第103話 命名
さてと、探索者の排出まで一時間ほどかかる。その間ずっとここで待っていると終校時間を過ぎてしまう。
「えっと、小狼……じゃああれだな。何か名前がいるよな」
そういうと小狼が俺の前におすわりして尻尾をブンブン振っている。
「えーっと、黒いからブラ……いやそれも安直すぎるか……」
名前に悩んでいると、ふと視界にタマが毛繕いしている姿が。
「あー、ポチ。名前はポチだ」
「吾輩、ポチですワン」
そんなにいい名前とは自分でも思わないが、すごく喜んでいるのでよしとしよう。
猫がタマなら犬はポチだろう。
「一旦帰るけど、後でまた戻ってくる、あーポチもガーディアンだから俺から離れられない?」
「二体おりますからどちらかがおそばにあれば、片方は離れることができますにゃ」
シュタッと、俺の横にやってきて右足に体を擦り付けるタマ。
「マスターにはタマがついておりますにゃ。他は必要ないですにゃ」
ふふんとばかりに、上から目線でポチに告げるタマ。
「なんですと! 吾輩がマスターをお守りするのだワン」
「リソース不足で何ができるというのかにゃ」
なんだかポチの一人称が〝吾輩〟ってとこに驚きすぎて、思考が変な方に……
そんな場合じゃないんだが、ポチとタマのやりとりががおかしくないか?
「マ、マスター! 吾輩にリソースの緊急チャージ許可をくだされワン」
突然ポチがタマとは反対の左足に縋り付く。うわ、かわええ! 子犬がハッハしながら後ろ足立とか。
「ここはお前のダンジョンだにゃ、処理はお前がするにゃ」
負けじと今度はタマが俺の肩に飛び乗ってきた。そしてさらに上から(物理的にも)目線でふふんとポチに告げる。
そう、タマのいう通りここは元々ポチが管理するダンジョンなので、処理はポチが実行中なのだ。タマがそれをするにはポチを吸収し、生狛ダンジョンのガーディアン能力を引き継がなければならない。
そうするとガーディアンが一体になるので俺から離れられず、俺も生狛ダンジョンから離れられない。それは困るのだ。
「こらタマ。そういうのはやめろ」
タマを抱えるとしゃがんでポチの頭を撫でる。
「時間内に学校から出なきゃならないからな。一時間くらいで戻ってくるからあとは頼む」
くぅ〜んと鳴く小狼がかわいい、ってそれは置いておく。
生狛ダンジョンの権能を手に入れ、できることが増えた。戻ってくることができるスキル《ギミック作成》だ。本来はダンジョン内にトラップなどを作る能力なのだが。
「こいつを使う」
タマを下に下ろし、俺は手のひらを上に向ける。そこに黒い粒子が集まり、二枚のプレートが現れた。
「転移プレートだ」
それはゲームなどでもよくある、移動用のアイテム。対になったプレートは片方に乗ると発動し、もう一つのプレートに移動できるもの。扉や階段にかわるダンジョン内の移動手段としては、割とありふれているのだが設置するにはスキルランクが必要だ。
生狛ダンジョンは罠ダンジョンと呼ばれていたくらいだったため、《ギミック作成》のレベルが高い。おかげで転移プレートを作成できた。
これを一つマイボス部屋におき、もう一つは俺のアパートの自室に置く。
ダンジョン外では魔素の補給ができないので、外においても発動しないのだが、そこは俺の魔力で補える。2、3回使ったらダンジョンに戻して魔力補充しないといけないから常設はできないが。
これで学校からじゃなくてもダンジョンへ行けるぞ!
「そんなわけでポチ、申し訳ないがあとは頼んだぞ」
「了解しましたワン」
寂しそうなポチには申し訳ないが、終校に間に合わなくなるので、すぐマイボス部屋に転移した。
アパートに戻ってすぐに転移プレートを……どこに置こう?
ワンルームでそんなにスペースはないんだが、靴のこともあるから
そして早速使用してアパートからマイボス部屋へ。なんかちょっと《階層転移》とは違ってた。プレートの上に乗るとプレートが淡く発光し、その後転移した。一瞬ではなく一秒ほど時間がかかるようだ。
そしてマイボス部屋からは《階層転移》で生狛ダンジョンのボス部屋へ、そして歩いてコアルームへ移動になる。
通常の《階層転移》じゃコアルームへ直接行けないんだよな。
「ダイバーの排除を完了しましたワン。次にゲートを封鎖しますワン」
ちょうど戻ってくるのに一時間かかったようだ。
「ポチ、ご苦労様」
俺がコアルームに行くとポチが駆け寄り、ブンブン尻尾を振ってくる。
子犬、じゃなかった小狼かわええ。思わずしゃがんで撫でる。
うちも昔柴犬を飼っていたんだが、亡くなってからお袋が新しい犬を飼いたがらず、何も飼ってないんだよな。
そういえばひなが「タマを飼う」と言い出した時何も言わなかったが、里親探すつもりだったかも。
「〝吸収〟にはどれくらいかかる?」
「モフィ=ルーマス全十五階層をリソース化するには現地時間で六十二時間ほどかかりますワン」
おお、リソース化に三日もかかるのか。
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黒いから〝ブラッキー〟と付けようとして、安直とい思い直し、安直さマックスな〝ポチ〟にする大和のネーミングセンスw
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