って必要な素材を連絡してくれ。他にも必要なものがあるなら相談に乗る。っと次は佐々木さんだな」


 正村は話が終わって、速攻出て行くかと思ったら、そのまま座ったままだ。俺が視線を向けると。


「まあ、ヤマぴんのことやから、間違いは起こらへんと思うけど、下級生とレンタルルームで二人っきりにするっちゅうんは、外聞悪いやろ」


 そこまで考えてなかったけど、佐々木は正村の言葉に顔を赤くした。


「まあ、いてくれるんなら。じゃあ佐々木さん」

「なんでうちは呼び捨てやのに、ルナぴんはさん付けやの」

「さ、佐々木で、佐々木呼び捨てでお願いしましゅ」


 あ、また噛んだ。なんかペコペコと頭を動かすのだが、小動物のようだ。


「えっと、じゃあ佐々木。確か親父さんからは素材を協会買い取り価格でって話だったと思うんだが」

「え?」


 なぜかショックを受けた顔を見せる佐々木。


「き、昨日妹さんから、連絡もらった。父さんのデザインじゃなくって、私のデザイン……」


 持ってきていた紙袋からクロッキー帳を取り出し、パラパラとめくると一枚のデザイン画を指し示した。


「妹さんの、希望……」


 そこには襟と袖口と裾にファーをあしらった、ゴスロリ調のコートが描かれていた。


「素材提供するから、ほ、ほかより、優先して作って欲しいって」


 ひーなー!



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 Ⅳ章最後まで連投できそうです。一応書き終えて後は細かいところの修正作業に入ります。100話にするつもりが101話になってます。

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