第75話 ホームセンターで


 月曜日の放課後に、ダンジョン外施設の方の協会窓口でお金を下ろす。そしてそのまま爺ちゃんに包丁代を送金するためにエントランス横に置いてあるATMに移動する。

 ヘブン銀行ATMはコンビニに行かずともここにも置いてあるのだ。最近はコンビニ以外にスーパーとかにもあるので便利だよな。

 残念なことに免許証のチャージは銀行口座と連携していないので、ネット送金とかできないのだ。そしてチャージはドロップ売却金や協会のオークションなど、協会からのお金でしかできない。

 協会関係の支払いは出来るのでいいんだけどな。

 銀行機能を持たせられないのは大人の事情らしい。


 爺ちゃんの口座に二十万円を送金したことを知らせるため、実家に電話をする。

 最初ばあちゃんが出たので爺ちゃんに変わってもらったんだが、電話の向こうで喜ぶ爺ちゃんに小言を言う婆ちゃんの声が聞こえてきた。

 なのでもう一度婆ちゃんに変わってもらって、婆ちゃんにスキップゴートの皮を手に入れたのでコートとか作ってもらったらなんてご機嫌とりをしてみた。

 スキップゴートの皮は結構ふかふかの毛皮なのだ。「幾つになっても女性は毛皮のコートに憧れを持っている」と言うような話を前にしてた覚えがあった。


「いいの? 買ったら高いんじゃない?」なんて言いながらも満更ではなさそうだった。

 スキップゴートの皮は買取は一枚八千円だけど、業者はいくらで購入してるんだろう。


 それが終わったらホームセンターだ。うーん自転車でも買おうかな。学校に通う間だけだし中古のままチャリでもいいかな。

 俺が使っていたのは竹割用の鉈だった。


「うーん大体刃渡り十八センチか、もう少し長めが欲しいな」

「何かお探しですか?」


 ホームセンターの店員に声をかけられて、長めの鉈がないか尋ねる。


「もしかして探索者を始められるのですか」


 武器になりそうな一般で手に入るものを集めた〝探索者スターターコーナー〟なるものがあるらしい。

 初心者向けにいろいろ取り揃えているようだ。


 そこには武器になりそうな鉈だけでなく、バールや鉄パイプ、そして大きめのバックパックやコンパクトなキャンプグッズに、携帯食料や携帯トイレなども取り揃えていた。

 キャッチコピーに〝これであなたもダンジョンダイバー〟とか意味不なPOPが……


 銃刀法で刃渡り六センチ以上の刃物の持ち歩きは禁止されているが、業務で使用するもの、例えば料理人の包丁とかは一部認められている。

 いろいろ物議を醸したが、「探索者が仕事に持っていくのもこれに当てはまるのでは」とされたが、今では元々市販されていた〝武器として作られていないもの〟も協会のウエポンケースほどではないが、鍵付きケースの使用を推奨されている。


 ダンジョン黎明期、犯罪者がそうした理由を掲げて減刑しようとしたことで市販されている刃物も鍵付きケースに、ダンジョンウエポンは二重ロックの〝ウエポンケース〟に入れるようになったのだ。


 協会のウエポンケースを模した武器ケースも売られていた。

 自前のICチップ付きのカードを登録することでそれを鍵にできる。銀行のキャッシュカードでもクレジットカードでもETCカードでも登録しようと思えばできるのだ。推奨されているのは顔写真付きの運転免許証とかマイナンバーカードだけどな。あと探索者免許証。

 協会のウエポンケースは開錠時の電力はキーオープナーから供給されるが、これは充電式か。


「こちらは刃渡り38センチのマチェットタイプです。ケースはこちらのものがちょうど入りますね」


 俺が使っていた竹割鉈は刃渡20センチだったが、こんな長いのホームセンターで扱ってるのか?

 店員が言うにはアウトドア用の製品を作っているところが、探索者むけに売り出しているのだとか。


 それでも一万円するのか。ケースは七千八百円。ビギナーのスターターセットとしてはお高いのではないだろうか。

 とりま、どっちも買って帰ろうかな。


「おれた物はどうしますにゃ?」

「鉈? 燃えないゴミの日に出す……あれ、アパートのゴミの分別ってどうなってたっけ」

「ゴミなんてもったいないですにゃ。長く使ったアイテムは魔素を吸収しますにゃ。あの鉈は多くのモンスターを屠ったことでレアリティが上がっておりますにゃ。リソースにしますにゃ」


 そういえば長く使った武器は素材として使うことがあると聞いたことがあった。

 人間がレベルアップするように、武具もレベルアップするのか。



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制覇と踏破について

 自分でもこんがらがっていたので、世界設定として決めました。

制覇:ダンジョンコアまで行き着き選択肢を選んだこと。例)制覇済みダンジョン

踏破:未到達エリア、階層などに到達したこと。例)踏破階層

 随時修正する予定です。


 昨今のアウトドアブームでキャンプグッズのコーナーがあるように、探索者むけのコーナーが作られているのです。

 先日近所のスーパーセンターで関孫六ダマスカス包丁1万3千円の品が売られてました。刃物専門でなくとも置いてるんですね。


 ちなみにマチェットは楽○で鉈を検索したら出てきたものを参考にしています。ナイフの通販ショップだから実用品だと思います。参考資料に買おうか悩んでます。


 39話のコメントいただいていた武器のネタ、ブチち込みました。

 書いたつもりが【短編Ⅲ】だったので、こっちにはまだ書いてなかったです。





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