第17話 宝箱
三階層探索では《マップ》のレベルが低いこともあり多少迷いもしたが、おかげで【
初めての宝箱である。罠発見系のスキルも魔道具もないが、低階層の場合罠なしかあっても蓋を開けた時、正面に向かって効果のあるものが多いので、宝箱の裏側から道具を使って開けると教えられている。
幸い鍵はかかっていなかった。俺は後ろに回って鉈の端っこに蓋をひっかけて持ち上げ、すぐにその場から飛び退る。
しばらく待つも何も起こらないので、罠は無かった様だ。
宝箱の中身は……試験管の様な形の容器にコルクの様な蓋が付いたもの。
「ポーションだ」
教科書に写真が乗っているし、授業で実物も見せてもらったことがある。
ただし何ポーションかは見た目じゃ判断がつかない。
怪我や傷を治せるヒールポーションも、毒状態を治す解毒ポーションも、能力を一時的に上げるバフポーションも見た目は同じなのだ。
DDSで鑑定済みのものはそれぞれのシールを貼ってある。一度剥がすと痕が残るセキュリティーシールだ。
シールを張り替える詐欺防止だな。
昔中身を入れ替える詐欺行為が横行したからだ。
ポーション類は開封すると劣化が始まり、下位ヒールポーションなんかは一時間で効果50%、二時間で効果25%という様に時間で効果が半減していき、五時間で効果が消失する。
中身を入れ替えなくても、半分使って残りを薄めて誤魔化したりもできないってことだ。本物であっても開封後五時間で何の効果もない液体と化すのだ。
その上この試験管型容器は、見た感じというか質感が瀬戸物っぽいのだが、謎素材である。
中身が空になって一定時間が経過すると、黒い粒子となって消えるのだ。ゴミのでないエコ仕様……ていうかダンジョンモンスターと同じ謎使用なのだ。
開封後の劣化の時間は物によって違うが、一応試験にも出るからめぼしいポーションの劣化時間は覚えないといけない。
普通ならDDSに持っていって鑑定してもらわないと使えないが、俺には《アイテム鑑定Ⅱ》スキルがある。
=【コモン・ポーション】《
「よしっ! ローポーションだ!」
思わず拳を握る。ローポーションは皮下脂肪までの傷を治す。筋層まで達した傷はミドルポーションが必要で、骨折はハイポーションがいる。
このポーションもスキルや魔法と同じで、ダンジョン内でしか効果が出ない。
外で使っても何も起こらないのだ。これは傷を治療するために周囲の魔素を取り込むためと言われている。
俺は手に入れたポーションをリュックのサイドポケットへしまう。
ポーションストックポーチ欲しいな。
その後道中新たな宝箱はなく下り階段を発見、四階層へと降りた。
三階層では驚異度2のビッグフットという足の大きなウサギモンスター、四階層で驚異度3のツインテールキャットが出た。
ここのモンスターって獣系なのかな。モフっとしたモンスターばかりで、毛皮のドロップが多い。何気にかさばるドロップ品。
なんて贅沢な感想。学校の実習中じゃ五匹以上倒してやっと一つ、それもほぼ魔石だ。
毛皮は嵩張るのでリュックがパンパンになってきた。でも放置するのはもったいない気がして。
ダンジョンドロップは放置すると一定時間でダンジョンに取り込まれて消失する。戦闘中くらいなら大丈夫だけど、探索の帰りに拾おうとしてもなかったりするのだ。
「まあ、今すぐ売りに行けるわけじゃないし、高額品優先で持って帰るか」
皮一つとっても脅威度の高いモンスターの方が高額ってわけじゃない。需要があっての価格だ。
四階層までなら買い取り価格が高いのはビッグフット、小爪リス、ラビット、ツインテールキャットの順だ。
もふもふ系の皮は誕生日プレゼントにもらったリザードの様に防具向きじゃない。
服や鞄などに用いられる。ビッグフットなんかは世の女性たちに、コートや防寒具として人気があるのだ。
あ、これでお袋たちにマフラーとか作ってプレゼントするかな。冬までには加工してくれるところを探せばいい。
もったいないけどツインテールキャットの皮は今回は諦めることにした。
明日は予備の鞄持ってくるか?
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