Ⅴ章

第102話 新たな……

 Ⅴ章です。ストック全然ないので不定期更新です。

┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼



 タマがじと目で俺を見上げる。


「権能を受け取れば、このダンジョンのモンスターが辞典に追加されますにゃ。そうすればアンゴーラカウをに配置できるようになりますにゃ」


 さっきの呟きに呆れたように答えるタマ。


 モンスター辞典のページを増やすには魔石を取り込むんだと思ってた。

 魔石をリソースとして取り込むと、そのモンスターのページが辞典に追加される。そうやって辞典のスキルのレベルを上げるのだと思っていた。

 実際生狛ダンジョン四階層までのリトルシリーズ四種が増えたのだ。

 リソースはマイナスになるが、ドロップ率をコントロールすることでリトルシリーズの素材は今後いくらでも手に入れられる。

 だが増えたのはその四種のみ。それはページを増やすために吸収する魔石の数が問題だっだ。

 コモンモンスターなら十個なので割とすぐだった。しかしレアモンスターだと必要数は百個、さらにエピックは千個と桁が上がっていく。千個の魔石を手にするにはドロップ率50%だとしても二千体を倒さなければならない。

 それってどんな苦行なんだか。


 ダンジョン制覇してダンジョンの権能を受け取れば、そのダンジョンの魔物辞典に記載されているものを得られるのか。よかった、魔石吸収以外の手があって。


 うんうんと頷いていたらモフィ=ルーマスのダンジョンコアが繰り返し催促してきた。


『ダンジョンマスターの権能をお受け取りください』


 そっとコアに手を触れると、二度目となるお知らせ。


『モフィ・リータイマスター、カノウ・ヤマトを認識しました。モフィ=ルーマスのダンジョンマスターの権能を譲渡します』


 アナウンスが終わった途端、ダンジョンコアが金色の粒子に変わっていく。これも前回と同じく金色の粒子が渦を巻きながら立ち上り俺の中に入ってくる。


「うぐっ」


 頭痛と胸を締め付ける様な苦しさが押し寄せてくるものの、前回よりは幾らかはましだ。


『ダンジョンマスターレベルが上がりました。マスタースキル《魔物モンスター辞典M》に新たな項が追加されました。マスタースキル《階層転移》のマーカー機能が解放されました。マスタースキル《ガーディア────


 おうふ……ガンガンと頭の中で象がダンスしてるんじゃないかと言いたくなる痛みが襲ってきて吐き気を催す。それを耐えるものの若干ふらつく。これキッツイわ。


 ダンジョンコアが乗っていた台座に寄りかかり、一息つくと足元に真っ黒な子犬がお座りして尻尾をブンブン振っていた。


「まさか……」

「マスター、権能は無事受け取られたようでよかったですワン」


 増えたよ。ていうか語尾に〝ワン〟って、やっぱりダンジョンコアというかガーディアンってどこかおかしいぞ。


 タマの時と同様にダンジョンコアがガーディアンと融合した。今回は〝吸収〟するため起こらないかもと思っていたが。


「マスターはあえてその辺りの情報に意識を向けないようにしていましたにゃ」

「〝吸収〟だけではコアが完全消失することはありませんワン」

「二体も必要ありませんにゃ。マスターが不要とおっしゃれば、タマがこやつを吸収しますにゃ」

「それはこちらのセリフだワン」


 子猫と子犬が牽制しあってじりじりと俺の周りを回る。


「とりあえず、現状維持。タマもからかうな」

「了解しましたにゃ」

「はうっ!」


 からかわれていると聞いて子犬がショックを受ける。いやボスはブラックウルフだったから小狼か。それを言えばタマも小虎なんだけどな。

 万全の状態では黒狼の方が強いかもしれないが、今は倒されたばかりだからリソース不足で巨大化できないはず。一方タマは大きくなれるのにあえて子猫のままで子犬に対峙しているのだ。

 猫ってこういう遊びするよな。





「マスター、すぐにリソース化を実行しますかワン」

「い、いやちょっと待て。と、とりあえず〝単独制覇〟ということを隠してアナウンスを実行」

「了解しましたワン…………『モフィ=ルーマス・ダンジョンが制覇されました』マスター、アナウンスを実行しましたワン』


 小犬の言葉にアナウンスが重なる。


「じゃあ〝消失〟時の終了シークエンスを実行してくれ」

「了解しましたワン」


 マスター権限で〝消失〟時の終了シークエンスを実行し、ダンジョン内にいる探索者に誰かが〝制覇して消失を選んだ〟と思わせるための偽装だ。


 金曜の夕方五時過ぎ。平日は来たことなかったから、どれくらい探索者がいたんだろうか。

 そう考えた途端、情報が脳裏に流れてきた。裏山ダンジョンでは俺以ダンジョンに入ることがなかったので、こういうのは経験してなかったな。


 マスターの権能でダンジョンのどこにどれくらいのモンスターや探索者がいるかという情報が、明確に知覚できた。


「人気ないとか言いながら結構探索者がいたんだな」


 最高到達点は十四階層だ。結構危なかったかもしれない。ゴールデンウィークは別のダンジョンに行くつもりだったから、ゴールデンウィーク明けてから十五階層目指してたら、先越されてたかも。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る