第18話 お出迎え

 


 五階層への下り階段を見つけ、1日目の探索を終えた。


 ツインテールキャットの毛皮をいくつか回収できた。

 幸運だったのはできたばかりのダンジョンだったこと。できたばかりのダンジョンはモンスターのリポップまでの時間が長い。

 帰り道ではほとんどエンカウントすることなく、ダンジョンを出ることができたのだ。


「おかえり、お兄ちゃん」

「ひな、なんでここに?」

「えへへ、もうすぐ帰ってくるかなって思って」


 爺ちゃんの「夜はみんなで夕食をとれるように戻ってこい」という言いつけで、もう帰ってくるだろうと待っていた様だ。


「それ、ドロップ品? すごいいっぱいだね。持ってあげるよ」


 俺が抱えていたツインテールキャットの毛皮に手を伸ばすひな。

 そして二人並んで家に向かって歩き出す。


「ひな。待ってくれるのは嬉しいが、絶対中に入るなよ。入り口近くにだってモンスターはやってくるから」

「わかってる。入らないよ」


 若干目を泳がせるひなを見て、ダンジョンを振り返ると入り口横にバットが立てかけてあった。


「……ひな」

「う、ほ、ほら。万が一外に出てきたら「ひな」……はい。ワカリマシタ」


 お袋に言っとこう。怪我をしてからじゃ遅いからな。




「ただいま」

「大和、無事か?」

「おかえり」

「帰ったか」

「怪我してないかい」


 玄関を開けると全員が迎えに出てきた。


「父さんこそ、大丈夫なのか?」


 一番に出てきたのは親父だった。無事退院できた様だが安静にしてたほうが良くないか。


 家族全員に迎えられ嬉しい反面、心配させているという罪悪感がちくりと胸を刺す。

 だけど探索者を目指すと決めたんだ。俺は家族に不安を抱かせないくらい強くなってやると、決意を新たにした。


 風呂で汗を流し、全員揃って夕食となる。

 食事中の話題は当然裏山ダンジョンのことだ。


「今日は四階層まで行ったんだけど、出来立てだけあってドロップが多かったよ」

「毛皮もっふもふだったよ」


 運ぶ手伝いをしたひなは俺の入浴中に物色していた様だ。


「換金したらいくらぐらいになるんだ?」


 晩酌をしつつ爺ちゃんが聞いてきた。新しい包丁の資金がどれくらいで貯まるのか気になるんだろう。


「うーん、だけど裏山ダンジョンのこと内緒にしてるから、すぐに売りに出せないんだよ」


 そういうと残念そうに眉尻を下げる爺ちゃんの後頭部を、婆ちゃんが叩いた。

 当分は死蔵になるが、新学期が始まったら休日にどこか他のダンジョンへ行って少しずつ換金することを伝えた。





 2日目はバックパックに予備の袋を詰め、ウエストポーチに昨日手に入れたローポーションを入れた。

 このバックパックは探索者御用達のもので、胸のボタンを押すとショルダーハーネスが外れ、一瞬でバックパックを放り出せる仕様になっている。

 戦闘が始まって悠長に外してる暇がなかったりすると、背中の荷物が邪魔になるから、こんなふうに簡単に外せて戦闘時の邪魔にならない様に工夫されているのだ。

 

 安物なので素材は合成皮革だから、衝撃吸収力はほとんどない。放り投げると壊れ物はやばいことになるが、毛皮なら問題なしである。


 まず五階層まで最短コースで進む。出来立てダンジョンはリポップが遅いと知識で知っていたが、昨日の帰路と同じコースを行くと、一階層でラビットが一匹、二階層で小爪リスが一匹出ただけで五階層の中ボス部屋前に一時間で到着した。


 扉の前でしばし休憩。水分補給とエネチャージゼリーをとる。

 ゴミは持ち帰るため、ゴミ袋持参が基本。マナーの悪い奴は放置することもある。ダンジョンに放置されたものは、ドロップ品だけではなく、外から持ち込んだ物も吸収してなくなるものがある。

 最初は有機物かと思われたが、食べ残した弁当とか全く吸収されない。

 吸収されたのは金属製の武器だったらしい。

 この辺りは謎が解明されていない。


 昔ダンジョンをゴミ処理場に利用できないか研究されたことがあるが、無理だった。

 それに何もかも吸収されるんなら、協会の箱物建てるなんてできないよね。

 

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