第123話 知良浜ダンジョン1日目③

 ミス訂正:《治療》スクロールは【レア】です。

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 食後九階層から探索を再開する。下り階段は見つけてあるので、すぐに降りるが、十階層のボス部屋前も五階層と同じような状態だった。

 五菱と山﨑、そして五階層よりは規模が小さくなってる大坂マテリアル。


 ボス部屋の扉は空いている。ここの五階層の中ボスは生狛ダンジョンにも出たミラージュリカオン。十階層の中ボスはアイスホーンディアという氷の角を持った鹿で、鹿肉をドロップするらしい。俺にはカウ肉があるから別にどうしても欲しいという物ではない。

 ここはボスは占有してる企業が持ち回りで倒すらしいから、ボス戦をしたい探索者には向かないのだ。

 その辺りもここが一般探索者に不人気な理由でもある。


 そして十一階層へ降りる。

 五菱のパーティーはだいぶ先行しているから、もう普通にいこう。

 十一階層は岩山エリアだ。大小様々なゴツゴツした岩が視界を塞いで見通しはよくない。

 岩に擬態したモンスターもいる。


「……なんかポージングはじめそうなゴーレムだな」


【レア・マッチョロックゴーレム】【魔石50%・鉱石15%・欠片15%・アイテム10%・なし10%】


 ロックゴーレムの一種だが、パンプアップしまくったボディービルダーのような上半身をしている。境ダンジョンのロックゴーレムに比べると上半身が1.5倍ほど大きい。

 まあ脅威度はロックゴーレムより一つ上の5なんだが、ブロンズゴーレムも脅威度5だったな。

 ドロップにコークスがない。ここのドロップは一般的なようだ。


 スチールアームハンマーを《倉庫》から取り出し、〈アームインパクト〉をお見舞いすると、マッチョロックゴーレムは呆気なく沈んだ。倒したらスチールアームハンマーを速攻倉庫に戻す。見られたくないからな。

 そしてドロップを確認する。黒い粒子が消えた後に残ったのはスクロールだった。

 さっきは思わせぶりしといて布だったし、本当にスクロールか怪しみつつ拾う。ちゃんとスクロールだった。


「境ではスクロールのドロップはなかったから、なんか久しぶりな気がする」


 さてさて、なんのスクロールかな。まあレアモンスターだし、レアスクロールなのは確定なんだけど。ちょっとウキウキしつつ《鑑定》すると……


「これ……」


【レア・スクロール】〈治療キュアⅠ〉治療魔法の〈キュア〉が使える=


 まさかこんなところで治療魔法の呪文スクロールがドロップするとは、驚きで固まってしまった。

 周りに探索者がいないことは、スチールアームハンマーを取り出すときに確認しているが、思わず周りを見回して、スクロールをジャンピングワラビーの腹袋に突っ込んだ。


 ちょっとドキドキしながら歩き出す。


『マスター、そちらは逆ですにゃ』

『きた方向に戻っておりますワン』

「あ、うん、サンキュ」


 タマとポチから指摘され踵を返す。


 治療系は他のスクロールとは一線を画す。オークションに出せば他のレアスクロールとは一桁どころか二桁違いの入札がはいる。


 しかし俺としては自分で使いたい。今後の探索の中で治療ができるというのは、かなりのアドバンテージなのだ。

 ポーションもあるが、取り出したり飲んだりとひと手間かかるが、魔法はその必要はない。


 ただ、問題がある。


「俺、医学知識ないんだよな」


 スキルの効果は同じスキル持ちでも〝知識差〟によって効果の差がでる。

 それを補ってくれる〝知識スキル〟も存在するが、それが手に入らなければ勉強しなければならない。


 例えば剣を使う《剣術》スキルを使いこなすために剣術を習う。だが《剣技の知識》スキルを手に入れれば、《剣術》をすぐに使いこなせるようになる。

 職業スキルの《剣士》はこの《剣術》と《剣技の知識》両方を兼ね備えたものだ。

 俺の《戦士》も職業スキルなので武技スキルを覚えたり、武器の扱いが上手くなったりした。


 治療を使いこなすには《治療の知識》を手に入れるか、医術部や医者や看護師のように医学について勉強しないと効果が薄い。

 しかし、今から学ぶにしても莫大な時間を取られることになる。


「流石にそんな時間はないし、今から勉強するのはちょっと」

『マスター、モンスターが接近してきますにゃ』

『ご注意くださいワン』


 前から現れた大きなトカゲが、俺を見つけて猛ダッシュで向かってきたが、影から現れたタマとポチがその爪で引き裂いた。

 どちらも大型犬ほどの大きさで、トカゲの方が大きいが瞬殺だった。


 どちらも外に出たくてうずうずしてたので、俺がぼやっとしていたのを幸いに飛び出してきた。

 ガーディアンとしてマスターの護衛ができることが嬉しいようで、ダッシュで俺のところに戻ってきて、タマは脚に体を擦り付け、ポチは尻尾を振りまくっている。


「ありがとな。ちゃんと気持ち切り替えるわ」


 スクロールのことは一旦置く。今は探索を続けることに集中しよう。

 タマとポチを撫でて、ドロップした魔石を拾って周囲のモンスターの位置を確認して先に進んだ。



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 コメントの返事ができてませんが、ありがたく読ませていただいております。

 誤字の指摘感謝しております。

 Ⅴ章に対するご意見いただきましたが、近況ノートにも書いたように、自分でもちょっともやっとしているところもあります。

 Ⅴ章はこのまま一旦続けるつもりです。


 それと英文でレヴューいただきました。外国人の方でしょうか?驚きました。

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